見出し画像

ありがとう、ラオンザファイター


その名はラオンザファイター

ワタシが2022年より韓国競馬を箱推しするようになったのには、間違いなくこの馬の存在がありました。

その名は、ラオンザファイター(라온더파이터/RAON THE FIGHTER)

2023年6月の骨折以来、復帰を目指して治療を続けてきましたが状態は上がらず、このたび2024年4月5日付で種牡馬登録されました。通算19戦15勝2着4回・連対率100%での現役引退です。

Korea Studbookより
https://studbook.kra.co.kr/neweng/html/eng_hr_retrieve.jsp?mabun=0042645
ラオンザファイターの生涯戦績
netkeiba風の色分けです

出会い@2022年コリアカップG3/KG1

彼のことを知ったのは2022年9月4日のコリアカップG3/KG1(ダート1800m)。

韓国の競馬場に芝コースはありませんので、これ以降距離を言う時に「ダート」の文言は省略します。

このレースでは日本から参戦した1番人気セキフウではなく2番人気ウイナーズマン(위너스맨 /WINNER'S MAN)が勝ったのですが(セキフウは3着)、当時のセキフウはJpn2勝ち(兵庫ジュニアグランプリ)ながらもG3はサウジダービーとユニコーンSでそれぞれ2着留まりという、こういう表現をすると申し訳なくも「格的にはやや中途半端」な日本調教馬で、それでは韓国調教馬に勝てないということに大きな衝撃を受けたものです。

そのような中レースを見返していると、セキフウとウイナーズマンの叩き合いというよりはハナを切って4角でもいい手応えで進み、最後まで馬場内側で勝ち負けを演じた2着馬のほうに目が向きました。「なんや、この2着馬も強いやないか!?」と。そう、その2着馬がラオンザファイターでした。

当時のラオンザファイターは1200mと1600mのKG3競走をそれぞれ勝っており、当日も3番人気でしたので韓国勢としては副将格だったのですが、それまでに走ってきたのは1200~1400mが中心。「こんな短距離馬でもコリアカップで2着に来れるのか… いやそれにしては強いぞ」と、その時からラオンザファイターに対する興味が湧きはじめました。

競馬場・距離別の生涯戦績
確かに短距離寄りですが全距離で満遍なく実績を残しているのがスゴい

すっかり虜に@2022年KRAカップクラシックKG2

それからひと月が過ぎ、2022年10月16日にソウルで行われたのはKRAカップクラシックKG2。今度はコリアカップよりもさらに距離が伸びた2000mでしたが、堂々の1番人気(単勝1.6倍)に推されたのはラオンザファイター。ウイナーズマン不在も中距離の実力馬が揃う中で2着に5馬身差で逃げ切り、その距離不問の強さにワタシはすっかり虜になりました。「これはもう、韓国のヤマニンゼファーやん!」と。

ちなみにこのつぶやきの2日後にウマ娘のヤマニンゼファー実装が発表されました。(どうでもいい)

幻の現地観戦(勇み足)@2022年大統領杯KG1

そしてさらにひと月が過ぎた2022年11月13日、ソウルで開催されたのは大統領杯KG1(2000m)。

このレースではウイナーズマンとラオンザファイターの再対決が観られるだろうと思いKRAカップクラシックの直後に速攻で飛行機とホテルを押さえて現地観戦したのですが、ラオンザファイターは持ち込み馬につき内国産馬限定の大統領杯には出走できないことを知ったのはその2週前…

持ち込み馬は基本内国産馬扱いであるものの、2022年当時は内国産限定グレード競走への出走が不可でした。2024年現在、種牡馬交配料が2万米ドル以上であれば同競走への出走が可能で(それ未満であれば内国産限定リステッド競走には出走可)、2028年より持ち込み馬は完全に内国産扱いになる予定です。

これにはややガッカリしながら、しかし19年ぶりにソウル競馬場での現場観戦ということでやっぱウキウキで渡韓・大統領杯に臨み、ウイナーズマンの思わぬ3着敗退により馬単5頭20点ボックス買いだったワタシは万馬券ゲット(215.3倍)ということでオイシイ思いをしたりと、これは直接ラオンザファイターには関係しないことですがこれも同馬が作ってくれた良き思い出です。(ちなみにその時の旅行記は下記リンクより)

持ち込み馬に対する出走制限もあってKRAカップクラシック/大統領杯という異なるステップを踏んだラオンザファイター・ウイナーズマン両馬が激突したのは2022年12月11日にソウルで開催されたグランプリKG1。距離はさらに伸びて2300mです。

「さすがに2300mはキツいんじゃないか?」

と思いましたがそれは杞憂に終わりました。両馬はスタート後から終始1,2番手を進み早くもマッチレース。最後の直線でウイナーズマンが差し切って優勝しコリアカップの再現となりましたが、負けて強しだったのがラオンザファイター。これはもうヤマニンゼファーというかキングヘイロー並みの距離不問さでしょう。ますますラオンザファイターのことが好きになりました。

いつかはラオンザファイターの走る姿を生で観てみたい。そう思いながら時は過ぎ・・・

やっぱスプリント戦@2023年釜山日報杯KG3

その間、ラオンザファイターは2023年2月19日のクラス1一般戦1800mを10馬身差で勝利し、まだKG1勝利は無いもののワタシの中ではこの馬が韓国最強だと確信した折、その次走はなんと4月2日に釜山慶南で開催された釜山日報杯KG3。距離1200mのスプリント戦です。まぁでも”本職”に戻っただけですね。

案の定ラオンザファイターは2着に5馬身差を付けて余裕の勝利。ちなみにこの時の2着馬はその後2023年9月10日のコリアスプリントG3/KG1でリメイクの4馬身差2着に入ったポルマウィスター(벌마의스타/BEOLMAUI STAR)です。この勢いはもう止まりません。

今度こそ現地観戦@2023年SBSスポーツスプリントKG3

次走は恐らく2023年5月14日のSBSスポーツスプリントKG3(1200m)ではないかと思い、また、その日は古馬牝馬最高峰戦のトゥクソム杯KG2が同日開催されるということでワタシは再び飛行機とホテルを確保。

すると読みは当たりました。ラオンザファイターのSBSスポーツスプリント出走です。相手筆頭は前年のコリアスプリント勝者オマオマ(어마어마/EOMA EOMA)。ポルマウィスターもいますし、これは最高のレースを現地で観戦できそうです。

と言いますか、最高の現地観戦でした!(詳細は下記リンクより)

レースはポルマウィスターにハナを奪われてしまいましたが落ち着いて追走し、最後は内から迫り来るオマオマを寄せ付けず横綱相撲での勝利。しかも勝ち時計がコースレコード1分10秒4(含水率7%:稍重寄りの良)まで0.2秒差に迫る1分10秒6の好時計(含水率5%:良)と、ラオンザファイターの勢いは全く止まりません。

これはもう、日本にぜひ来てほしい!距離不問につき根岸SでもフェブラリーSでも東海Sでもチャンピオンズカップでも何でもいい!とにかく日本に来てその強さを見せてくれ!

ウイニングラン中のラオンザファイター
(2023年SBSスポーツスプリントにて)
SBSスポーツスプリントの表彰式にて
パシファイアーが闘士感を出してカッコいい!

実際、X/Twitterで韓国の競馬ファンの方から「オーナーは来年の海外遠征を考えている」との情報もありました。これはもう来年こそ日本でラオンザファイターの姿を見ることができるのではないかと期待度MAXです。

ウイナーズマンと中距離再対決・・・のはずが@2023年釜山広域市長杯KG2

そのような中、ラオンザファイターの次走は春のスプリント三冠を目指して6月18日のソウル馬主協会長杯KG3(1200m、2024年よりKG2昇格)になるかと思われたのですが、陣営が選択したのはなんと7月2日の釜山広域市長杯KG2(1800m)。同競走は上半期(春夏シーズン)の中距離戦線を締めくくる最大のレースで、コリアカップ優先出走権を賭けたレースでもあります。

これには前年の年度代表馬にも輝いたウイナーズマンはもちろんのこと、そのウイナーズマンを5月21日のYTN杯G3(2000m)で11馬身差の2着に退けて圧勝したトゥホヌイバンソク(투혼의반석/TUHONUI BANSEOK)も参戦と、もう2週前登録の時点からドキドキワクワクで早く当日が来ないかと待ち遠しい日々が続きました。

・・・しかし好事魔多し。

2023年6月29日、釜山広域市長杯の枠順が決まった直後にラオンザファイターの骨折(右前内側近位種子骨基底部骨折)が発表されてしまいました・・・

釜山広域市長杯は直線残り400mでトゥホヌイバンソクを突き放して先頭に立ちこのまま押し切るかと思われたウイナーズマンを、トゥホヌイバンソクが残り100mで差し返して優勝するという熱いレースでしたが、ラオンザファイターのいないこのレースをどこか冷めた眼でと言いますか、大きな寂しさに包まれながらネットで観戦したことを今でもよく覚えています。

キミはいないけど・・・@2023年コリアカップ・コリアスプリント

釜山広域市長杯の直後にはウイナーズマンにも骨折が判明してしまいましたが軽度ということで彼はそこから急ピッチで立て直され、なんと2か月後のコリアカップ(2023年9月10日)に出走(ワタシはもちろん現地観戦)。

日本から参戦のクラウンプライドが2着グロリアムンディに10馬身差の圧勝をみせた中、ウイナーズマンは3着に入って”韓国総大将”の矜持を保ったという熱いレースでしたが、その一つ前のレース・コリアスプリントではポルマウィスターがリメイクの2着に入るという快挙で、ラオンザファイターのライバルたちは見事な活躍をみせました。

あぁ、ここにラオンザファイターがいたならば・・・もし無事だったらコリアカップ/コリアスプリントのどちらに出走したんだろう?いずれに出たとしても勝ち負けにはなっていたんじゃないか・・・?と、もう叶わぬ願いや想像を今でも行ってしまう自分がいます。

復帰・復活をめざすも・・・

ラオンザファイターの骨折には関節鏡手術が行われましたが決して軽度という訳ではなく、長い治療期間に入りました。その手術の模様がKRA公式より動画配信されていますので、下記の通りご紹介します(英語字幕付き)。

KRA公式サイトでは各馬の治療状況や調教状況がデイリーで更新されていますので毎日のように同サイトをチェックし、「もしかしたら乗り運動ぐらい始めているかも」と淡い期待を抱いたりもしたのですが、あいにく出てくる情報は病院での治療状況ばかり。2023年11月頃のX/Twitter情報によれば「2024年4~5月頃に現役続行か種牡馬入りかを判断する予定」ともあり、「これはもうムリかな・・・もうこうなったら無事に種牡馬入りしてほしい」とも思い始めました。

そして、ついに2024年4月5日に発表されたのが種牡馬入りのニュース。

あぁ、やはりそうか。もう一度ウイナーズマンや日本調教馬たちと戦う姿を見てみたかった・・・いやでも、無事に種牡馬入りできたのは何より。本当にお疲れさまでした、ラオンザファイター!

夢はこれからも続く

彼は生まれ故郷の済州・ラオン牧場に戻って種牡馬生活をスタートしましたが、種牡馬入りが決まってからほどなくしてKRA公式より一つの動画がアップされました。「ラオンザファイター、種牡馬になる」です(韓国語音声)。

あまり正確な翻訳ではありませんが「字幕」→「韓国語(自動生成)」を選んでからもう一度「字幕」→「自動翻訳」を選ぶと日本語字幕が選択できます。

この動画によるとラオンザファイターは今春10頭の繁殖牝馬に無料で試験交配するということですが、ラオン牧場稼ぎ頭の種牡馬MUSKET MAN(ウイナーズマンの父です)がもう18歳になるので、その後継者(血統的ではなく経済的に)として期待されているようです。ワタシも大いに期待です。


ウイナーズマンやオマオマといったコリアカップ/コリアスプリント優勝馬と互角以上に戦い、2着馬に対してつけた着差は15勝の中で合計101馬身(平均6.7馬身)と、距離関係無しにその快速ぶりをみせたラオンザファイター。残念ながらKG1制覇は叶わなかったですが、その夢は産駒たちへ託すことにします。

早ければ2027年にデビューするラオンザファイター産駒。今からとても楽しみですし、それをモチベーションとしてワタシはこれからも韓国競馬を箱推ししていきます。

ありがとう、ラオンザファイター!

ラオンザファイター号
(라온더파이터/RAON THE FIGHTER)

父 BAYERN 母 클라린다/CLARINDA(母父 EMPIRE MAKER)
2018年4月21日生 ラオン牧場(済州)生産 牡6歳
競走馬登録 2020年7月3日~2024年4月3日
生涯戦績 19戦15勝(15-4-0-0)
獲得賞金 22億9,715万ウォン

<主要競走成績>
KRAカップクラシック KG2 (2022) 優勝
ソウル馬主協会長杯 KG3 (2021) 優勝
オーナーズカップ KG3 (2022) 優勝
釜山日報杯 KG3 (2023) 優勝
SBSスポーツスプリント KG3 (2023) 優勝
コリアカップ G3/KG1 (2022) 2着
グランプリ KG1 (2022) 2着



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?