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第25号(2024年5月3日)迫撃!火炎放射犬型UGV、そしてドローンを巡る撃墜権限(3月期)

皆さんこんにちは。第25号では「カウンタードローン」に関する記事を中心にニュースを振り返ります。



ウクライナの戦場が示した米国製ドローンの限界

概要
The Wall Street Journal に2024年4月10日掲載(記事本文 ※有料)
原題 ” How American Drones Failed to Turn the Tide in Ukraine”

要旨
 米国製の小型ドローンはウクライナの戦場でその性能を発揮できないばかりか、高価かつ修理が難しい傾向にあるとのことだ。
 米国ドローン企業の一つであるSkydioはウクライナに数百機のドローンを送ったが、ロシア軍の電子戦の前に苦戦を強いられた。同社CEOは同社のドローンが前線ではあまり成功したプラットフォームではないことを認めた。

ウクライナで投入されたskydioX2D(出典:Youtube)

 ウクライナ当局によれば、米国製ドローンは壊れやすく、妨害電波に弱いことが判明したとのことである。さらには離陸も任務完了も帰還もできず、しばしば宣伝されている飛行距離や積載能力を発揮できないようだ。 
 他の米国企業も例外ではない。スイッチブレード300をウクライナに供給しているエアロビンメントはロシア軍の電子戦に対応するために、アップデートを必要としている。
 米国とギリシャの新興企業ベロス・ローターズは、同社の双発ヘリコプタードローンV3が12月のキエフ郊外でのデモンストレーションでテストに失敗したと発表した。
 ノースカロライナ州を拠点とする映画製作用ドローンのメーカーであるサイバーラックスは、関係者への文書による説明の中で、無人機の生産と納品の目標を達成できなかったと述べている。
 こうした低調な開発・生産状況に比して、米国製ドローンは高価だ。米国製小型ドローンはDJIといった中国製ドローンと比べて一機当たり数万ドル高い。このような米国製ドローン価格の高騰は、中国製品に対する米政府の対抗措置の結果であると指摘されている。
 米国はDJIを中国の軍事企業であり、北京の監視ツールだと呼んでいる。米国防総省は米軍でのDJI製ドローンの使用を禁止しており、米国議会はDJIの新製品を禁止する法案を提出している。
 この規制は製品だけではなく、部品レベルにまで及んでいる。国防総省はドローンメーカーに対して中国製部品の使用禁止を求めており、その結果として値段の高騰につながっている。

(出典:DJI)

 またドローンメーカーが、ドローンのソフトウェアをアップデートするためには政府の承認が必要となっている。その結果として、米国製ドローンは進化する敵のサイバー攻撃や電子戦に対して脆弱なままとなってしまう可能性がある。
 こうした状況に米国政府及びメーカーも手をこまねいているわけではない。国防総省内にある国防イノベーションユニットは数日以内にソフトウェアの承認をするため、プロセスを改善中だと述べる。
 またSkydioもウクライナの戦訓を開発に取り入れるべく、17回もウクライナに社員を派遣している。そうしたフィードバックを元にSkydioは新型X10を開発した。「ウクライナの戦場でX10を大規模に成功させることは、スカイディオにとって、そして米国のドローン業界全体にとっても非常に重要なことだ」とSkydio社CEOは述べている。
 この記事では米国のドローン企業であるSkydioの例が使われているが、同社CEOはこの記事についてコメントを発表している。

コメントの内容は以下の通り。
・記事ではSkydioの最新ドローンであるX10Dをトップ画像として使っているが、これは誤解を招くものである。このドローンはまだウクライナの前線に配備されていない。
・Skydioは中国以外のどのメーカーよりも多くのドローンをウクライナに納入している。Skydioのドローンは現在、ウクライナ全土でさまざまな作戦に使用されており、ロシアの戦争犯罪を調査する上で重要な役割を果たしている。
・記事で触れたようにX2Dはロシアの電子戦に耐えられなかったが、X2Dが耐えられない電子戦なら他の同クラスのドローンも同様に耐えられない。
・X2の限界を受け止めており、エンドユーザーのニーズを理解するため2022年2月以来ほぼ毎月開発メンバーがウクライナ入りしている。
・新型X10はウクライナを含めたエンドユーザーのニーズを把握して、一から設計したドローンである。
・X10を様々な電子戦下でテストしているウクライナからのフィードバックは、中国製ドローンとX10を置き換えるために何千機も要求するほど好意的なものだった。
・中国製ドローンにも脆弱性はある。輸出規制で入手は難しくなってきており、ハックして使う必要があるがロシア側のEWの進歩により効果が薄れてきている。
・Skydioはウクライナのために、X10Dを大規模に役立てるつもりである

コメント
 Skydioは戦争初期からドローンをウクライナに供給したり、パイロットの育成も行ってきていたのは覚えている。最もロシアとウクライナの電子戦競争のスピードがあまりにも早すぎるという外的要因もあるとは思うものの、記事で触れられた規制によってソフトウェアの更新もままならないのでは対応は難しいだろう。
 最近のゲームを見てて思うが、バグの発生等の問題が生じたときにいかに早くソフトウェアの更新をできるかが勝負なので、ソフトウェアの更新にいちいち承認が必要なようでは変化していく戦場での問題に対応できるとはやはり思えない。(以上NK)

 この記事の米国の事例は、技術力というより政策の失敗に起因するものだと考えられます。日本にも自衛隊が使用する装備品は国産でなければ!と考える方は多いと思いますし、可能であれば私もそれに越したことはないと考える一人です。
 しかし!コスパも悪ければ相対的に見て既存兵器の延長上にある兵器技術は長年生かさず殺さずやってきた調達のお陰で廃れつつあるのが現実です。ドローンはこれらの防衛装備品よりもっと悲惨な状況ですから、むしろ優れた他国の技術を活用し、その経験から得た学びを自国にフィードバックすることが大切ではないかと考えます。 (以上S)

 米国仕様のSkydioの機体を所有し活用してきた一人として飛び入りコメントさせていただきます。以前の号でもコンシューマ向け販売を停止したSkydioが抱えるであろうフィードバックについてのリスクを指摘したが、今回の記事は同社の機体X2DをRQ-28Aとして正式採用した米陸軍からではなくウクライナ軍から実戦踏まえたフィードバックが届いた、という記事。
 一方でアダム・ブライCEOの反論に肩入れするつもりはないが、彼の反論も最もな内容である事も確かで、ウクライナに配備されてないリリースしたばかりのX10D写真を使用している点を含め特に最近このNoteでも目に付くようになった海外メディア及び記者の民生技術に対する解像度の低さを十分に踏まえて読む必要がある。

ウクライナには投入されていないのにWSJ記事で使われてしまったSkydioX10D(出典:Skydio)

 前記した通り米国仕様のSkydioの機体を海外で活用してきた経験から言えるのは、平時においてはDJIのどの機体よりも群を抜いて容易で安全に安定した飛行が可能な「AIドローン」であるという点。(※日本国内で流通する電波周波数帯を日本仕様にした同名機種は除く)
 これらの点からするとSkydio X2Dはあくまでも民生用機体がベースであるためDJI含め電波周波数帯のホッピングがロシアの電子戦には対応していないのは当然の話。
 NKくんも指摘しているソフトウェアの更新に関連しては、2023年に施行された米国の新たな規制のおかげで所有する同社の機体も同様に離陸時にリモートIDの登録が紐づけされていないと離陸すら出来ないという事態に陥った経験からも緊急の場合の緩和処置が欲しいところでもある。
 ただ今回の記事も見方を変えれば、ウクライナで活き〆にしたフィードバックを得た事は同社にとっては大きな利益だろう。CEOの反論にもあるようにウクライナでのフィードバックが活かされたSkydio X10はスペック的にも搭載するNVIDIA社製のエッジコンピュータJetsonが最新のJetsonOrinシリーズにアップグレードされたことから動作も処理も速くなる事を期待せずにはいられない。
 少なくとも国産のアレと比べると前モデルですら天と地ほどの差がある事は保証しますw。後ろの自身のコーナーで運用含めさらに細かく解説しますんで是非どーぞ。
(以上、量産型カスタム師)

米本土空軍基地に迫る不審な謎ドローンの脅威

概要
The Warzone に3月15日掲載(記事本文
原題 ”Mysterious Drones Swarmed Langley AFB For Weeks”

要旨
 米バージニア州にあるラングレー空軍基地に対して、2023年12月に正体不明のドローンが複数回侵入したとのスクープをthe war zoneがつかんだ。ラングレー空軍基地広報担当者によると、2023年12月6日の夕方にドローンの侵入を初めて観測し12月中に複数の侵入を発見したとのことであり、ドローンの数・サイズ・構成も様々であったという。
 ラングレー空軍基地はF-22ステルス戦闘機が配備されている数少ない基地であり、首都防空を含めた本土防衛の要である。加えてラングレー空軍基地付近には、米海軍最大の基地であるノーフォーク海軍基地や造船所といった他の米軍の重要拠点も集結している。
 ドローンによる侵入が相次いでいた時期、この地域では空中給油機の支援を受けながら戦闘空中哨戒をしていると見られる空軍のF-16戦闘機が目撃されている。更には12月19日にはNASAの所有するWB-57Fがラングレー上空を周回していた。この航空機は画像センサーといった複数のセンサーを搭載することが可能な研究機であり、米軍にも協力してきている。
 また米北方軍司令部(NORTHCOM)と米加北米防衛司令部(NORAD)のトップであるグレゴリー・ギヨー空軍大将も、今回の侵入について米議会上院軍事委員会で今回の侵入について認めている。
 こうした軍事基地へのドローン襲来は無視できない脅威である。例え武装を搭載していない市販の小型ドローンであっても、航空機の飛行を妨害し、情報収集任務を行うことができる。さらにこのドローンが武装化したものであれば離陸前のF-22を破壊することができてしまうだろう。

コメント
 米軍基地及びそのアセットの周りを正体不明のドローンが飛行する事例は、また起こったのかと思うほどに頻発している事案だ。
 例えば2019年の2月~3月にかけてはグアム島アンダーセン空軍基地に配備されているTHAAD(米軍の配備している迎撃ミサイル)システム付近に複数の正体不明のドローンが侵入している。
 陸上だけではなく、海上においても不審なドローンが目撃されており、2019年には南カリフォルニア沖において米海軍艦船が正体不明のドローンに追跡されるという事案が複数発生し、追跡された艦船の中には米海軍の最新鋭水上戦闘艦である「USSズムウォルト」も含まれている。
 未だに公になっていない事案も多数あることを考えると、今回のラングレー空軍基地への侵入も氷山の一角に過ぎないと考えるべきだろう。
 こうした軍事基地への正体不明のドローン侵入という事案は、日本において発生しているという話はなかなか出てこない。発生していないという可能性もあるが、考えられるシナリオとしては①ドローンの侵入に気づいていない、②ドローンの侵入を公表していないという2つのシナリオが可能性が高い。(以上NK)

 このニュースは、米軍でも戦闘時以外のいわゆる基地警備的な文脈によるドローン対策が厳しいことを示していると思います。日本でも小型無人機等飛行禁止法や航空法により規制だけはとても厳しいことになっていますが、では実際のところ対処能力があるのか?という点については、答えは誰も分からないのではないかと思います。
 こんな状況でテロリストが作成した自爆ドローンが突っ込んできたら、飛行場に謎のFPVドローンが出現し、一通り情報収集した後いつの間にかいなくなっていた――などという事態には、一体どう対処するのでしょうか。
 日本の政府機関の対応能力を踏まえれば、民間人向けのドローン飛行を色々な側面からガッチガチに法規制するというのはあながち間違いではないかもしれませんが、無意識のうちに日本人向けの仕組みになってしまっていることは大きな問題です。明日はどうなるか分かりません。胡坐をかかずに物理的にも対応能力を向上させていくべきです。(以上S)

米国のカウンタードローン権限の限界

概要
Nextgov/FCW に2023年10月31日掲載(記事本文
原題 ”Mysterious Drones Swarmed Langley AFB For Weeks”

要旨
 FBIのクリス・レイ長官は米議会において、ドローンに対抗する連邦政府の権限を拡大しなければ、米国は大規模な集会や空港、重要なインフラに対するリスクに対して「事実上無防備」になってしまうと述べた。
 国土安全保障省と司法省は2018年、"特定の施設や資産"に脅威を与える無人航空機システム(UAS)に対応するための拡大された権限を与えられた。これらの権限は、職員に無人機を「無効化、損傷、破壊するために合理的な力を行使する」能力を与えている。しかし、そのカウンタードローンに関する権限は11月18日に失効することになっている。
 米議会上院国土安全保障・政府問題委員会の公聴会においてレイ長官は、もし国土安全保障省と司法省のカウンタードローン能力が再承認されなければ、「この国には、公共イベントで対UASセキュリティを提供できる公共安全機関はない 」と述べた。
 またレイ長官は、カウンタードローン能力は州や地方の法執行機関にも整備される必要があり、FBI職員による訓練計画もあると述べた。
 ドローンによる市民社会への脅威はアメリカにおいて顕在化している。ゲーリー・ピーターズ上院議員は、正体不明のドローンがスタジアム上空を飛行したことにより、フットボールの試合開始が延期されたことを引き合いに、「このような事件は、残念ながら一般的になりつつある」と指摘した。
 ドローンによる航空機への妨害も懸念されているシナリオである。国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は委員会に対し、空港の所有者や運営者が、民間航空機を保護するために「連邦政府の権限を維持する必要があると、はっきりと我々に伝えてきた」と述べている。
 またDHSの報告書によれば、メキシコの麻薬カルテルのような多国籍犯罪組織が小型ドローンによってその活動を強化しているという。マヨルカス長官はこうした脅威を念頭に、政府のカウンタードローン権限は人身売買や麻薬流入を防ぐためにも必要だと指摘する。(部谷注:現在では法規制が変化していることを前提に、本質的な課題として読まれたい)

コメント
 まさか米国でドローン対処の限界があった とは思いませんでした。米国では私人の権利が尊重されているとも言えますが、テロ等の危険よりも尊重されるものなのかという点は疑問です。

  市場拡大を阻害するような法規制も考え物ですが、逆に被害を被る可能性のある人々が保護されない政策も考え物です。次の記事では更に具体的に米国がカウンタードローン施策を行う上での問題点を取り上げます。(以上S)

 当時ピーターズ議員が指摘しているように、ドローンによる日常生活への脅威が大きくなっているにも関わらず、カウンタードローンに関する権限が連邦政府機関の一部にしか与えられていなかった というのは正直驚きである。脅威と対応が均衡 の重要性を示唆している。  
 (補足)加えて米国における過去に発生したインフラ攻撃の事例とその対策についての記事も紹介しておきたい。インフラ攻撃の事例でいうと、米国では2020年に、改造したDJI Mavic2を使った変電所への攻撃がある。こうした国内におけるドローンへの脅威、特にインフラへの攻撃に対して、米国政府は“Domestic Counter-Unmanned Aircrafts Systems National Action Plan”を策定している。(以上NK)

アメリカの法執行官がドローン対処でできること・できないこと

概要
Police Magazine に2023年3月16日掲載(記事本文
原題 ” Counter Drone Restrictions and Laws”

要旨
 アメリカ法執行界においては、ドローンが悪質な活動に使用されつつあることに大きな懸念が持たれている。麻薬カルテルはドラッグの輸送にドローンを使い、空港や発電施設といったインフラ攻撃にも使用され、中東やウクライナの戦場では爆撃にも使われている。そのため法執行機関が、この進化する脅威に懸念を抱いているのは当然のことである。この脅威に対応するため、多くの法執行機関がカウンタードローン技術の獲得に乗り出している。しかしドローンガンジャマーや一部の電波探知技術など、一部の技術は連邦法や規制に違反している。さらには不審なドローンへの対処次第では、対処した法執行官が刑事訴追される恐れがある。

ジャミングガンを構える米陸軍兵士(出典:米陸軍)

 現在、米国では特定のカウンタードローンシステムを合法的に使用できる機関に大きな制限がある。連邦議会は、国防省、エネルギー省、司法省、国土安全保障省にのみ、厳しく規制されたドローンの探知・軽減活動を行う権限を与えている。これらの活動は、適用される可能性のある連邦刑法や監視法にかかわらず、対象となる施設や資産に対する信頼できる脅威と評価されるドローンに限定されている。連邦航空局(FAA)もまた、管理されたカウンタードローンシステムの探知・軽減テストに従事する権限を持っている。なぜこうした制限があるのだろうか?それは以下のような理由である。

① 合衆国法典第49編第44801条(11)によれば、ドローンは航空機とみなされる。
②ドローンは、コンピュータ不正乱用防止法(CFAA)による「保護されたコンピュータ」の定義を満たす可能性がある。
③ カウンタードローン目的に使用される技術的ツール、システム、機能の中には、連邦法および規制に違反するものがあるかもしれない。
④特定のカウンタードローンシステムの使用は、国民のプライバシー、市民権、市民的自由に影響を与える可能性があり、同時に空域管制システムの安全性に影響を与える可能性がある。

 飛行中のドローンに対して行動を起こすことは、連邦法違反になる可能性があるだけでなく、公共の安全のために行動している法執行官であっても刑事訴追される可能性がある。特定の検知・軽減技術の使用に関して適用される可能性のある連邦刑事法がいくつかある。例えば、以下のようなものがある:

①法執行官であっても、(法律上航空機とみなされる)ドローンに損害を与え、不能にし、破壊し、押収し、または支配権を行使するために行われる行為を行った場合、航空機妨害行為法および航空機海賊行為法が適用される可能性がある。これには、ネットや投擲物のような物理的な方法だけでなく、ジャミングやスプーフィングといった方法も含まれる。
② ペン/トラップ法および盗聴法は、電子通信を捕捉、記録、解読、傍受する無線周波数探知機能(その全部または一部)に適用される場合がある。
③ドローンは「保護されたコンピュータ」に該当する可能性があり、コンピュータ不正乱用防止法は、保護されたコンピュータに無許可で意図的にアクセスすることを禁じている。ドローンまたは地上管制局から衛星への、または衛星からドローンまたは地上管制局へのGPS信号を妨害したり干渉したりするようなカウンタードローンシステムは、この法令に抵触する可能性がある。
④軍事、法執行、公安、または民間防衛機能に従事する緊急要員に関する通信の妨害は違法である。これらの通信を妨害、劣化、干渉するようなカウンタードローンシステムは、違法となる可能性がある。

 カウンタードローンシステムの取得、設置、試験、運用に関して考慮すべきことは、連邦法だけではない。連邦航空局(FAA)と連邦通信委員会(FCC)の両方が、航空活動と無線周波数に関連する様々な法律と規制を管理している。国家空域の効率と航空安全に関連する法律がいくつかある。例えば空域の主権と使用(合衆国法典第49編第40103条)は、航行可能な国家空域を不当な妨害なしに通過する公衆の権利を確立している。レーダー・システムを含め、電波を発するカウンタードローンシステムはすべて、FCCが管理する法律および規制への準拠を評価されなければならない。携帯型ドローン・ジャマーを含む無線周波数信号を妨害するシステムに関しては、FCC規制に準拠していないデバイスの製造、輸入、出荷、販売、使用に関する米国の規約がある。また公共安全と法執行機関が考慮すべき問題がある。それは言及された法的禁止は、システムの広範な分類に基づいていないという問題である。法律上の禁止事項は、個々のシステムの機能と、システムが使用され運用される具体的な方法に基づいている。
 これまで述べてきたような限界はあるものの、ドローンがもたらす脅威に対して、法執行機関ができる対策がある。

①訓練、これにはドローンの脅威の理解、ドローンの基礎知識、ドローンに関する規則と規制、基本的なカウンタードローン作戦などが含まれる。
②方針と手順、方針を策定することで、空域認識とセキュリティの問題に取り組むための組織の取り組みの概要を示す一般的なガイドラインを提供することができる。手順を作成することで、特定の状況に対処する方法の青写真を提供する。
③技術-連邦法に違反しない技術的解決策がある。レーダー、音響、EO/IRカメラは、連邦犯罪監視法に違反する可能性が低い。無線周波数探知システムは、勧告に従うかどうか、機能性に基づいて評価されるべきである。ドローンを無効化、混乱、破壊することを目的としたカウンタードローンシステムは、連邦法および規制に違反する。
 カウンタードローンシステムを追加しようとする機関は、以下の提言を考慮すべきである。

① 連邦、州、および地域の犯罪監視法および通信法に精通した弁護士に助言を求める。
②カウンタードローンシステムの機能または使用が、国民のプライバシー、市民権、市民的自由に影響を与えるかどうかを評価する。
③カウンタードローンシステムの機能性と合法性について、独自の法的・技術的分析を行う。
④カウンタードローンシステムの合法性や機能性に関するベンダーやコンサルタントの説明を鵜呑みにしないこと。
⑤ベンダーやコンサルタントの国土安全保障/都市/公共安全保障のカウンタードローンに関する知識と運用の専門知識を徹底的に評価する。
⑥州、郡等の機関には、FBIの合同テロ対策本部(JTTF)のような連邦対策本部に配属された職員を持つカウンタードローン対策当局も規定もない。

 ドローンの脅威は急速に拡大している。しかし多くの法執行機関が待ち望んでいたカウンタードローンを担当する司法当局はまだ実現していない。そのため、各機関はカウンタードローン技術を評価・購入する際には慎重を期すべきであり、その間に確立された法的・規制的境界の範囲内でプログラムの開発を開始するための論理的な手順を踏むべきである。

コメント
 米国の法制度からするとドローンは「航空機」であり、法律で保護される「コンピューター」と見なされる場合があるという。ドローンを航空機と見なして、セスナ機などと同列に扱うのは日本では考えられない概念である。常にアップデートされる小型無人航空機という新しい存在の出現に対して、法的枠組みもアップデートしていく必要性を示している。
 またカウンタードローンを導入する機関向けの提言も興味深い。③や④に書いてあるように、メーカーの説明を真に受けないという点は重要であろう。しかしこれを行うためには、技術の目利きができる人員が必要となるだろうが、各機関はそうした人員を確保できるのかは不明だ。(以上NK)

  これは根深い問題です。日本においては技術的な改善を踏まえて法執行機関だけでなく、カウンタードローンシステムを作っているメーカー側のロビー活動が必要なことを示していると思います。本記事が当時のものとして示唆しているのは、国民に寄り添った法令が逆に国や人々の安全を脅かしかねないということだと思われます。
 日本としても早期にドローンを活用し、不法な取組みに対しては物理的にNOを突き付けることができる法整備と体制整備が必要だと考えます。(以上S)

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