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仁比聡平議員(共産)2024年3月22日 参議院法務委員会(1回目13:40~)

参議院法務委員会で、仁比聡平議員が共同親権の質疑を2回してくださいました。
この書き起こしはその1回目、13:40~の書き起こしです。

仁比議員
日本共産党の仁比聡平でございます。私は共同親権についてお尋ねいたします。
大臣は、所信表明で離婚後共同親権を導入する民法改正案を児童虐待防止施策と並べて困難を抱える子ども達への取り組みと位置付けられました。法案の説明資料でも、子の利益の実現に向けた父母の離婚後の子の養育に関する見直しについてと題されています。そこで、これまでの離婚後単独親権を変えて、離婚後共同親権を導入することが、どのように子の利益の実現になるのか、まず大臣にお尋ねします。

法務大臣
最も子どもの利益のためを図るとすれば、両親が離婚せずにその家庭の中で子どもが育つ、これが一番子どもの利益でありますが、父母双方が離婚した後においても父母双方が適切な形で子どもの養育に関わり責任を果たす、そのことによって子どもの利益を守ることができるのだという考え方でございます。
本改正案はそうした理念に基づいて、離婚後の父母双方を親権者とすることができるものとし、父母双方が適切な形で子どもの養育の責任を果たすことができるようにすることで子の利益を実現しようとするものでございます。

仁比議員
お手元の資料2枚目、これも法務省の説明資料ですが、離婚後の子の養育の多様化を踏まえ、親権・養育費・親子交流等について事案に応じた適切かつ柔軟な解決を可能とする規律を整備するとありますけども、大臣が今お述べになったことはこの説明の趣旨ですか?事案に応じた適切かつ柔軟な解決を可能とすると法務省の説明資料にありますが、大臣が先ほどお述べになった答弁はこれを意味しているわけですか?

法務大臣
これまでは離婚後単独親権だけしかなかったわけですが、共同親権を選びうる道も拓くと。そして適切な状況判断のもとで、それは協議であったり裁判所の判断だったりしますが、子どもの利益にとって一番ふさわしい、一番適切な形態、共同親権なのか単独親権なのか、単独親権の場合は父親なのか母親なのか、それを選べる仕組みになっているわけです。

仁比議員
果たしてそうなのかということが大問題なんだと思うんですね。
父母の葛藤が激しくて、夫婦関係は破綻して冷え切っていると。そういう場合、離婚する前に別居しているという場合もあります。そして離婚するということになった場合も、子どもの養育に関してだけは協力・共同して責任を果たそうと、そういう場合それが子の利益にかなう場合は私も多くあると思うんですよ。けれど、それは子の養育については共同して責任を果たそうという父母の関係性が前提だと思うんですが、大臣はどう思いますか?

法務大臣
まさに仰る通りです。父母の合意に基づいて共同親権を選ばなければ、親権を共同で行使することはできません。そうなれば子どもの利益を守ることはできないので、父母のコミュニケーション、父母の理解、父母の合意、そういうものが整った時には共同親権を選ぶことができると、今までは選ぶ道がなかったわけですよね。そういう制度です。

仁比議員
選ぶことができるようになると大臣はしきりに強調されるんですけれども、法案はそうではなく、合意ができない場合に、裁判所が判断することができるという枠組みになっているわけです。大臣の今のご説明ぶりと法案の構造がどんな関係になるのか、今の説明ではよくわからないです。
別の角度で聞きます。私は、別居や離婚の後も父母間で親としての責任を共同して果たすことが真摯に合意され、それが子の利益に適うという場合は、離婚後も親としての責任を共同しようと、それを親権を呼ぶのならばですよ、私は親権という用語を変えたほうがいいと思いますけども、親としての責任を共同することを親権と呼ぶのなら、共同親権としたうえで、それでも実際の養育の中で意見が一致しなくなることはあり得ますから、その調整等の諸々の規律を定めることはあり得ると思うんです。
けれど、それは離婚後の監護について、現行法の766条で現に行われてきたことなんですね。離婚後の子どもの監護、面会交流も含む、それを協議して定めよう、定まらないときには裁判所で判断することがありますね、というのは現行民法の766条に規定されていることだし、しっかり運用されてきているわけです。にも拘らず、その監護の共同や裁判とは別に、離婚後共同親権を導入しなければならないと考えるのはなぜですか?

法務大臣
現行法においても、事実上離婚後に親が子どもの世話を共同で行う、合意ができて共同に行為ができる場合もあると思いますが、その場合においても親権者は片方です。どちらか、両方ではない。片方の親は法律的な立場が不安定です。法的な親権者ではないという形が残ってしまう。法的にはイコール父というわけではない、そういう不安定な状態に取り残されてしまう。そういうことを回避するために、それであったら両方の親が親権者だと合意できているわけです、実際行動できるわけですから。それだったら法的に共同親権者と定めていいんだ、それが適切だという判断に至っているわけです。

仁比議員
大臣の答弁、やっぱりよくわからないです。
手を挙げておられましたから民事局長にお尋ねしますが、提案されている改正案は今大臣が仰ったような共同行使の真摯な合意ができている場合の父母についてだけではなく、共同行使の真摯な合意ができない父母にも裁判所が共同親権を定めることになっているのではありませんか?

法務省民事局長
お尋ねの離婚後の親権者の判断につきましては、本改正案では離婚後の親権者の定めについて、父母の協議が整わないときは裁判所が子の利益の観点から親権者を父母双方とするか、その一方のみとするかを判断することとしております。この場合において、父母の協議が整わない理由には様々あるものと考えられますので、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないとするのはかえって子の利益を反する結果となりかねないと考えております。
法制審議会家族法制部会における調査審議の過程におきましても、弁護士である委員・幹事から同居親と子との関係が良好でないとか、あるいは同居親の子の養育に不安がある等、父母の協議が整わない場合であっても父母双方を親権者とすることが子の利益のため必要なケースがあり得るという指摘がございました。そのため、本改正案では裁判所は父母の協議が整わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるか等の観点を含め、親子の関係・父母の関係・その他一切の事情を考慮して実質的・総合的に離婚後の親権者を判断すべきこととしております。

仁比議員
今の民事局長のご答弁は、父母の合意のあるなしだけで決めようとしているわけじゃないです、ということですよね。つまり合意ができない場合、非合意型の共同親権を裁判所が定めることがあるというご答弁です。
そうすると、先ほど来大臣が仰っているように、子どもの養育については共同して責任を果たそうという関係性がある場合ということが共同親権も選べるようにするんだというご説明と、この法案の仕組みというのが矛盾しているということになりませんか?

法務省民事局長
先ほど大臣もご答弁なされたとおり、父母双方が親権者として適切に子の養育に関わっていただいて、それが子の利益となるためには父母の関係性がやはり重要な考慮要素のひとつになると考えております。そこで、本改正案においては、裁判所が父母の双方を親権者と定めるか、その一方を定めるかを判断するにあたっては、子の利益のために父と母との関係を考慮しなければならないこととしております。その結果、例えば父母間での協議ができない理由等から父母が協働して親権を行使することが困難であると認められるような場合には、その一方を親権者と指定することになるのではないかと考えます。

仁比議員
今民事局長が説明しておられる条文が資料3枚目の819条の改正案ですが、何を言ってるかわからないですよ。つまり、伺う限り、父母間に親権を共同し、これを共同行使する真摯な合意がない場合、できない場合であるけれど、ちゃんと共同行使ができる関係みたいなことをおっしゃっているのかもな、と思うんですが、合意ができないのに共同できるというのはどういう場合なんですか?

法務省民事局長
父母間で親権者に関する合意ができないという理由にもそのご家族の関係性からいろいろなものが考えられると思っております。先ほど少し申し上げましたように、同居親の養育にやや不安があるとか、同居親と子との関係が良好でないという理由で別居親が子の養育に関わったほうがいいという場合が考えられるということです。

仁比議員
そういう場合を裁判所が見極めると。法文の用語で言うと「共同して親権を行うことが困難」か「子の利益を害すると認められる」などのときは単独親権にしなきゃいけないとなっていますから、そうではないと、共同のほうが子の利益になるという場合を裁判所が認めるという話をしておられるのかなと思うのですが、そういうことがこの法文から読めるのかという問題と、それから実際どんなことを何の立法事実に基づいてやっているのか、説明がなされているとは、私には到底思えないんですね。
実際、法制審議会家族法制部会の棚村まさゆき委員が、要綱が採決された後にNHKのインタビューにこう答えています。「共同親権が望ましい場合と、単独親権のほうがいい場合の基準や運用について十分な議論ができなかった」と。ちょっと驚くべきご発言だと思うんですよ。
もう一人、法制審議会家族法制部会の委員をおつとめになられた戒能委員の朝日新聞のインタビューをお配りしております。「ご覧の通り、2001年にDV防止法ができ、20年余りかけて蓄積してきてようやく被害者の安全を守ることができつつあります。それを後戻りさせてしまうような民法改正になってしまわないか、強い懸念をもっています。」と指摘されたうえで、具体的にこんな指摘があります。「殴られたからすぐに逃げるとは限りません。子どものことを考え、夏休みとか新学期まで待ったうえで秘密裏に子どもを連れて家を出ることは少なくありません。こうした場合は、急迫の事情にしっかり含まれるのでしょうか。」という疑義ですよね。
当の法制審の委員が条文の意味や解釈について重大な疑義を出すと。これは大臣、コンセンサスが得られていないということではないんですか?

法務大臣
法制審に諮問をしましてから要綱の答申をいただくまでちょうど丸三年、長ければいいというものではないかもしれませんけれども、たくさんの論点があり、たくさんのご意見があり、それを丁寧に聴取しながら議論を重ねてきております。
全ての意見がここに盛り込まれたわけではありませんので、色々なご反論もあると思いますが、運営を担ってきた法務省としては、完璧というわけにもそれはいきませんが、ベストを尽くした形に近い努力をしてきたことも事実でありまして、積み重ねてきたものの中にまだ足りないものがあればこれからのご議論で補って頂くと、我々もそういうふうに考えております。

仁比議員
大臣ご自身が法案は完璧じゃないって言ったという話ですか、今の答弁は。戒能先生が指摘している今回の条文案でどうなるのかという問題があれこれありますよね。今後、しっかりと議論されていかなければならないんですけれども、そのなかで戒能先生はこうも言っています。
「同居親の安心安全は、子どもが安心して暮らせる基盤となるものです。子どもの利益を考えるならば、安心安全をまず第一に考えなければならないはずです」と。その通りだと思います。大臣、いかがですか。

法務大臣
子どもの利益をまもるためには、安心安全を守ることが不可欠だと思います。

仁比議員
周りにいる大人から愛されて養育者を信頼できる、そうした安心できる環境が子どもにとって絶対必要ですよね。現行法の離婚後単独親権は、そうした同居親の安心安全の防波堤になっている現実があります。
父母間に真摯な合意がない場合に、共同親権とその行使を求めるということが、別居親の干渉だとか支配を復活・継続させる仕掛けに使われ、子の権利や福祉を損なうことにならないかと、そこに根本的な問題があるんだと思うんですよね。大臣頷いておられますけれども、改正条文によって新たな人権侵害が起こってはならない、改められる条文がそうした危険性をはらむものであってはならない、それはいかがですか。

法務大臣
この直前のご答弁でも申し上げたように、子どもの利益を守るためには、子どもの安全が確保されなければなりません。法改正によって新しくそういうリスクが増してくるということはあってはならないと思います。

仁比議員
その通りでありまして、そうした危険がないんだと言えるためには、被害者や専門家から吹き上がっている数々の不安や懸念に安心できる回答が示されなければならないと思います、大臣も頷いておられるとおりです。
肝心なのは、子どもの権利と福祉の保障なんですから、申し上げてきたようなキャッチボールがなされないまま押し切るようなことはあっては絶対ならないと、強く指摘しておきたいと思います。
戒能さんは、今の日本ではDV被害者は逃げることでしか保護されないと仰っているんですが、民法改正によって子連れ別居が違法と判断される可能性が出てくれば、これはあらゆる取り組みが委縮しかねないと指摘していますが、民事局長、この法案によって子連れ別居は違法とされるんですか?


法務省民事局長
委員ご指摘の点は、今回の改正案のうち、特に急迫の事情のところにかかるものと解釈いたします。
「子の利益のため急迫の事情があるとき」という文言を使いましたが、これは父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては適時親権を行使することができずその結果として子の利益を害する恐れがあるような場合をいい、DVや虐待からの避難が必要な場合はこれに該当すると考えております。
先ほど委員のご指摘の中で暴力や虐待の直後ではなく、子どもの夏休みや新学期を待って家を出るというようなお話もされましたが、法制審議会家族法制部会におきましては、この急迫の事情が認められるのは、加害行為が現に行われているときやその直後のみに限らず、その行為が現には行われていない間も急迫の事情が認められる状態が継続し得ると解釈することができると確認されております。
従いまして、先ほど委員ご指摘のような暴力や虐待の直後でなくても、急迫の事情があると認められると考えておるところでございます。

仁比議員
そういう議論を本当に徹底してしないといけないし、普通一般にそういう事態を急迫と表現はしないですよね。だからこそ様々な議論が起こってしまっていると思います。
この別居ということに関わって、総務省にお出でいただいていますが、住民基本台帳事務におけるDVや児童虐待、ストーカー等の対策として行われる支援措置、これはどのような措置で、主な相談機関はどこで、支援の必要性はどのように判断されるか簡潔にご説明いただけますか。

総務省大臣官房審議官
住民基本台帳事務におきましては、DVやストーカー行為等、児童虐待、及びこれらに準ずる行為の被害者の相手方が、住民票の写し等の交付等を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施しております。
具体的には、DV等を受けた方から市町村長に申し出があった場合に、その相手方が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写し等の交付等の請求の恐れがあると認める場合に、その交付などをしないことができることとしております。
本措置の実施にあたりましては、市区町村長の判断の客観性を担保するため、専門的知見を有する警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関の意見を聴取すること等により支援の必要性を確認することとしております。

仁比議員
ありがとうございました。
9枚目の資料に、R元年以降の実施件数・対象者数を示しておりますが、R元年の6万4千件・13万8000人というところからどんどん増えているわけですが、R5年の推移はどうなっていますか?

総務省審議官
住民基本台帳事務におけるR5年度のDV等支援措置の実施件数および申出者の子ども等を合わせて支援を受けるものを含めた対象者数は、R5年12月1日時点でそれぞれ8万3916件・17万3875人となります。ただし、この数字は能登半島地震の影響により未回答の一部の団体を除いた数字となっております。
内訳につきましては、DVが実施件数で3万7062件・対象者数で8万5406人、ストーカーは3217件・6812人、児童虐待は3468件・7365人、その他は4万0169件・7万4292人となっております。

仁比議員
これだけの方々が居場所を絶対に知られたくないと、恐怖をしているというのは重いことだと思うんですよね。DVの本質は支配し従属させるということであって、こうした被害に取り組んでいる配偶者暴力相談支援センターや児童相談所はどんな構えで相談や支援を行い、支援措置について意見を述べておられるんでしょうか。

内閣府大臣官房審議官
配偶者暴力相談支援センターにおきましては、被害者からの相談をうけるにあたりまして、被害者に寄り添い、被害者の意思を尊重した対応が重要であると考えております。そのため被害者の相談対応にあたる職員につきましては、被害が潜在化しやすいということの配偶者からの暴力の特性を十分理解したうえで、被害者の立場に配慮して職務を行うことができるよう、積極的に研修の機会を提供することとしております。また個々の相談に対しまして、被害者からの話を十分にお聞きした上でどのような援助を求めているかを把握し、被害者の抱える問題を適切に理解して助言を行うこととしております。
ご指摘の支援措置につきましては、措置の申出を受けた市町村長からの照会に応じまして、各センターにおいてただ今申し上げたような姿勢で被害者からお聞きした内容を踏まえ、相談機関の意見を記載しているものと認識しております。

こども家庭庁長官官房審議官
児童相談所ですが、全てのこどもが心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮することができるよう、子ども及びその家庭等を援助することを目的として、常に子供の最善の利益を優先して、個別の相談事例が児童虐待に該当するかの判断を含めた相談援助活動等を行っているところでございます。児童虐待の被害を理由とする支援措置申出書にかかる確認書の送付を児童相談所が受けました場合は、児童相談所において確認書における申出者の状況に相違がないかどうか、児童記録表等の記録に基づいて確認したうえで対応を行っているという段取りになってございます。

仁比議員
それぞれ本当にご苦労様でございます。時間の関係で大臣に一問だけ聞いて終わりたいと思いますが、今のような取り組みのなかで支援措置が出されております。ところが1月、衆議院予算委員会で大臣も答弁に立たれておりますけれども、維新の市村議員が、「そうした支援措置を受けている人も含めて、裁判所が保護命令、これはR4年で1111件ですけども、を出したもの以外は99%でっちあげ、虚偽DVだ」と非難する質問を行いました。
1111件の裁判所による保護命令が出された以外の相談、その中には今申し上げているような8万数千件の支援措置の対象者も含まれているわけですが、これをでっちあげ、虚偽DVだと非難する質問を1月の衆議院予算委員会で行われたでしょう、質問されたでしょう?
私は、今伺ったような相談機関それぞれの専門性や支援の取り組みの中で、支援の必要性が確認されているものを虚偽DVだといって非難する、その支援に取り組む弁護士たちを誹謗する。これは誤りだと思いますが、大臣いかがですか?

法務大臣
当事者の主張の当否、これは各個別の事件ごとに事実関係に基づいて判断されるべきものでありますが、保護命令が発令されていないことのみをもってDVの主張をすべて虚偽だと評価することはできないと考えております。

仁比議員
時間がまいりましたので、続きは後ほど行いたいと思います。


市村議員のトンデモ質疑がまったく何の騒ぎにもならないことに悲しさを感じていたけれど、仁比聡平議員が取り上げてくださったことで幾分癒されました。ありがたいことです。

前半書き起こしは以上。
誤字脱字がありましたらごめんなさい。

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