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白熊杯 勝手に賞

 白熊杯に続き、勝手に賞にも参加いたします。勝手に直輝賞ですが百万円はでません。悪しからず。僭越ながらいくつか感想を綴ります。


俳句

 一覧の番号順に三句ほど。(五七五!うまい!)

299 腕太き祖母万物をおでんとす

 面白い。楽しい。このおでん絶対おいしい。「腕太き」が、素朴な描写でもあり、おでんを美味しくするスパイスにもなっていて本当に良い。

301 忘れられし者の気楽さ冬日向

 酸いも甘いも味わった者の諦観と幸せ。冬日向には、主観的な喜悦と客観的な寂寥とが満ちる。歳時記の例句に載って欲しい。

327 ぶかぶかの黒いコートに隠すもの

 私が痩せぎすだからか非常に共感できる。隠したものが捨て猫でも盗んだ腕時計でも何であれ、モヤッとした感情が伝わってくる不思議。


短歌

 一覧の番号順に三首ほど。(五七五!うまい!)

57 ハグからのずっとこうしたかったんだ私もだよと時よ止まれと

 以下、脳内会議の様子
自分A「イタすぎる!詩情もなければ技巧もない、妄想丸出しの馬鹿丸出しじゃないか!見るに堪えないよ!」
自分B「なんでそんなに怒ってるの?もしかして思い当たる節でも?」
自分A「……」
自分C「こういう妄想好きだもんね」
自分A「……」
自分B「素直になればよいものを」
自分A「……いや、こういうの認めないから」
自分C(ため息)

143 風 祈ることしかできぬ人間の日の出をじっとじっと待つ群れ

 まず、自然と風が冷たい。凄い。
 次に、「しかできぬ」「じっとじっと」「群れ」から漂うアイロニー。好き。
 それでいて、「祈る」「待つ」の動詞には人間の尊さが滲む。とても好き。

149 きっぱりと雲が途切れる場所がありあの下は違う風が吹くんだ

 天使の梯子が見える。これだけで十分すごいのに、実物より美しい梯子が想像できる。しかも美しさから惹起される感情は羨望か嫉妬か諦念か、どこかネガティブ。最高。私にとってはこの歌こそが「違う風」である。


川柳

 門外漢ではありますが三句ほど。(川柳いけるかもしれん)

169 帰りたい共通テストやめたいな

 これほど直截に気怠さを表現できるのか、と。試験会場がありありと浮かんで怖い。

205 偶然にしろくまかってくれる叔母

 たまたま叔母がアイスを買ってくれた。それだけの句だが、「かって」がひらいてある。つまり「白熊飼って」とも読める。白熊を飼う偶然、そしてそれが可能な叔母、妄想は止まらない。

230 川柳を詠むと張りきる向こう見ず

 共感しかない。


さいごに

 白熊杯は初めての参加でしたが、勝手に賞と共に素晴らしい企画です。
 運営の皆様、本当にありがとうございます。

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