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高等教育の学費のこと

大学などの高等教育においては、学業や研究に適応できる学生を「入学時に選抜する」という発想ではなく、「産み育てていく」という発想が重要なのではないかと思っています。

本当に高等教育のレベルについていけるのか、学業・研究に向き合っていけるのか。それは高等教育を受けてみて初めてわかる側面もあると思います。入学時の入試で測れる能力を重視して選抜を行い、入学してしまえば卒業まではある程度エスカレーターのように進んでいけるシステムで良いのか、門戸を広げて学生を受け入れ、真剣に取り組めない学生や学業・研究についていけない学生、学業や研究に興味が持てない学生をスクリーニングしていくのも一つの方法だと思います。

大学などの高等教育機関で一生懸命勉強や研究を行う学生は、間違いなくその教育機関のレベルの向上に貢献することになると思います。そして、社会に出た学生は、民間会社に勤めるにしろ、公務員などとして働くにしろ、その分野で私たちの生活をよりよくしていく潜在的なポテンシャルを持っていることでしょう。

国の学問や研究のレベルの健全な向上には、それをけん引していくような人材を、公費を投入してすそ野を広げて、幅広く集め育てていくところから始まるのではないでしょうか。本人や家庭の財政状況という、本来、本人の学業や研究に対する興味や能力とは無関係なところでスクリーニングされるのは、学生の機会を奪うだけではなく、国にとっても大きな損失になるのではないでしょうか。

東京大学が授業料の値上げを検討しているということがニュースになっています。授業料の値上げは2019年以降その他の国立大学においても行われてきたようです。

[NHK NEWS WEB 2024年5月17日 20時38分]

私は授業料など学費の値上げがもたらす、日本の教育・研究レベルに与える影響について懸念しています。

特に公立の大学をはじめとする高等教育機関に入学できるかどうかが、入学を希望する人やその家庭の財政状態で大きく制限されてしまうのだとしたら、先に述べたように、国の教育・研究レベルの豊かな発展を考えると、好ましくない状態だと思います。

学費が高く、学費を稼ぐためにアルバイトをしなければならない状況は、仮に入学後の学業や研究レベルでスクリーニングするとしても、勉学・研究だけに専念できる人との差が出来てしまうなど、平等ではなくなる可能性もあります。

高等教育の学費は受益者負担の原則によるという考え方もあるかもしれませんが、そもそも公共性の高い国立や公立の高等教育機関の学問や研究レベルの向上や発展は、多くの人に利益をもたらす可能性があります。

学費を上げることによっておこるスクリーニングの効果は、本来高等教育を受けるべき人の機会を不合理に奪う可能性があることから、大学などの高等教育機関の学費値上げには私は反対です。

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