伊丹空港を利用してみたら意外と便利だったが本当にこれでよいのだろうか

東京大阪間といえば新幹線のシェアが9割飛行機のシェアが1割である。今ではのぞみが1時間に10本出ていてほぼ待たずに乗れるし、スマホでエクスプレス予約をポチればあとは改札を通って乗るだけである。当日購入でもさほど高くないので、出張帰りに駅に着く頃に帰りの列車を決めてスマホでポチればよい。新大阪駅で地下鉄に乗り換えれば梅田淀屋橋本町難波といった大阪の都心まで1本である。飛行機は速いが羽田空港も伊丹空港も都心から少し離れているので東京の都心と大阪の都心の間の所要時間は新幹線とさほど変わらない。

関西空港はエリアが違うので新大阪駅と競合しないとしても、伊丹空港まで飛行機に乗る理由が今までよくわからなかった。しかし実際に利用してみたらとても便利だった。

1.荷物が多いときには電車ー新幹線ー電車よりもリムジンバスー飛行機ーリムジンバスの方が楽

電車移動だと大きな荷物をずっと持っていなければならないが、リムジンバスなら床下の荷物室に荷物を預けることができるし、飛行機でも荷物を預けることができる。荷物を預けると荷物が出てくるまで少し待つ必要があるが、待つといってもせいぜい5分10分くらいだし、機内後方席からは降機まで時間がかかるので、荷物が出てくるのを待つのにかかる追加的な時間はほぼない。荷物を預けずに機内に持ち込むにしても、電車の荷物棚よりも飛行機の荷物棚の方がはるかに大きい。

2.伊丹空港へのアクセスは意外と便利

大阪市内の各ターミナルから平均20分間隔でリムジンバスが出ている。所要時間は30分程度と手頃である。バスは鉄道よりも輸送力が小さいが、それ故に便数が多い。大阪の都心はコンパクトなので、難波や天王寺からでも阪神高速に乗ってしまえば早い。体感的には都内各所から羽田に行くよりも近い。

3.羽田からのリムジンバスも充実している

今や羽田は首都圏屈指のバスターミナルで首都圏各地への高速バスが出ている。方面によって頻度に差があるが、大きな荷物を持って目的地近くまで直接行けるのは便利である。東京駅周辺が目的地なら新幹線の方が便利だが、それ以外の所に行くとなるとJRや地下鉄を乗り継ぐ必要があるし、郊外まで移動すると時間もかかる。都心から離れた所に行くなら羽田からバスの方が早くて楽である。

4.飛行機に乗り継ぐなら最初から飛行機に乗る方が楽

大阪から羽田発の国際線国内線に乗るならわざわざ新幹線で品川駅に出るまでもなく伊丹から羽田まで飛行機に乗る方が圧倒的に楽だし、追加的な運賃もさほどかからない。関空発着の国際線があるならそちらに乗る方が楽だし、関空の国際線は順調に伸びているものの、アジア便が大半で北米や欧州に行くとなると羽田か成田に出るしかない。

伊丹で飛行機を乗り継ぐ機会はさほどないが、羽田から但馬に行く場合には伊丹乗り継ぎとなる。隠岐へは伊丹乗り継ぎと出雲乗り継ぎとがあり、時間帯によっては伊丹乗り継ぎの方が有利である。種子島や屋久島に行く場合には便数の多い鹿児島乗り継ぎが主流だが伊丹で乗り継ぐこともできる。

同一航空会社グループ同士の乗り継ぎなら荷物を通しで預けることができるので、身軽に移動できる。

というわけで利用者の立場からは一定の需要が根強く残ることを実感した。東海道新幹線が圧倒的な輸送力を持つ中で新幹線の9分の1の乗客数というのは絶対数としてはかなり大きい。

一方、騒音問題が発生している空港が存続してもよいのだろうかという素朴な疑問もある。騒音対策として運用時間や便数を制限していたり、3000mの滑走路の南端を使わない運用にしていたりなどと一定の配慮をしているし、飛行機の発する騒音が下がったこともあり、周辺自治体もかつてほど強硬に廃港を求めているわけではなく、むしろ存続を求めている。伊丹が存続すると関空の競争力が落ちて財務が悪化する点については、伊丹と関空とを同一主体が運営することで、事実上伊丹の黒字で関空を内部補助する仕組みになった。関西三空港問題もいつのまにかだいぶ進展しているようである。

伊丹では3発機以上の大型機の定期便での発着を禁止したが、いまどき大型機でも双発機の時代なので有名無実化しており、747よりも全長の長い777-300が平気で発着している。それだけの需要があるのだから仕方ない。伊丹空港にはジェット機枠と低騒音機枠(プロペラ機とリージョナルジェット)があるが、貴重なジェット機枠には羽田線のような高収益路線を重点的にあてがい、低需要路線ではリージョナルジェットやDHC-8-400のようなジェット機並のスピードのプロペラ機を飛ばして対処している。A320や737-800まで低騒音機に該当するし、大阪発地方路線はさほど需要がないので、伊丹線は大型機、それ以外の地方路線は低騒音機という棲み分けができているようである。ジェット機の発着枠を減らしても大型機による羽田線が残るだけになりそうである。

関空は遠くて不便なので国内線の関空への移転がなかなか進まず、結果的に便数が少なくて不便な関空よりも便数が多くて便利な伊丹が好まれる。その結果、関空発着の国内線で残っているのは一定の需要が見込める羽田線と、無理やり伊丹から移転させられた北海道沖縄路線だけになってしまった。関空は事実上の国際線専用空港となってしまっている。梅田から関空まではリムジンバスで1時間以上かかる。将来なにわ筋線が開通して梅田から関空まで電車で40分で行けるようになれば空港までの所要時間は伊丹と遜色なくなるが、関空まで電車に乗ってから羽田に行くくらいなら新大阪から新幹線に乗る方がまだましだろう。

他の都市ではどうかというと、より市街地に近い福岡空港は郊外への移転で不便になることが好まれず、現在の立地のまま滑走路がもう1本増設されることになった。名古屋では中部空港と小牧とが併存しているが、もともと小牧空港へのアクセスが不便なこともあり、また、常滑沖は名古屋からさほど遠くないこともあり、中部空港への移転が成功した。札幌の丘珠空港は滑走路が1500mしかないので、ジェット機に乗るなら千歳にいくしか選択肢がなく、誰もが遠方の千歳空港を利用している。伊丹の場合、なまじアクセスが便利で滑走路も長いので存続してしまっている。

結果論でしかなくいまさらどうにもならないが、新大阪空港が舞洲咲洲辺りにあれば伊丹からの完全移転も可能だったのではないか。騒音問題がなく24時間発着できるし、大阪の都心からのアクセスも良好だし、阪神高速湾岸線直結で神戸方面泉州方面はのアクセスも良好である。沖合展開後の羽田と同じくらい便利な立地なので伊丹を残す必要がなかった。万博やカジノなんかよりもはるかに有益な施設になっていたことだろう。

今できることは、伊丹空港の騒音対策費用をジェット機の旅客運賃に転嫁し、騒音対策費用を負担してでも伊丹空港を利用したい旅客に相応の負担をしてもらうことくらいだろう。+1000円くらいまでなら出せるのではないか。

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