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自己犠牲癖を手放した私に、見えてきたもの

寂しさ、満たされない気持ちが生み出したもの

私が「自己犠牲癖」を獲得したのは、保育園の年長さんになった頃。
当時2人目の弟が産まれて、お姉さんになった私は、底知れぬ寂しさを感じていた。父母は共働きで忙しかったので、構ってもらう時間が圧倒的に不足していたのだ。
ただ、自分だけを見て欲しい。大事に扱って欲しい。言葉に出来ない、満たされない気持ちが、いつも私の周りに漂っていた。

今思えば、愛情飢餓状態だった、とも言えるかもしれない。唯一、構ってくれるのは保育園の担任の先生。しかし、私の他にも、構って欲しい園児は大勢いる。幼いながらに、どうにか先生の特別になろうと試行錯誤する日々。

感受性の鋭い私は、人の気持ちの動きに、人一倍敏感な子だった。その特技を活かし、編み出した方法は「相手の役に立つ」ということ。

相手の役に立つことで、愛されるという幻想

ある日の私は、たまたま先生のお手伝いをしていた。何を狙ったわけでなく、自然と、困っている先生を助けたい!と思っての行動だった。
そんな時、
「こんなに気が利くのはなおちゃんだけ。本当にありがとう。」
「、、、」
先生からの、予想外の嬉しい言葉に、幼い私は完全に舞い上がっていた。寂しく満たされない気持ちが、一瞬で吹き飛んだような気がした。久しく感じられていなかった、誰かから大事にされているという感覚。

その日私は、「誰かの役に立つことで、私は愛してもらえる」ということを学んだのだった。

次の日も、その次の日も。
先生の行動を観察し、役に立てることがないか探して回る私。自分が疲れていても、寂しい気持ちを満たすためにやり続けた。

相手に褒められ、感謝されることで、やっと自己肯定感が維持されるという「自己犠牲サイクル」がいつのまにか形作られた。もはや、そのサイクルは自分では止められなくなっていた。

心理士として働く中で気づいた、自己犠牲癖

心理士として、カウンセリングをしている中で、私はこの自己犠牲癖と向き合わざるを得ない状況になった。あまりにも自分をすり減らして、患者さんのために働く日々が続き、とうとう体調不良から回復出来なくなってしまったのだ。

当時は朝から夕方まで、1日16人の患者さんを相手にカウンセリングをしていた。30分ごとに患者さんが入れ替わるその光景は、もはや回転寿司のようだった。

それでも、私は患者さん1人1人を愛していたので、その苦しい働き方を続けた。患者さんのためならば、自分がどれだけすり減ってしまっても、仕事はやり遂げたかった。なぜだか分からないけれど、自分がそれをこなせなくなることが無性に恐かった。

完璧主義と、自己犠牲癖のダブルパンチで、日に日に私は衰弱していった。体調不良で仕事に行けない日が続き、“このままではいけない”と危機感をおぼえた。

自己肯定感の低さと、私の中の大きな不足感

この経験から、必然的に「わたし」に向き合う時間が増えることとなった。この状況を作り出している私の内側には、どんな思い込みがあるのだろう。
今までの働き方を含め、自分を見つめ直す日々。
ただ、1人で考えるばかりだと、落ち込んでしまい、ますます自己嫌悪になってしまう。

信頼出来る方のセッションを受けたり、他者の力も借りながら、内省を進めた。その中で見つけたものは、自己肯定感の低さと私の中の大きな不足感だった。
“自分が、ただ、ここに存在してもいいのだ、という安心感” “自分は、いるべくして、ここに存在しているのだという自信”

「誰かの役に立つ」という前提条件がないと、自分はここにいていいのだろうかと、不安でいつも怯えている自分がいた。完璧主義も、自分の存在理由を、自分に納得させるための材料に過ぎなかった。

「環境が私を苦しめているのではなく、私の信じ込みが私を縛り、苦しめているのだという事実」そこに気づいたからには、1つずつ手放していくことで、自分を開放させてあげたいと強く思った。

「自分が満ち足りているということ」は最高の他者貢献となりうる

それ以来私は、自己犠牲で患者さんに尽くすスタンスを辞めた。そしてそれは、予想外なことに、私と患者さん双方にとって、良い結果となって返ってきた。

私は、私のエネルギーを大切にすることで、見違えるほど疲れにくくなった。そうして私は、笑顔でカウンセリングが出来るようにもなった。疲弊していた頃と比べ、パフォーマンスが上がったことで、患者さんの変化も今まで以上に大きくなっていった。

「ただ、元気で満ち足りた自分でそこに存在すること」が、信じられないほど、相手にとって良い影響を及ぼすということ。それを身をもって経験出来たことは、私の人生にとって非常に重要で、かけがえのないギフトとなった。


おわりに

今でも時々、昔の癖で頑張りすぎることがある。頑張りすぎる自分に気づいたら、一息ついて立ち止まってみる。

自分で自分に「よくやってる、あなたはとーっても素敵。」と心を込めて労る。「また無理しちゃって、なんて愛おしいんだろう」と可愛がる。

自分が愛でいっぱいに満たされたら、私はまた、明日を笑顔で迎えられるから。


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