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リメイクは喜びに満ちている

父から譲られたオパールのカフスボタンをリメイクして、お守りのアクセサリーにすることを思い立った話を、先日書いた。

アクセサリー作家さんに託したその品が、とても素敵に出来上がってきた。お守りなので、毎日身につけている。今この文章を書いている指にもリングがはめられている。
instagramに投稿すると、それを見た姉や母からも「素敵だねぇ!」とLINEのメッセージが来た。

先週、実家へ行った際に、実物をみんなに披露した。父もとても喜んでいる。

リメイク代は2個で1万5千円だったと話すと、姉や姪たちの目の色が変わる。
そこへ父が、「実はまだあるんだよ」と奥の部屋から木箱を持ってきた。開けると、本当にまだまだカフスボタンやネクタイピンがある!
でも考えてみたら、50年近くスーツを着る生活だったのだ。そして、父はおしゃれも買い物も大好きな人である。
「そういえばこれもしてたね」「これはわたしがプレゼントしたものだわ」と母も懐かしそうに一つ一つを手に取って眺めていた。

就職先が内定したばかりの姪っ子が、この古い装飾品に興味を示し、わたしもこれを指輪にしたい、といくつか選んだ。
リメイクの手配はわたしが引き受けることにして、姪っ子には自分の指輪のサイズを調べるようにと指示を出しているところ。

父のサラリーマン生活をともにした装飾品が、娘や孫娘に引き継がれる。
何をどんなふうにリメイクしようかと相談をしたり、仕上がりを見せたり、もちろん身に着ける本人も、新品とは別の愛着をそのアクセサリーに抱く。
リメイクって、なんて素晴らしい方法だろう。
箪笥にしまわれていた家族の古い愛用品が、新たなデザインに生まれ変わったことで、また表舞台に出て、若い世代がそれを愛用する。
受け継ぐこと自体はモノの手渡しによってできることだけど、そこにデザインの変更が加わることで、受け継いだ人が、今の自分の好みで愛用することができるのだ。そこが楽しいし、サステナブルだとも思う。

丘みつ子さんを目指したい


そんな話と前後して、夫が昼食休憩の日課としている『徹子の部屋』をまたチラ見していたら、ゲストの丘みつ子さんの話題が面白すぎて、引き込まれてしまった。

女優の丘みつ子さん、73歳。
30年以上暮らした箱根から、2年前に小田原へ夫婦で移住。箱根では本格的に陶芸に取り組み、レンガを組んで自作した穴窯を、これまで140回も焚いたという。一度窯に火を入れると、一週間は24時間体勢で交代しながら焚くのだそうだ。「その間はごはんも立ち食いするくらい、もうめちゃくちゃ忙しいのよ!」と溌剌と語り、さすがの徹子さんもタジタジのご様子だった。

自分で窯を焚くのが体力的にしんどくなってきたと、山を降りて、より暮らしやすい小田原へと引っ越したそうだ。ここではご近所付き合いが楽しくて仕方ないといい、新鮮な食材をいただけばそれを調理してお返ししたり、そのときに手渡す紙袋もカレンダーの紙で手作りしたり。この手製の紙袋、相手に合わせて絵柄を選ぶという心遣いも粋で、徹子さんにはパンダの絵を描いた紙袋をプレゼントしていた。

また、母が洋裁をやっていた影響で子どものころから縫い物が大好きで、コロナ自粛中は、古い服や着物をリメイクして30着も作ったそうだ。
その日に着ている白いシャツが凛としていて素敵だわ、と見ていたら、なんと、友人の夫の遺品だったタキシード用シャツをリメイクしたという。
思い出の品として家族が処分に困っていたものが、リメイクによって、『徹子の部屋』に出演する衣装になってしまうなんて! なんて夢のあるストーリーだろうか。亡き夫のシャツを丘みつ子さんに譲ったご友人の喜ぶ顔まで浮かぶようだ。

旺盛な好奇心とチャレンジ精神で、充実した人生を送っていることがよくわかる丘みつ子さんに、わたしも夫も「この人、すごい」という言葉しか出てこなかった。あの日から、丘みつ子さんがわたしの憧れの女性リストに加わったのは言うまでもない。

リメイクの可能性と希望


少し前の新聞でも、興味深い記事を読んだ。
遺品の着物を預かり、日傘にリメイクしてくれる女性がいるという。

このアイデアも本当に素敵。
世界中で廃棄の問題が深刻化する今、すでにあるモノを使って、新たなデザインを生み出すリメイクは、これからのモノづくりのかたちとしていろんな希望や可能性を秘めているように思う。

家の整理も、「リメイク」という視点を持ちながら行えば、きっと楽しくなりそうだ。
ゴミは減るし、新品を買うより手頃で、それでいてオーダーメイド。
譲った人、譲られた人、きっとリメイクを手がけてくれる人も、みんながうれしい。つくづくリメイクには、喜びしかないように思える。

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