📕ないものねだり

「好き」

その言葉が欲しくて
何回も何回も期待をふくらませ、ガチャガチャを何年も回し続けてしまった。

一回も出てくれない。

何回やっても、めちゃくちゃ課金をしても…。
出ることは無かった。
代わりに何回も目にした言葉は、

「差別」
「無視」
「酷」
「我慢」
「涙」
「嘘」
「嫌」
「無駄」

だった。
影になっているシークレットも引いた。

「しつこい」

期待して開けた自分が情けない。
私は答えにたどり着いてしまった。

「そっか、そういう事か…期待してはいけなかったんだ。ずっと前からしつこく回し続けてしまったんだ」そう呟くと、腑に落ちた私の目から急に涙が頬をつたった。

きっとどこかで諦めていた。
これだけお金を使っても出てこない。
張っていた糸が解け、身体中を血が巡った。
欲しい言葉をどれだけ言ってほしくても、無駄だった。

差別を受け、無視をされ、さすがに酷だと思ってたまらなかった。
私はどれくらいの期間、彼の前で涙を我慢したのだろう。

分かっていたはずなのに。

「好き」と直接聞くことは夢のまた夢の…。
頭の中がその繰り返しになって。
ダメなら諦めるしかない。
期待することを。

自分が喜んだら相手も喜んでくれるって、
自分以上に嬉しい気持ちを知れるのだろうって信じてた。

無駄だった。

何をしていたのだろう。
いくら頑張っても褒めてもらえない。

私はそういう人間だから。
優秀な兄妹と違う目で見られていたから、
きっと自分の番が来ると思ってしまったんだ。

でも、もういい。
分かった。

あなたは変わらないし、変わるつもりもないんだよね？
いくらつぎ込んでガチャを回しても出て来るはずなんて無いって、分かったから。

私が変わるよ。

もう何も思わないから。
それが一番って分かっちゃったから。

それにしても、寂しいものだね。

「ないものねだり」はこれからも続いていくのだろう。