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金融機関を対象に、2年間でARR6億円をつくった『EP営業の有効施策』を公開

はじめに

2015年の創業から2020年までの5年間、bellFaceの導入企業は「BtoB営業」でのご利用が多くを占めていました。しかしコロナによってマーケットは激変し、その多くは一般化されたweb会議システムへとリプレイスが進み、我々は窮地に立たされていました。

そのような状況の中で、一筋の光として「金融業界」からのご相談が顕著に増え始めていました。それも、これまで得意としていたBtoBではなく、「BtoC(リテール)営業」 の領域からの引き合いが増え、水面下で我々は戦う市場を少しずつピボットし始めていました。

そこから2年が経過し、まだまだ大きな成果を残したといえるレベルとは程遠いものの、この転換が決して間違いではなかったことを一定証明することができましたので、備忘も兼ねてその取り組みの詳細をこのnoteに纏めさせてもらいました。金融機関を対象にした営業、ひいてはエンタープライズ営業に従事されている方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

bellFaceの金融業界での実績について

1. 取引社数

2020年4月時点で10社だった取引企業数が、73社へと増えております。2年間で63金融機関にご導入いただいており、最初の半年間はほぼ受注0だったことを考えると、それ以降は毎月3.5社ペースでご導入いただいていることになります(一部の公開可能なロゴ一覧は以下サイトをご参照ください)。

また、これまでに出させてもらったご導入リリースの一部をご紹介させてもらいます。

2. ARPA (取引単価/年)

bellFaceというサービスの年間取引金額がmin1,200千円であることを考えると、当初導入いただいていた10社ほぼ全てがminでの取引だったことが分かるかと思います。そこから2年かけて、現在は8,290千円まで上がっておりますので、単価は約6.5倍に上がっていることになります。

3. ARR (年間経常収益)

こちらは2020年4月までは10社で12,660千円の取引だったところから、73社で605,215千円まで増えており、伸び率で言うと4780.5%というよく分からない数字になってしまいました 笑 

取引社数とARRの成長率を見比べると違和感があるかと思いますが、これはお察しの通り「数社のビッグディールが全体数字の多くを占めている」ことを表しており、これこそが金融、ひいてはエンタープライズ営業の醍醐味であることを日々実感しております。
※余談ですが、「受注金額」という意味ではより大きく数字が跳ね上がっています。これまでは1年契約でしかお申し込みを頂戴してなかったところから、2〜3年の複数年でご契約をいただくケースが増えているためです。そのためのポイントなどはまた別の機会でご紹介できればと思います。

金融機関を対象にした営業において、最も有効な販売チャネルとは?

ここから、いよいよ本題に入っていきます。この2年間で様々な取り組みを行ってきましたが、今回は最もご質問いただく機会が多い「金融機関とどのように新規接点を作って、売上を拡大してきたのか?」、つまり「販売チャネル」にフォーカスしてお話ができればと思います。

販売チャネルごとの受注金額割合

まず最初に、どのような経路でどれだけのご契約をいただいてきたのか、こちらのデータをご参照ください。

成果に繋がった販売チャネルの中で、特に自社なりの創意工夫を凝らした「アライアンス(59.1%)」「顧客紹介(14.6%)」「手紙送付(8.1%)」の3点について詳細を纏めさせてもらいます。

A, アライアンス

前述のチャネル別売上構成比を見ていただくとお分かりの通り、弊社の販売チャネルの中で最も有力な手段となっているのが「アライアンス」となります。一口にアライアンスといっても、代理店・再販・紹介・OEM・技術提携・資本業務提携など、その形態は多岐に渡ります。

なお、弊社内でのアライアンスの考え方は、「パートナー企業様と当社の経営資源を組み合わせて、両社がベネフィット(売上・利益・リード・知名度・特許など)を享受できる取り組みを起案・実行し、双方が成果を創出するまでの活動全般」と定義しております。

この取り組みの成果として、弊社パートナーの1社である(株)セールスフォース・ジャパン様が開催されたSalesforce Partner Award 2022におきまして、「約200社のパートナー企業の中で、最も秀でた成果を上げた企業に贈られる賞」ということで「AppExchange Partner of the Year 2022」を受賞することができました。

様々なステークホルダーを巻き込み、それぞれの立場や強みを深く理解した上で企画を設計し、同時に強い推進力で複数の物事を並行して進めていかなければいけないのがアライアンス・セールスです。よって、一義的に成功のポイントを語るのが難しい分野であることは周知の通りかと思います。それを前提に、以下の4つを意識して取り組んでおりますので、これらが複合で重なり合うことで成果につながることをイメージしながら、読み進めていただければと思います。

(1) パートナーの事業が「持続的に加速していく」取り組みであること

当然ながら、一緒に取り組む企業にとってメリットがなければ物事は前に進みません。ではどのようなメリットを設計すべきか。それは「短期的な視点ではなく、中長期で双方にとってメリットを生み出すことができるかどうか」であると考えています。

分かりやすく、単純な「顧客の相互送客」のような取り組みは、よくある王道パターンのように思えて、これが持続的に取り組まれている事例をこれまでに見たことがありません。身の回りの顕在化したニーズを持った顧客を紹介しあって終わってしまう、短期的な取り組みになりがちだからです。

ではどのような取り組みが持続的に加速していくのか。それは、「自社とパートナーそれぞれが強みを活かしあい、結果として顧客へ提供する価値が最大化されるような取り組み」であると考えています。少し分かりにくいかもしれませんが、例えばお互いのサービスが組み合わさり、それぞれが独立したサービスでは実現できなかった価値提供ができるような、そんな取り組みをイメージしてもらえればと思います。

前述のセールスフォースさんとの取り組みにおきましても、プロダクトが連携することで顧客への提供価値を増大させ、結果として双方のサービスが解約されにくくなる、というのが上手くいっているポイントの1つとなっております。

Salesforce × bellFaceの連携イメージ

(2) 営業先の窓口が同一であること

一見些末なことのように思われるかもしれませんが、これも非常に重要なポイントの1つとなります。弊社であれば、営業先の窓口は「営業部門」「営業企画部門」「DX推進部」「コンタクトセンター部」等となります。

これが、例えば人事や総務、情報システム部門と接点を持ちたい企業とパートナーシップを組んでも、スピード感を持って推進していくことができず、取り組みは尻すぼみになっていく可能性が非常に高くなってしまいます。つまりは、それぞれが取り扱っているサービスの親和性が高いこと、これが非常に重要なポイントになります。
※今回はあくまでも前述の定義にある「アライアンス」の範疇の話であり、一般的な代理店や再販制度のような取り組みは、この限りではありません。

(3) 取り組みの成果を人事評価に紐づける

どんなに顧客提供価値が高く、取り扱うサービスの親和性が高かったとしても、その取り組みが人事評価に紐づけられていなければ、パートナーシップが加速していくことはありません。一見当たり前のように思えて、これが意外なほどに徹底されていない取り組みをよく見かけます。

特に、自社においては評価制度から変えていく動きを取ったとしても、パートナー企業にもその重要性をご理解いただき、提起していく動きまでをやれている会社はそうそう見かけません。

確かに営業起点のこのような取り組みを、人事も巻き込み評価制度にまで落とし込むことは、多大な労力を費やします。しかし急がば回れで、双方のサービス理解を深めるための研修や、顧客リストの共有を行う前に、まずはこの取り組みがしっかりと評価の対象になるような設計を行うことから始めることをオススメします。

(4) 強い影響力を持つキーパーソンと強固な関係を築く

アライアンスといえども、これもセールスの一形態であることを忘れてはなりません。いつの時代の営業も、目の前にいるその方と強いリレーションを築けずして、大きな取り組みへと発展していくことはありません。

その時に重要なのが、先方の窓口や営業ご担当者だけでなく、物事の意思決定を行い、社内に強い影響力を持つキーパーソンと強固な関係を築くことです。その方に心から「これは双方にとって価値ある取り組みだ」と感じていただけるかどうかで、成否が決まると言っても過言ではありません。

キーパーソンの一言で情勢が大きく変わりますので、改めて皆さまの取り組みも振り返ってみてもらえればと思います。

このテーマだけでnoteがかけてしまうほどに、その他の大切なポイントも数え上げればキリがないのですが、今回はここまでとさせてもらいます。そのうち弊社のアライアンスの責任者である清水がより深い内容の記事を執筆してくれると思いますので、ご期待ください。

B, 顧客紹介

大手金融機関との新たな顧客接点を作ろうとした時に最も悩ましかったのが、これまで会社が得意としてきた、マーケティング・ドリブンな顧客接点構築が通用しにくかったことです。

ターゲット顧客の幅が広ければ、かつてのように毎月数千件のリードを集めてインサイドセールスがニーズの見極めを行い、、という勝ちパターンを構築することができるのですが、ターゲットを限定するとこのやり方をそのまま応用できるわけではありません(厳密にはそのような手法も一定成果は出せますが、投資対効果が得にくくなります)。

もちろん、コールドコールでアプローチをしたり、飛び込み営業をすることが効果的であるはずがありません。そこで弊社で徹底し始めたのが「紹介依頼」です。具体的には、以下3つの紹介促進をおこなってきました。

(1) 株主からの紹介

大変有難いことに、これまで名だたる皆さまに資本参画いただいてきました。当然ながらこの分野の方々は金融機関との結びつきも強く、まず最初に頼らせてもらいました。図らずも、この戦略転換の前から大手金融機関グループのVCに資本提供してもらえていたことも幸運だっだと言えます(株主の顔ぶれは以下リンクの会社概要よりご確認ください)

非常に細かなTipsですが、株主の皆さんに紹介依頼をさせてもらう時は、全員が参加しているグループチャットに依頼を投げ込むのではなく、一人一人に個別で依頼をさせてもらっています。他人事ではなく、より責任を持って人脈を辿っていただくためです。

また、株主が参加する月に一度の取締役会では、実際にお客さんをご紹介いただいた方をスライド資料の中で列挙させてもらい、ご紹介が進んでいない方が若干気まずさを感じるような空気を意識的に作るようにしています。非常に嫌らしいやり方であることは重々承知しておりますが笑、これくらいやることで少しずつ成果が出てくる施策ですので、臆さずに是非トライしてみてください。

余談ですが、「資本業務提携」を非常にうまく展開されている、とある会社さんから聞いたお話がとても印象的だったので、ご紹介させてもらいます。
「資本業務提携」という名の通り、その会社さんでは株主がほぼ全て代理店として機能しており、より強い利害が発生する関係となっています。ですので、株主が一堂に集まる月一の定例の場では、同社が業績報告を行う場(私の知る限りこれが一般的)というよりも、株主各社の売上状況を並べて、計画通り進んでいない株主を詰める、いわゆる「ヨミ会」のような場となっているそうです 笑 しかし結果としてこの取り組みが功を奏し、非連続な成長を続けている状況を見ていると、1つの組み方として理にかなっているのだなと、大いに勉強させてもらいました。

(2) 顧客からの紹介

新規商談を行う際、その商談の結果がどうであれ必ず最後のスライドに「ご紹介いただきたい部門」を整理しておき、ご紹介を依頼させてもらっています。事前に会社全体の組織図を把握しておき、例えばリテール営業部長との商談であれば、コンタクトセンター部長やDX推進部長の紹介を依頼する、といった具合です。この時に、正確な役職や氏名までを抑えておき、具体的にこの方をご紹介してほしい、と依頼をした方が頼まれた方も動きやすいので、入念な下調べをしておくことをオススメします。

ここまではもしかするとやられているかもしれませんが、真骨頂はここからとなります。金融機関はグループ経営されているケースが多いので、例えば●●証券の営業部長は、本体の●●銀行から出向されているケースがよくあります。その際に、「●●銀行の●●部長ってご面識ありますでしょうか?」とそれとなく確認をしてみると、面識がある、あるいは存在は知っている、という可能性が極めて高いです。大手金融機関グループにおいて役員や部長にまで上り詰めている方は、大企業と言えどもその名は社内で広く知れ渡っているからです。

紹介を依頼された側は、果たして不快な思いをするでしょうか。中には、初対面でいきなり紹介依頼をしてくるなんて、、という気持ちになる方もいるかもしれませんが、少なくとも私はそれで嫌な顔をされたことは一度もありません。それどころか、部下の方も同席している場合がほとんどですので、「●●銀行の●●君は僕の後輩だから、話を聞くように伝えておくよ」と、どちらかと言えば前向きに、誇らしくお繋ぎいただけるケースがほとんどです。

どんな営業のHow to本にも書いてある通り、出来る営業ほど間違いなく「顧客が顧客を紹介してくれるサイクル」を作り出し、楽して成果を上げています。是非こちらも臆することなく、堂々と紹介依頼をしてみてください。

(3) 顧問からの紹介

時間を最も短縮できる方法は、顧問からの紹介ではないでしょうか。顧問というとやや仰々しいですが、金融業界に強力なパイプを持っている方と業務委託契約を結ばさせてもらい、月に数件の紹介をしていただくような形態です。

金融と一口に言っても得意な領域は人それぞれで、銀行・証券・生保・損保・信販など様々ですので、自社が最も注力したい、あるいは接点を作れずにいる領域がどこなのかを整理した上で、相談をしてみるのが良いかと思います。弊社では企業・部門・役職・氏名までを整理しておき、対象リストに対してどれだけ接点を持っているのか、いつまでにどれだけの商談機会を設定いただけそうか、ここまでをしっかりと合意させてもらった上で、契約させてもらっております。

相場としては、月間30~40万円程度で月に2~3件のご紹介をいただける、といったところでしょうか。1件あたり10〜15万円程度は費用が発生するものですので、事前にしっかりと相性(人物的なものも含めて)を確認の上で取り組むべきかと思います。

C, 手紙送付

最後にご紹介したいのが、古典的な「手紙送付」です。この時代に手紙送付?!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、侮るなかれ、地道に継続することでしっかりと成果に繋がっていきます。

(1) 直近での成果について

  • 期間:2022年4月〜6月

  • 送付数:27通

  • アポ数:7件 

  • 送付アポ率:25.9%
    ※直近送付しているものもあるので、ここから35%程度まで上昇する見込み

  • 送付コスト:@600円×27通=16,200円

  • アポ単価:2,314円 (全て取締役・執行役員・部長クラス)

(2) 送付している手紙の実例をご紹介

某大手生命保険会社に送付し、役員のアポイントが獲得できた手紙文面の実例

(3) ポイント解説

端的に、ポイントを解説していきます。

  • 宛名は担当営業ではなく代表、あるいは取締役名義

  • 封筒は手書き、手紙の中身は入力(色々と試した結果、今のところこれが最も投資対効果が高い)

  • 実際にアポイントが獲得できたら、代表もしくは取締役が訪問

  • 事前に送付する方のインタビュー記事などを隈なくチェックし、そこで印象に残った発言などを具体的に引き合いに出す

  • (公開が許可されている) 競合他社の事例を紹介する

  • その会社で当てはまるユースケースを具体的に示す

  • 押し売りの雰囲気ではなく、あくまで業界を代表して貴方様のご意見を頂戴したい、というスタンスを大切にする

アプローチ先の特性によって、成果をあげるためのポイントは異なってきます。大切なのは、まずは最も成果に繋がるであろう方法でやりきってみて、きちんと数値化して振り返りを行い、少しずつ改善をしながら粘り強くやり通すことです。少し取り組んでみて結果が出ないからすぐにやめてしまう、というのは一番勿体無いパターンです。経験上、一定の勝ちパターンを見つけると、ある時に臨界点を超えて他の手法では考えられないコストパフォーマンスを発揮してくれるのが、手紙送付です。是非参考にしてみてください。

さいごに

今回は「販売チャネル」に絞ってお話をさせてもらいましたが、少しでも参考にしていただけたら幸いです。実はこの記事内で、その他にも「組織体制」「KGI/KPI設計」などについても纏めさせてもらう予定だったのですが、既に7,000文字を超えるボリュームになってしまいましたので、今回は泣く泣くテーマを絞りました。他にも様々な試行錯誤を繰り返してきましたので、またどこかのタイミングで発信させてもらいます。

また、今回は新規営業に関わるテーマで書かせてもらいましたが、言うまでもなく最も重要なのは、「bellFaceを活用しているお客様のビジネスが加速していくこと」です。現在、大手を中心に73の金融機関様とお取引をさせてもらっておりますが、これらのお客様がbellFaceにより一層の価値を感じていただいて活用が浸透していけば、冒頭でお伝えした取引実績は簡単に「桁」が変わってきます。我々のビジネスの肝がどこにあるのかを見誤らず、弊社のValueに掲げている「For Customer」の精神を見失わず、これからも真摯にお客様と向き合っていきたいと思います。

尚、今回は主旨とズレるので触れませんでしたが、金融機関を対象に営業を進めていく際、「プロダクト部門との密な連携」は最も大切な要素の1つとして挙げられます。この業界にとって必要な機能は?その理由は?それによってどんなペインが解消され、顧客にどれだけのベネフィットを提供できる?結果としてどれだけの売上に繋がる?このような、部門を越えた非常に細かなやり取りを、日次ベースで行っていく必要があります。そしてそれらを通じ、プロダクトの新機能開発や開発体制の刷新があったからこそ、このような一定の成果を生み出すことができています。弊社のプロダクトマネジメントにつきましては、こちらの記事を是非ご参照ください。

最後に、ベルフェイスでは今回テーマにあげさせてもらっている金融営業本部や、プロダクト・開発Grにおいて鋭意採用を行っておりますので、少しでもご興味を持っていただけましたら、お気軽にご連絡ください。


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