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友納理緒議員(自民)質疑前半 2024年4月25日参議院法務委員会

友納議員
自由民主党の友納理緒でございます。
この度は理事の皆様、質問の機会をいただきましてありがとうございます。
今回の民法改正についてですけれども、子の利益を確保するために、子の養育に関する親権・監護等に関する規律、養育費の履行確保、面会交流、財産分与の請求期間の伸長、考慮要素の明確化など多くの改正を含むものでございます。
気になる点は多々ございますけれども、時間の関係がございますので、本日は子の養育に関する親権・監護等に関する規律を中心に質問をさせていただきたいと思います。
今般の改正で、協議または裁判により共同親権となるケースが法的に認められるようになりました。我が国はこれまでは離婚後は単独親権でしたので、これは大きな変化、新たな制度でございます。
ただ、実際法が施行されますと、実務上様々な課題が発生する可能性がございますので、新たな制度におきましても、子の利益がしっかりと守られるように図られるように質問をしていきたいと思います。
通告に従い質問をさせていただきます。
まず、親権の行使の方法について質問をさせていただきます。
改正法の824条の2に、この親権の行使方法等についての規定があるわけですけれども、824条の2は父母が共同して行う、それ以外の場合、単独行使できる場合等が定められておりますけれども、824条の2 1項3号に急迫の事情というものがございます。親権が単独で行使できる場合の急迫の事情についてまず質問をさせていただきます。
ここでいう急迫の事情ですけれども、衆議院の議事録等を拝見しますと、「父母の協議や家裁の手続を経ていては適時に親権を行使できず、その結果として子の利益を害する恐れがあるような場合」を指すということですけれども、具体例として挙がっていますのが、DVや虐待からの避難ですとか、医療機関で緊急手術を受ける場合、そういったものが挙げられております。
今申し上げたDVや虐待からの避難の方は、単独行使をする親権者や、子の置かれた状態から急迫の事情を認めるものだと思いますけれども、後者の緊急手術の方はその事象自体を取られて急迫の事情と考えているものと考えますが、この急迫の事情というのがある程度広く解されるのかな、というふうに考えたんですけれども、実際そういう、ある程度広く捉えられるものなのかというところを教えていただけますでしょうか。

法務省民事局長
委員ご指摘のとおり、子の利益のため急迫の事情があるときとは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害する恐れがあるような場合を指しております。
急迫の事情があるときに当たるかどうかの判断においては、その子が置かれた状況や父母の意見対立の状況等、様々な事情が考慮されることになると考えております。
そのため、委員ご指摘のようなDVや虐待から避難中であるといった事情もその考慮要素になり得るほか、緊急手術といった事情も急迫の事情に当たると考えております。

友納議員
ありがとうございます。
具体例が当たることは分かったんですけれども、広く解される可能性、その状態に置かれた父母の協議や家裁の手続を置かれていて適時に親権を行使できず、その結果として利益を害する恐れがある場合と。
急迫というと、ある程度差し迫ること、というような言葉の印象を受けますけれども、実際はそれよりある程度広く捉えられるのかな、というふうに考えています。
法制審議会においても、DVや虐待が生じた後、一定の準備期間を経て子連れを別居を開始する場合であっても急迫性が継続するとされていますので、やはり急迫をどう捉えるかという話もあるんですが、ある程度少し急迫が広めに解されているのかなという印象がありますので、ただこうなってきますと、親権者たる父母がそれを適切に判断できるように、やはりガイドラインですとか、ある程度明確に示しておかないと、この状況が急迫の事情があるかどうかの判断がなかなかできづらくなってしまいますので、ぜひ、その辺りのガイドラインが今回示されることが附則や附帯決議に記載されていますけれども、しっかりと作成していただければ、というふうに考えております。
この点、質問させていただこうと思いましたけれども、お願いをして次の質問に移させていただきます。
衆議院の法務委員会で旅券発行の事例の質問があったかと思います。
海外に居所を指定する事例の中で、旅券発行の話もあったかと思いますけれども、その際、法務省の回答では、「相当程度の長期の留学等の海外転居の場合は共同行使が必要」とのことでしたけれども、それでは例えば、常時身上監護する側の片方の身権者が国内で転勤をするような場合というものがあるかと思いますけれども、このケースで、他方の親権者の同意が得られずに、審判を経ていては間に合わないという状況にもしなった場合は、これは急迫の事情があると判断して良いものでしょうか。

法務省民事局長
委員お尋ねのような場合につきましては、例えば同居親の転勤が決まった後の父母間の協議の状況ですとか、別居親が子の転居に同意しない理由などの個別の事情を踏まえて判断されるべき事柄でありますが、例えばこうした事情を踏まえた上で父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては、同居親の転勤時期までに子の居所を変更するかどうかを決定することができず、その結果として子の利益を害する恐れがあるような時は急迫の事情があると認められると考えております。

友納議員
一般の方にとってはなかなか審判を利用するというのはハードルが高いわけですので、なるべく他方の親権者の同意を得ようという作業をするのかなと思います。
その上でうまくいかない場合に審判を提起すると、今東京などの場合は審判申立てから結果が出るまでそれなりの、後ほどそれもお聞きしますけど、時間がかかりますので、辞令交付から転勤に至るまでに間に合わないということが出てきて、例えば、監護を諦めるか仕事を諦めるかみたいな、そういった二択をしなければいけない場合が、もし発生してしまうようであれば大変残念なことですので、お子さんにとっての一番の利益というところが何がお子さんにとって適切かというところが重要ですけれども、そういった面で一番お子さんにとって適切な判断がなされるように判断をしていただければ、というふうに思っています。
これに関連して、急迫の事情の話ではないんですが、近場で引っ越す場合というのもあるかと思います。
職場の近くにちょっと引っ越したいとか、家賃のもう少し低いところに移動したいですとか、さまざまありえるかと思いますけど、この引っ越しも必ず共同行使というわけではなくて、子に対して重大な影響を与えない場合は日常の行為としてできるという理解でよろしいでしょうか

法務省民事局長
ご指摘のとおり、本改正案における監護及び教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生じる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指しております。
委員ご指摘の転居でございますが、その移動距離に関わらず、通常子の生活に重大な影響を与え得るものでありますため、ご指摘のような同一学区内の転居も含めて、基本的には日常の行為には該当しないものと考えております。

友納議員
すみません。もう一回確認ですが、転居をする場合に、日常の行為に該当する場合はないということでしょうか

法務省民事局長
転居ですので、住所の変更をもちろん伴います。
従って、住所の変更をいたしますと、基本的には子の生活に重大な影響を与えるものというふうに考えますので、基本的には日常の行為には該当しないというふうに考えているものでございます。

友納議員
回答はよくわかりましたけれども、例えば学区も変わらず近くに移動する場合もあって、お子さんに重大な影響を与えるかどうかというと、それこそちょっと遠くに移動して学校も変わって、お友達も変わってというと、またそれは違うのかもしれませんけど、ちょっとその範囲でどのくらい子に重大な影響を与えるのかというのは、またちょっと私も検討を考えてみたいと思いますけれども、改めてご検討いただければ、というふうに思います
子の重大な影響の判断もなかなか難しいと思いますので、ある程度実質的な判断が必要になってくる場合もあるのかなと思います。
形式的に転居だからというのではなくて、実質的に子に重大な影響があるかどうかという判断が必要になると思いますので、その辺りガイドラインでしっかりと示して混乱が生じないようにしていただければ、というふうに思っております。
次の質問に移らせていただきます。
次に、改正法824の第2項にございます日常の行為について質問させていただきます。
監護及び教育に関する日常の行為という部分ですけれども、当然のことながら、親権者が居を別にするとしても、被監護者である子どもは1人ですから、必然的に父母のどちらかが日常的な監護をすることになるというふうに考えます。
824の2第2項においては、主体が共同親権者である父母になっています。
親権者であれば、別居親であっても日常の行為については親権の行使を単独でできるという条文であるという理解でよろしいでしょうか。
その上で、具体的にどのような事例を想定しているのかを含めてお答えいただければと思います。

法務省民事局長
日常の行為に係る親権の単独行使を認めることとした趣旨につきまして、法制審議会家族法制部会では、実際に目の前で子の世話をしている親が困ることがないように、日常的な事項については単独でできるようにすべきであることを前提とした議論がされたところでございます。
他方で、本改正案の日常の行為の行為主体を子と同居する親に制限していない趣旨につきましては、法制審議会家族法制部会におきまして、子と別居する親権者につきましても、例えば親子交流の機会のように、実際に子の世話をすることはあり得るところでありまして、そのような場合に別居の親権者が単独で日常の行為に係る親権行使をすることも想定される、といった議論がされたことを踏まえたものでございます。
その上で、本改正案におきましては、父母・相互の協力義務の規定を新設し、親権は子の利益のために行使しなければならないことや、父母が子の人格を尊重しなければならないことを明確化しているところでもありまして、日常の行為に係る親権についても、これらの趣旨に沿って行使されるべきものであると考えております。

友納議員
先日の参議院の本会議で、石川先生がプールの事例をご質問されたかと思います。あと、日常の医療の提供もそうですけれども、混乱が生じないといいなと思うんですが、おそらく双方が子の利益のためと考えて行動しているはずですから、それで意見が対立するような場合に、その両親で話し合っても結論が出ないということがあって、その対応をどうするかというときには、受け手である学校や例えば医療機関である場合は困ってしまうということがあるわけだと思うんです。
本会議での大臣のご答弁は、本改正案では父母の相互の協力義務等を新設し、親権は子の利益のために行使しなければならないとあり、事案によってはこれらの義務に違反するというご回答だったんですけど、義務違反はもちろんわかるんですけれども、それでは現場はどう対応すべきかという問題が残っているのかなと思ったんです。
これは私の不理解かもしれませんけれども、324条の2の3項を見ますと、親権の行使の後のかっこがきで、2項により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。
審判の対象となるものから除いているように読めるんですが、若干、日常行為で意見が対立した場合にどう処理するべきか不明瞭なところもあるのかな、というふうに考えますので、子の利益の観点から若干不安があります。ぜひ、今回法案が成立した後に施行されるまで様々なこういった不安な点を解消していただければと思います。質問はいたしませんのでお願いいたします。
日常の行為とは、日々生活の中で生じる身上監護に関する行為で、これに対して重大な影響を与えないものとのことですが、衆議院でいくつか例が挙げられていましたが、実際の判断というのはなかなか難しいのではないかなと思います。自身が行う行為が日常の行為かどうかという判断ですね。
例えば親権者が自身の行う行為を日常の行為と確信が持てない場合に、どこかに確認する手立てがあればいいなと思うんですけれども、おそらく実際はないんだと思います。例えば私たち弁護士もおそらく聞かれると思うんですね、これから自分がやる行為が日常の行為で大丈夫ですか。
ただそれは多分、これから出るガイドラインとかを見ながら回答していくんだと思いますが、やっぱりガイドラインがあってもグレーな部分というのはありまして、責任を持って答えられるかどうかという不安もあるんですね。
また全く別の制度ですけど、成年後見人とかの制度ですと、何か不安が行為にあるときや成年後見人になっていると家裁に連絡を確認をして、書記官にこれはやっていい行為かということを聞いて回答いただいてからやったりすることもありますけれども、今回、離婚のこの事例にそれができるかどうかというと、いろんな面はあってできないような気がするんですけれども、実際そういう問題が生じ得るかもしれないというところは、しっかりと認識をしていただければ、というふうに考えております。お困りになる方がいないようにですね。
ちょっとこれ質問にするつもりでしたけど、これもお願いで、問題意識をお伝えするというところで。
国として制度を作る以上は起こり得るトラブルを想定しておく必要があると考えるんですが、例えば一方の親権者が日常の行為を実際に超えてしまった行為を単独で行ってしまった場合にどのような責任を負うかというか、自分がどういう責任を負ってしまうかという不安をお感じになって、この制度が変わることで不安にお感じになる方もいらっしゃるのかなと思うんです。
不安に思うと、やることって、萎縮していくと思うんですね。
そうすると、本当に子の利益のための行為ができないという状態が発生するのではないかというちょっと懸念がございます。
もしくは親権を行使していない親権者から、何らかの責任を実際に問われてしまうんじゃないかとか、いろんな不安があると思うんですけれども、このようなトラブルといいますか、不安を解消する、トラブルを回避する方向で今何かお考えになっていることがあれば教えていただければと思います。

法務省民事局長
委員ご指摘のような、その父母の一方が単独で親権行使をした後に、他の一方が事後的にこれと矛盾する行為をすることにつきましては、本改正案において新設している父母相互の協力義務の規定の趣旨ですとか、親権は子の利益のために行使しなければならないこと、父母が子の人格を尊重しなければならないことなどを踏まえて判断されるべきことでございまして、事案によりましては他の一方による親権行使が権利の濫用として許されない場合があり得ると考えているものでございます。
その上で、種々の日常の行為をめぐって父母間の意見が対立するなどし、父母の一方による親権の行使が権利の濫用として許されないような事態に至り、共同して親権を行うことが困難であるというような場合には、必要に応じて親権者変更の申立てをすることもあり得ると考えられるところでございます。

友納議員
ありがとうございます。
親権者変更に至らないでうまくいけばいい、親権の行使が行われればいいな、というふうに思うんですが、まずは日常の行為がどういう行為かということがある程度明確になっていればそういった問題が発生しないということが大前提だと思いますので、しっかりとガイドラインなどを作成しながらそれを周知をしていただければと思います。


後半に続きます。


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