敦賀開業後の北陸新幹線に乗ってみた

北陸新幹線が敦賀まで延伸開業したが、開業当初は初乗りの乗客が多くて混雑するだろうと思い、ほとぼりが冷めるまで待っていたが、このたびやっと乗ることができた。福井で用があったので、東京から福井までかがやきに乗り、その後福井から新大阪までつるぎとサンダーバードとを乗り継いた。

東京から福井まではえきねっとで新幹線eチケットで予約し、チケットレスで乗車した。福井から先はe5489で予約し、紙の切符を発券した。北陸新幹線とサンダーバードとの乗り継ぎだけなら「北陸乗継チケットレス」も利用可能で、ICカードを登録することで新幹線eチケットと同じ要領で利用できるのだが、新大阪以遠でも乗るので北陸乗継チケットレスを利用できず、紙の切符にした。

まず東京から福井までのかがやきだが、大宮出発時点でほぼ満席だった。長野で若干の乗客の入れ替わりがあり、富山でも乗降あり。サンダーバードやしらさぎに接続していない列車の割に乗車がある。北陸内の利用もそこそこあるのだろうか。富山敦賀間は東京発着のかがやき・はくたかとサンダーバード・しらさぎに接続するつるぎとがそれぞれ1時間に1本の割合、両方合わせると30分間隔なので、北陸内の移動は便利である。金沢で乗客の7割ほどが下車した。そこから先は空いていた。さすがに東京から金沢以遠への利用はさほど多くないので、午前のかがやき号の半数が金沢折り返しで敦賀行が1時間に1本というのは妥当に見える。これくらい空いていればしらさぎを東京発着のかがやき・はくたかと接続させてもよさそうに見えるが、敢えて東京方面と関西・名古屋方面とで系統を分けているのは関東でのダイヤの乱れが関西方面に影響しないようにするためだろうか。

金沢から先はほぼ地平区間なのだが、どういうわけか防音壁が窓の高さよりも高く、意外と眺めが良くない。整備新幹線は260km/hしか出さないのにそこまで高い防音壁を設置しないと環境基準をクリアできないのだろうか。福井駅の手前の九頭竜川の鉄橋は新幹線では初めての道路併用橋だが、新幹線の線路が道路よりも高い所にあるため、普通に乗る分には道路併用橋であることを意識しない。

福井まで3時間強かかったが、それでも東京から乗換なしで行けるようになったのだから便利になったものである。北陸新幹線開業前は金沢まで4時間かかっていたが、今や福井まで3時間なのだから、所要時間はかなり短くなった。福井駅は高架になり新幹線の駅もできて、すっかり他とよく似た新幹線の駅になっていた。高架化に併せて駅前が再開発されたのできれいである。

従来は東京から福井へは米原でひかりとしらさぎとを乗り継ぐのが定番だったが、こちらのルートは米原と敦賀で2回乗り換えが必要になってしまった。かといって別に安いわけではないし、列車本数が多いわけでもないので、東京福井間の輸送需要はほぼ北陸新幹線に転移したのではないだろうか。たしかに金沢から先のかがやきの乗客は少ないが、それでも12両編成の3割くらいの乗客が東京から福井県内各駅に行くとしたら、新幹線車両で4両分、在来線車両に換算すれば6両分なので、6両編成のしらさぎの乗客のかなりの割合が北陸新幹線に転移したことになる。

JR東海の在来線特急のうちしらさぎだけ乗客が激減したようだがさもありなん。名古屋から北陸方面へは高速バスでもそこそこ速いし乗り換え不要だし、新幹線よりもはるかに安い。そもそも名古屋から福井くらいまでなら車でも気軽に行ける距離である。名古屋から金沢や富山までなら今でも敦賀経由で新幹線に乗る方が速いが、この区間はそもそも東海北陸道経由の高速バスが優位である。

次はつるぎとサンダーバードとの乗り継ぎである。指定席券売機で発券したところ、乗車券、新幹線と在来線通しの特急券、新幹線の指定券、在来線の指定券の4枚が出てきた。通しの特急券は通称幹特在特と呼ばれるもので自由席指定席同額で指定席に誘導するものとなっている。

新幹線のスピードは圧倒的でたった17分で敦賀に到着した。福井駅は1面2線のシンプルな駅だが越前たけふは真ん中に通過線のある2面4線だった。現状では待避は不要だが将来の新大阪延伸を念頭に置いたものだろうか。

敦賀駅は新幹線在来線ともに2面4線の立派な駅で、いずれも全乗客が乗り換える前提で設備に余裕を持たせているが、大きな荷物を持っている乗客はエスカレーターに集中するので、結局エスカレーターがボトルネックになる。それでもたまたま混雑していない時間帯だったので余裕を持って乗り換えることができた。まだ開業からほどないため、構内のいたるところに警備員が立って旅客を誘導していた。

しらさぎと接続していなかったので、しらさぎの乗車率はわからなかった。新幹線在来線ともに乗車ホームと降車ホームとを完全に分離できればエスカレーターを1方向のみにしてエスカレーターの輸送力を倍増させることができるが、閑散時だったためか乗降ホームが分離されていなかった。

在来線ホームはサンダーバードとしらさぎしか走らないのに4線も必要だろうかと思っていたが、しらさぎの車両の折り返し時間が長く、4線中3線使われていた。停車中のしらさぎの車両は681系だった。北陸新幹線敦賀開業で特急車が余剰になったので、てっきり681系は運用離脱したのかと思っていたが、まだ681系が必要なのだろうか。

サンダーバードの乗車率は低かったが、関西北陸間は他に選択肢がないので、単に乗客の少ない時間帯だったのかもしれない。窓際席が概ね埋まるくらいで、乗客にとってはこれくらいが快適である。

サンダーバードは在来線特急としてはかなりの俊足だし同じく湖西線も在来線としては高規格だが、新幹線から乗り換えると体感速度が下がり乗り心地も悪くなった。湖西線といえども所詮在来線である。これなら乗り換えが伴っても新幹線に乗れる区間は新幹線に乗った方が快適である。京都から福井くらいまでなら在来線でも所要時間がほぼ変わらないので在来線で十分かなと思えるが、金沢や富山まで行くなら、敦賀で乗り換えてでも新幹線の方がよい。一旦新幹線を経験してしまったらもう在来線には戻れない。関西と北陸に人が新幹線のスピードと乗り心地の良さを体感すれば北陸新幹線の新大阪延伸に弾みがつくのではないだろうか。

かつて湖西線では160km/hの試験を行ったことがあるし、683系も160km/h運転できる動力性能を持っている。サンダーバードは130km/hまでしか出さないので160km/h運転用のブレーキ装備が省略されているが、北越急行用の8000番台は160km/h運転していた。それならば新幹線が敦賀から京都まで延伸されるまでの間160km/h運転をすればよいのではないかと思いきや、130km/h運転でこの乗り心地なら、160km/h運転するためには相当な軌道強化が必要で、しかも湖西線にはスラブ軌道もあるので、それこそスラブ軌道の全交換が必要になってくる。となると費用対効果の面で断念したのもわからないでもない。

些末なことだが、E7系W7系には全席に電源があるが、683系には電源が無い。車両設計時期の違いによるものだが、これで大阪から金沢まで長時間乗り通すのはいまどき厳しいのではないだろうか。

サンダーバードは京都でかなりの下車があった。京都市は北陸新幹線に反対しているようだが、旅客流動を考慮すれば北陸新幹線は当然京都を経由すべきで、北陸新幹線の京都乗り入れを認めないということは即ち敦賀乗り換えを恒久化することを意味する。仮に京都駅に乗り入れないとしても、京都市内で交通の便の良い場所に新幹線の駅が必要だろう。

敦賀から新大阪まで1時間20分なので距離も時間も大したことないが、それにも関わらず敦賀から先のサンダーバードは体感時間が長かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?