見出し画像

受験終了後に読む中学受験マンガ

今年はじめ、入試直前にわたしが微熱を発したことから家庭内隔離を数日行い、その間に中学受験マンガ『二月の勝者』を一気読みした、という話を書いた日からちょうど3ヶ月が経った。

「このマンガの次号が出るころにはわが家の受験は終わっている」と書いたが、実際その通りになっている。
あれから3ヶ月が経ち、今、娘は熱望していた中学校の制服を着ることができていて、そんなわが子を送り出した後、Kindleにダウンロードされた『二月の勝者 11巻』をソファに寝転んで読むとは、もう感慨深すぎて、いろんな思い出がぐちゃんぐちゃんに渦巻いて、胸が苦しすぎて、お腹まで痛くなりそうだ。

中学受験というシビアすぎるドラマをリアルに描き出し、これまで読んできたなかで、こんなにも「共感しかないマンガ」はなかったと断言できる。

話はいよいよ入試本番を迎えるかと思いきや、季節はたいして進まず、まだ11月。まぁ、わたしが一番しんどかったのも秋だったし、中学受験を決めた家庭にとっては、ここが正念場という時期ではある。
でもこの先、12月だって1月だって、受験生とその親は、やることがてんこ盛りだ。となると、この『二月の勝者』は、一試合描くのにやたらと時間がかかるスポーツ漫画みたいなノリになっていったりして?
まぁ面白いから、それでもわたしは読み続けるけれども。

今号は、「入試にまつわる必要経費」についての説明がかなり具体的に書かれており、「あーもー、ホントそうだったよ……」と一人ブツブツ言いながら、ウンウン頷きながら、読んだ。
以前もnoteでちらりと書いたことがあるが、入試の時期にチャリーン、チャリーンと軽やかに飛び立っていくお金といったら、受験ビジネスの世知辛さに、くやし涙を流すしかなかった。

「第一志望に一発合格」いう最高のシナリオだけを信じ、それに沿ってスケジュールもお金も用意すればいいのなら、何も悩むことはないのだ。
しかし、中学受験という家族ドラマの主役は、まだ12歳の小学生である。そんな子どもが、体力も精神力も限界を超えたところで勝負に挑むという「賭け」に、強気のシナリオしか用意しない親は稀だろう。
普段は明るくて能天気に見える子でも、入試当日は、緊張のあまり会場に向かう電車のなかで気持ちが悪くなってしまったり、そうした影響で実力が発揮できなかったりもする。つまり、学力だけでは予測がたてられない。でも、ここまでがんばってきた努力をなんとか報いてやりたい。「大変だったけれど中学受験をしてよかった」と親子で笑いながらこの体験を終了させたい。そう願う気持ちが強くなればなるほど、入試日程はハードになり、出費も嵩んでいく……というからくり。

『二月の勝者』を読んでいる間、現実の受験が終わった身であるにもかかわらず、その世界は自分にとって過去のものにはまだなっていなくて、わたしの胸は終始締めつけられっぱなしだった。
わが家ではこのマンガを娘も夫も読んでいるので、最新巻についても、早く全員が読み終えて感想を言い合うのを楽しみにしている。

そうそう、娘のクラスメートに、毎日バスの列に並んでいる間に『二月の勝者』を読んでいる子がいるらしい。まだ5巻を読んでいるその子に、娘は「そのマンガの11巻が最近出たよ」と話しかけたそうだ。
その報告を聞いて、わたしは娘に「中学校に上がった今、あのマンガを読んでどんな気持ちがするのか、ぜひ聞いてきて」をリクエストを出した。純粋に、とても興味がある。

中学受験を体験した親の気持ちは、もう知っている。
でも、中学受験を体験した子どもの気持ちは、わが子であっても、結局わからずじまいだ。

実際のところ、どうだったのか。
彼らは自分が親になったとき、子どもにも中学受験をさせようと思うのか。それとも、あんなに辛い思いはさせたくないと受験を回避するのか。

いつかそのときがきて、娘が後者の決断を下したら、わたしはきっと切なさを感じるだろう。
けれどもし、前者の決断をしたとしても、この先娘が直面することになる受験生の親としての試練を想像しながら、やはり胸がざわつくのだろう。

その複雑な思いがそのまま、わたしのなかに刻まれた「中学受験」というものなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?