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中秋の名月と暦についてのあれこれ

ちょっと早いですが、今年 (2022年) の中秋の名月は9月10日だそうです。
「中秋の名月」とは旧暦の8月15日の夜に見える月のことを指します。

暦といえば、現在私たちが使っているグレゴリオ暦は太陽の動きをもとにしている「太陽暦」です。明治5年11月、政府より太陰太陽暦 (天保歴) から太陽暦に切替える旨の太政官布告が発せられて、同年12月2日(天保暦の日付)の翌日をグレゴリオ暦に基づき明治6年(1873年)1月1日としました。

太陰暦 (陰暦) は月の満ち欠けの周期を基にした暦です。太陰太陽暦とは太陰暦を基としますが、太陽の動きも参考にして閏月を入れ、月日を定める暦のことです。

古来、日本では中国から輸入された暦が使われてきましたが、江戸時代に渋川春海らが日本独自の太陰太陽暦である貞享暦をつくって以来、貞享暦(貞享2年(1685) - 宝暦4年(1755))、宝暦暦(宝暦5年(1755) - 寛政10年(1798))、寛政暦(寛政10年(1798) - 天保14年(1844))、天保暦(天保15年〈弘化元年〉(1844) - 明治5年(1872))と日本独自の太陰太陽暦が使われてきました。一般に旧暦と言えば天保歴を指します。

渋川春海といえば、冲方丁さんの小説「天地明察」で有名になりました。私もこの小説で渋川春海 (安井算哲) の名前を知りました。岡田准一さん主演の映画で2012年に映画化されています。ストイックに暦を探求する姿、感動しました。

旧暦 (太陰太陽暦) は月が新月になる日を月の始まりと考え、各月の1日とします。ただし、新月から次の新月までは平均して約29.5日の間隔ですので、12ヶ月間では約354日であり、太陽暦の1年より約11日短いため、だんだんと季節とずれていってしまいます。そこで太陰太陽暦では、暦と季節のずれが大きくなってきて、ひと月分に近くなると閏(うるう)月というものを入れてずれを修正しました。

詳しくは下記の国立天文台歴計算室のホームページ、暦Wiki の「太陰太陽暦 (Lunisolar calendar)」をご覧ください。

現在日本では「公式な」太陰太陽暦の計算というものは行われていません。なので、「今日は旧暦の何日か」といわれると、天体の運動や時刻の取り方などは現在の暦を流用して、日付の数え方や閏月の置き方は天保暦を模倣して決めているので、「天保歴のようなもの」と言えるようです。

[海上保安庁 海洋情報部ホームページ、天文と暦のQ&A「旧暦のあれこれ」より]

イスラム教で使われているイスラム暦 (ヒジュラ暦) は太陰暦で、太陽暦とのずれを補正しません。だから、ラマダン (断食を行う月)も、毎年約11日、前に移動してきてだんだんラマダンの季節が変わってきます。ここ南国でも毎年ラマダンの始まる日がずれてきています。

春に始まったラマダンも、年を追うごとに前にずれて、冬に始まるようになり、やがて、秋に始まるようになり、夏を経て、また春始まりに戻ってきます。1年で約11日ずれますから、一周するのに約33年かかります。私が初めてここ南国にきて、ラマダン月を経験したのが34年前の春でしたので、ラマダン月も季節を巡って一周してしまいました。感慨深いものがあります。

話が大きくずれてしまいましたが、今年の中秋の名月は満月だそうです。中秋の名月と言えば満月なのかなと思いますが、満月ではない年もあります。

「中秋の名月」はあくまでも旧暦の8月15日の夜に見える月のことですので、太陽、地球、月の位置で決まる満月とはずれることがあるということです。また、月の公転軌道は楕円形で、新月から満月までにかかる日数が13.9日から15.6日と大きく変化しています。

詳しくは記の国立天文台歴計算室のホームページ、暦Wiki の「名月必ずしも満月ならず」をご覧ください。

月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月 (よみびと知らず)

今年も良い月が楽しめるといいですね。


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