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「EDENA」English Edition【Moebius書評】

フランスにコミック文化があるのをご存知だろうか。

Moebius(Jean Giraud)は1938年フランス生まれの漫画家、アーティスト(2012年没)。
SF、ファンタジーをメインの作品を数多く手掛け、ホドロフスキーやルネ・ラルーとも制作を共にした。

ホドロフスキー、ルネ・ラルーと聞いて察した方も多いであろうが、かなりユニークなアーティストである。


本作「The World of Edena」(原題: Le Monde d'Edena) は1983年出版の長編コミック。

2人の" human" ATANとSTILLが宇宙を調査中、ある惑星に不時着。

何故かあらゆる星から同じ状況の宇宙人たちが集まっていたその惑星には妖しく美しい" Pyramid" が鎮座、その周りには不思議な、" こちら側" に生ける者には抗えない何かが漂っている。



STILLがPyramidに踏み込んだことにより物語は次のステージへ。
かつては楽園とされていた惑星" EDENA" を舞台に終わりの見えない"あちら側" と"こちら側"、そして" 意識世界"  の不可解で美しい宇宙の旅が始まる。



" ATANとSTILL" の名は" アダムとイヴ" を我々に連想させる響きだが、視界的に男性として描かれていたふたりの状況の違和感に読者は気づいていく。
ロマンチックとは言い難い描写にドキリ。

それは恐ろしく、だけども美しい。
そしてときどき痛くて切ない。




読者はATANとSTILLと共に、フィジカルな物質宇宙と目に見えない幻想世界の行き来を強いられ、あっというまに果てなき宇宙へ。

夢か、現実か、それとも幻想なのか。


単なる" コミック" でも" ファンタジー" でもない。
そこにあるのは言葉にし難い壮大な何か。
そして息を呑むような美しい絵の数々。

彼の世界観とその画風はまさに現実と幻覚の狭間。わたしたちは目に見えないものを視界の中に見せつけられ、ふと疑問が頭をかすめる。
私の生きるここは?果たして現実?
ならば夢とはなんなのか?



日本人に馴染みのある" 漫画" とはひと味もふた味も違って取れる本作だが、全360ページオールカラーかつA4サイズとかなりヘビー。(私が購入したのはEnglish Edition。翻訳言語によって出版社や仕様は異なる)

ちなみに通常のB6サイズを想像してオンライン注文していたので、届いたときはなにが来たのかと思ってびっくりした。笑


読了の達成感


この厚さ



彼の他の作品はセリフがないものをはじめ、自身の大麻禁煙(意識)体験をもとにしたSF、はたまた西部劇など、多種多様。
その世界の住人たちは読者のピーキーな文化偏愛癖を刺激する。

幻想世界が好きなあなたに、自信を持ってオススメの一冊「EDENA」、興味のある方は是非ご拝読ください。

Mebius wiki こちらからどうぞ)




【余談】English Editionの感想

絶版の作品や翻訳のないものも多く入手が少し困難ですが、英語版は独特なスラングもほぼなく読みやすくかったので英語の勉強にもオススメです。
わたしの住んでいる地域では日本語翻訳は購入できず(日本語は翻訳も少なめのよう)
ちなみにもちろんフランス語版が一番数が多く安価なのでフランス語できる方はそちらの購入がスムーズかと思います。


ではまた。




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