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メモリースポーツで活躍できる人ってどんな人?

僕はメモリースポーツという記憶力を競う競技の選手です。過去に世界ランク1位だったこともあります。
こう言うとたいてい「元々良かった記憶力で戦っているんだよね」と思われます。

違います。
メモリースポーツに元の記憶力は関係無いと思っています。
そもそも「記憶力」は一意に定めることはできません。忘れ物をしにくい人、一夜漬けが得意な人、何年も前の会話を覚えている人、どれも「記憶力が良い人」と形容されますね。
メモリースポーツはどれも関係ありません、多分。少しは関係しているけど、本筋では無いです。

ではメモリースポーツで活躍できる人はどんな人なのか?というのを考えてみたいと思います。

結論から言うと、よく分かりません。サンプル数が少なすぎて、活躍している人の共通項がまだ分からないのです。
だからこそ全員にチャンスがあるし、まだ見ぬ才能が埋もれまくっていると思うので、1回全員にやってほしいと思っています。
ただそんな中でも、こういう人は向いているなというのも何となくあるのでまとめていきます。


メモリースポーツで活躍するのに必要な能力を「ポータブルスキル」と「テクニカルスキル」の2つに分けて考えていきます。

ポータブルスキルとは、専門性とは切り離されたスキルです。Aという業務/競技でも使えるし、全く別のBという業務/競技でも使える能力です。
例えば、仕事をするにあたって必要なコミュニケーションスキルなどは、どの職種や業種でも使いますね。これは持ち運び可能なスキルです。

対してテクニカルスキルとは、その職種において必要となる専門的なスキルです。Aという業務/競技に特化した能力です。経理なら会計の知識、海外との仕事なら語学力などですね。

よくビジネスの文脈で使われる考え方ですが、メモリースポーツにおいてもこれら2つの視点から考えていきます。

メモリースポーツに必要なポータブルスキル

●高い目標達成能力
これが最も重要なスキルだと思います。
目標達成能力が高いとどんな競技でも高いレベルまで達することができます。

自分で目標を定め、それに向かって努力を継続し、達成する能力。そりゃ持っているに越したことは無いですね。

よく「部活を最後まで続けた人は受験もうまくいく」と言われますが、それはこのポータブルスキルを磨いているからだと思います。
少し早く部活をやめて、その分勉強にあてればもちろん総勉強時間は長くなりますが、それよりも部活に打ち込んだ中で「目標を自分で設定して、日々PDCAサイクルを回しながら自分を律して努力を続ける」という力を得た方がそのまま受験にも当てはめることができて成功率は上がる、という話です。部活という別の競技で得たポータブルスキルが受験にも適用できたということですね。

メモリースポーツも競技なのでそれと同じです。スポーツでも受験でもどこでこのポータブルスキルを得ていても良いのですが、元々この能力がある人は伸びが段違いに速いです。

「高い目標達成能力」をもう少し細かく見てみましょう。
・取り巻く環境を俯瞰して適切なゴールを設定する力
・そのゴールをブレイクダウンして目標を設定できる力
・目標と自分の現在地のギャップを客観的に測れる力
・そのギャップを埋めるために必要なタスクを洗い出す力
・タスクに向かって努力を継続できる力
・自分でモチベーションを管理できる力

メモリースポーツにあてはめると、
・3か月後の日本大会でベスト4に行きたいな。
・そのためには数字で40秒80桁、カードでは45秒52枚を出せる力が必要だ。
・今の自分は数字は自己ベストで55秒80桁、カードは45秒が出る時もあるけど安定していない。
・1か月後には数字は1回でも40秒以内に覚えている状態に持って行きたい。
・変換に60秒かかっているからそれを縮める必要がある。毎日変換練習を200桁やろう。
・飽きないようにExcelで変換シートと記録シートを作ろう。
・毎日やる。
という感じですね。あくまでも一例です。

これができる人はメモリースポーツですぐ強くなるし、どんな競技でも上達が速いと思います。
特にメモリースポーツにおいてはコーチもほぼいないですし、自分で頭を使って戦略を考えるしかありません。このスキルが無いと上に行くことは不可能でしょう。考えるのも自分、やるのも自分です。

僕はこのポータブルスキルをメモリースポーツを始める前から人生の中で意識していました。中学の時に(僕自身は全く強くはないものの)卓球部に所属していて、顧問やコーチが基本いない環境だったので、先輩や同期と相談しながらこの目標達成能力を磨いていきました。
それをクイズでも応用し、「これってどの競技にも使える考え方なんだな」と理解して、大学受験やメモリースポーツにも使えているという状態です。

周りのトップ選手も「高い目標達成能力」を持っていると思います。例えばYas選手は特にこのポータブルスキルが全体的に高くて要領が良いし、koba選手はその中でも突出して「努力をする力」が高いと思っています。ストイックってやつですね。マッスルメモリーコバを見れば分かる。

多分2人ともメモリースポーツを始める前から持っていた能力とは思いますが、メモリースポーツをやる中でこのポータブルスキルを身に着けることも可能です。

●粘り強さ、スコアへのハングリー精神
全ては「高い目標達成能力」に集約できるのですが、分けるとすればこのハングリー精神もメモリースポーツで活躍するのに重要なポータブルスキルです。

最後まであがく力、苦しくても諦めない力、1点でも多く1秒でも速くスコアを追求する力です。

例えば全10問・制限時間5分の漢字テストを解いていて、10問あるうちの9問はすぐに答えられて残り3分になったとします。それを諦めてすぐ答えを見てしまうのか、時間ギリギリまで何とか絞り出そうと頭の中で色んなアプローチをかけるのか。後者の努力ができる人はメモリースポーツでも強いです。もちろんこれもポータブルスキルなので他の競技でも強いと思います。

この粘り強さ、ルールの中で1点でも多くもぎ取ろうとする胆力がある人は、言われなくてもNumbersで分からないところは適当な数字で絶対埋めるし、何があってもWordsのリコール時間4分の途中でFinishを押すことはありません。これは「やれ」と教えてもできない人は多いです。

ちなみにこのポータブルスキルが強いと、メモリースポーツにおけるテクニックの1つ「詰め込み」は自分で思いつきます。決められた制限時間の中で1秒でも速く覚えるためには最後は音記憶の方が速いと気付きますね。
こういうのを自分で気付いて実行する人はすぐ伸びます。

メモリースポーツに必要なテクニカルスキル

次は専門的なスキルです。よくインタビューとかで聞かれる「メモリースポーツに向いている人はどんな人ですか?」はこれを聞きたいんだと思います。
最初に言った通り「よく分かっていない」が答えなのですが、ある程度傾向はあると思うので羅列します。

・想像力、妄想力
間違いなく必要と言える数少ないテクニカルスキル。言葉や画像を見て色んな想像ができるか、面白い妄想ができるか。
日々の中でふと妄想をして頭の中で空想の出来事を映像化している人はメモリースポーツに向いています。

・連想力
単語を見て、別の単語を連想できる力。マジカルバナナが強い人ですね。

・ストーリー力
物語を作る力です。ランダムな単語同士を結び付けて、無理やりストーリーに仕立て上げるのが強い人は向いています。大喜利や三題噺ができる人はメモリースポーツが強い。

・散歩が好き
場所をたくさん持っているので場所法で有利に働きます。脳をリフレッシュさせるのにも良いです。メモリーアスリートには、散歩、ランニング、サイクリングが趣味の人が多い印象です。

・体力
試合では長時間戦うので体力はあればあるほど良いです。ポータブルスキルでもあるか。

・速読力
文字を見て頭の中でイメージ化するのが速読ですね。やっていることはメモリースポーツと同じです。
逆にメモリースポーツをやっていると本を読むのが速くなったという声もよく聞きます。

・集中力
長い時間集中できるかと、一瞬で自分のゾーンに没入できるか。この2つのタイプの集中力が必要です。

・語学力
International Namesの力に直結します。色んな言語に馴染み深いかどうか。また、語学力があると海外のメモリースポーツや記憶術の情報にアクセスしやすいので上達も速いです。マイナースポーツに必要なテクニカルスキルですね。

・周辺視野
広すぎず狭すぎずが良いです。広すぎると覚えている時に周りの物が見えてしまって集中を欠きます。でもある程度あるとメモリーリーグをやっている時に、覚えながら「残り何枚だからそろそろ復習しようか、詰め込もうか」と言ったことができるので強いです。細かすぎるテクニカルスキル。

・タイピング力
速ければ速いほど良いです。リコール時間の確保に直結します。

こんな所でしょうか。
職業で言えば「お笑い芸人」や「小説家」、「タクシードライバー」が強いと思っているのでよく答えています。
でも誤差だしよく分かっていないので色んな人にやってみて試してほしいです。

ちなみにSayaka選手が考える力はこれでした。

確かに。全部納得です。


さて、ここまで様々なポータブルスキル・テクニカルスキルを挙げてきました。これらを持っているとメモリースポーツに向いているし、持っていないとどこかで上達に困るかもしれません。

でも、最も大切なのは「メモリースポーツに熱中できるかどうか」だと思います。「メモリースポーツを楽しめるか?」「メモリースポーツに没頭できるか?」とも言えます。
こればっかりはスキルでは測りきれません。(稀にどんな競技や仕事でも楽しむことができるという最強のポータブルスキルを持っている人はいますね)

熱中は最強です。努力に勝ります。
「努力しないと」と思っている時点で、熱中には勝てません。

「毎日20試合しないと…」とノルマにして苦しんで練習している人は、「気付いたら今日も40試合してたわ」という人にはまず勝てません。

スコアが伸びていくこと、自分で創意工夫してテクニックを改善できること、そしてたくさん覚えていくこと、これらを楽しめるかどうかがメモリースポーツの上達に影響してくると思います。
まぁその領域に行くのにハードルがあるんですが…。そのハードルを全員に超えてもらうために色々やっていきます。

とりあえず全員メモリーリーグをやってみてほしいです。
オススメイベントはこちら。


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