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「ゆっくり長く」前提で生きる

50年近く生きてきて、最近自分に関して「そうだったの?知らなかった!」という事実が次々と明らかになっている。

たとえば、人生初の大腸内視鏡検査を受けたら、14万件以上という検査数を誇る内視鏡専門クリニックの院長先生に、「あなたの腸ね、ものすっごく、長い!まぁー、長かったよぉ~」と言われた。

長い腸と遅い脈

ついさっき、わたしの腸内にカメラをずんずんと突き進めながら検査してくれた先生のそのお言葉は、実感と説得力に満ち満ちていた。
腸が長いこと自体は病気ではなく、あくまで一つの身体的特徴にすぎないと説明されれば、「はぁ、そうですか」と返すしかない。けれど、その日を境に「わたしはものすごく長い腸を持った人間である」という事実を受け入れて生きることで、少し気が楽になったのは事実だ。
便秘しやすいのも、グルテンが消化しづらいのも、太りやすいのも、きっと腸が長いこととどこかで関係している。ならばその前提で、食や運動で対策をすればいい。

別の身体的特徴として、脈が遅い、というのもある。これも健康診断で知ったことで、いわゆる徐脈である。
実はそのせいで2年前は要再検査になってまい、ホルター心電図検査までした。結局、今すぐ具体的な治療をする状態ではなく経過観察となったのだが、そのときも医師の先生は「まぁ、そういう体質ということです」と言った。自分としては、常にあぶなっかしい心臓を抱えているような気がして憂鬱なのだが、たとえばマラソン選手には徐脈の人が多いというし、今年の健康診断では看護師さんが「頻脈よりいいし、動悸など自覚症状がないなら、心臓が強いという見方もできますよ」と言ってくれて「そう捉えればいいのか」とうれしくなった。
深刻な不整脈となれば将来的にペースメーカーをつける可能性もなくはない。けれど、父も、父方の祖父も徐脈体質だったらしいが、ペースメーカーはつけていない。
ただ2人とも男性にしては冷え性で、わたしもそうなのは、ひょっとしたら脈がゆっくりであることと関係があるかもしれない。まぁでも、いずれにせよ自分はそういう人なのだと受け入れて生きるしかないのである。

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生きかた、はたらきかた、暮らし、モノ選びetc.のエッセイが12本入っています。

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