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声優朗読劇「フォアレーゼン」@丹波篠山市に行ってきた

2024年1月21日(日)、丹波篠山市の田園交響ホールにひとり、おもむいた。本当は、中1娘と一緒に楽しむはずだった。でも彼女はこの同じ時間に、養父市のハチ高原でクラスメイトとスキー実習を受けている。

中学校行事の自然学校と見事に被ってしまった。ハハはポンコツなので、先の学校行事を把握せずにチケット購入してしまった。とんだ失態だ。娘よ、がっかりさせて、マジでごめん。

娘が行きたかったイベントは、兵庫県丹波篠山市民ミュージカル第11弾連動企画、声優朗読劇『VORLESEN(フォアレーゼン)〜ノートル=ダム・ド・パリ〜』。会場は、丹波篠山市立田園交響ホールである。

中1娘は今、声優に関心があるらしい。親に似たのか、私もまた20-30年前は声優に夢中になっていた。中でも佐久間レイさん(黒猫ジジやバタ子さん)、林原めぐみさん(女らんま)が好きで、オリジナルCDを買っていたし、パーソナリティを務めるラジオも聴いていた。今思うと、当時はアイドル声優黎明期だった。

中1娘は誰のファンかというと、重松千晴さんのファンらしい。本イベントのチラシに掲載されている宣材写真を見ると、中性的でスラっとした男性だ。何の作品で何の役をしているのかすら、ハハはわからない。しかし、娘から彼へのファンレターを預かった。ハハのミッションのひとつは、設置されているレターBOXに投函すること。忘れたら叱られるぞ。

本イベント出演の速水奨さんのことは、ハハは存じ上げていた。とんでもないイケボの持ち主である。初めて知ったのは『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』だったかな。アニメの内容はあまり覚えていないのだけれど、カッコ良すぎる声だったということだけ、脳にインプットされている。



14:00頃、丹波篠山市立田園交響ホールの玄関前についた。もう15人ほどが待機している。熱心なファンなのだろう。

玄関には張り紙。見ると、オリジナルグッズの先行販売が14:30から行われるという。待たねば。お手洗いを済ませてから、改めて玄関前に並んだ。推し活は、公演前からはじまっているのだな。

待機しているファンの推し活カバンが目に入る。缶バッジがビッシリと並べられている。あぁ、アニメイトでたまに見かけるスタイルのカバンだ。なぜに同じデザインの缶バッチを面のように並べるのかその価値が私にはわからず、とても新鮮な気分で見つめてしまう。

14:26、間もなくオリジナルグッズの先行販売をロビーで開催すると案内があり、数分後扉が開かれた。

娘にお願いされていた台本を買う。缶バッチのガチャガチャもやってほしいと言われていたもののそこにはなかったし、よくわからなかったのでこれかも?とネコの缶バッジもひとつ買った。よし、第1のミッション完了だ。

自宅にて撮影


ロビーで本を読んで待つ。しばらくしてから顔を上げると、ロビーにはほぼ女性で埋め尽くされていた。全席指定席だというのに、並んでいた。何があるのか?

15:04、アナウンスが流れる。

間もなく会場です。本日出演の声優4名の直筆サイン入り缶バッチが当たるガチャガチャを設置しています。みなさんぜひご参加ください。

ぐはっ、こういうことか。真打ちはこれだったのか。サイン入り、ガチャガチャ、缶バッジ。どうしよう、ネコ缶バッジを買ったから、特段改めてガチャしなくてもいいよね。

熱気に包まれた会場



ずいぶん長い列ができていたので、ハハは怖気付いてしまう。娘よ、ごめん。あまり関心のない対象の行列に並ぶのは、かなりの苦手分野なのだ。テーマパークでさえダメで、かつてUSJのミニオンライドの大行列に小学低学年のキミとやっとこさっとこ2時間も並んだ過去があるけれども、あのときもやっぱりハハはしんどかった。

しかし、ファンにとっての直筆サインとは、特別なものなのだろうな。そのものに魂が宿っていて、自分にとっての強力なお守りになるというか。その人をより近くに感じられる分身のようなものかもしれない。

ハハもまた、バイブルとしている本の著者に目の前でサインを書いていただいて執筆のお守りにしているから、その気持ちもなんとなくわかる。

はっ!ファンレターBOXを発見!シンプルな仕様で驚いた。なんか、こう、立方体の箱か何かで中身が見えないようになっているかと思っていたから。

娘よ、第2のミッションは果たしたぞ。

ホールに入る。静かな熱気に包まれている。A席27列6と7番だ。前情報はいっさい仕入れていないわたし。本イベント限定グッズの台本を購入したけれど、あえて読んでいない。プロによるお芝居で初めて、ストーリーを堪能しようと意気込んでいた。

ブー!

公演の合図が鳴り響く。会場全体の照明が落ち、うっすらと照らされているのは壇上のハイチェア4基の足もとだけ。

カツカツカツ・・・。

4人の声優がスタンバイする。向かって右の人に、青白いスポットライトが当たった。

速水奨さんだ。

国王の権力が教会を凌駕しつつあった十五世紀のパリ。
ノートルダム寺院の副司祭フロロは、一人の女を毎夜追いかける。
その心を落ち着かせるのは一本のナイフであった。
ところがある日、ナイフを見ると・・・・・

低めの艶めくイケボで読み上げる。生演奏のピアノの軽やかでどことなくさみしげな旋律が流れるーー。

私は頭の中を整理する。実は私、恥ずかしながら『ノートル=ダム・ド・パリ』はおろか、ディズニー作品の『ノートルダムの鐘』すら観たことがない。

舞台は中世フランスのパリの教会。副司祭と女が登場するのか。馴染みのない時代に脳内が少し混乱する。

副司祭が懺悔していること、回想していることは、なんとなくわかる。

お芝居のセリフを体にしみこませ、脳内に風景をイメージさせようとする。しかし、なかなかに難しい。

セリフを聞き取り、人物が置かれている状況を理解し、情景を脳内で映像化しようとするも。理解が追いつかないまま、お芝居がどんどん進んでいってしまう。

はじめは壇上の声優4人の動きや照明も目を凝らして見ていたが、ストーリーがまったくわからなくなってしまった。一言もセリフを漏らすまいと目を閉じ、耳に手をかざして集音に努めた。

登場人物カジモドだけは、すぐにわかった。圧倒的に“異質”な人物だった。重松千晴さんが、体全体を使って、カジモドの複雑な喜怒哀楽を叫びで表現していた。圧倒された。

声優さんのお芝居は素晴らしいものの、セリフの言葉が難解すぎて、ストーリーを知らないだけに、理解が追いつかない。

お芝居が終了した。

葛藤、絶望、悲壮感。
声だけですべて表現されていた。

鬼気迫る感情のシャワーを、ずっしりと浴び続けた苦しい1時間だった。

これを味わい尽くせたのは、演者さんたちの魂がすべて込められていたからこそ。

ここからは反省点。朗読劇だから、聞いてすぐに理解できるんじゃないかと思って気楽な気持ちで臨んだのだけど。今回の『ノートル=ダム・ド・パリ』に限っては、やんわりと登場人物とストーリーに触れてから観劇したほうが、よりお芝居が楽しめただろう。44歳の本音である。

教養って大事だわと痛感。これを機に、文学『ノートル=ダム・ド・パリ』を読んでみようと思えたし(バッドエンドみたいだが・・・)、ディズニー映画『ノートルダムの鐘』を観ると心に決めた。それが私にとって大きな収穫になった。

娘よ、ほんまごめん。場としては楽しんだのだが、ハハ自身に教養がなかったせいでお芝居に集中できず、まともな感想を書けなかったよ。反省。

そもそも、中1娘は、これを観劇して内容を理解できただろうか。いや、大好きな重松千晴さんの圧巻のお芝居を生で浴びる喜びのほうが大きかったんだろうと想像する。

15分間の休憩中に、台本を読み切る。

こんなお話だったのか。一人の人物を3人で演じ分けていたのか。エスメラルダとはこんな女性だったのか。

つい数分前の記憶をつないでいく。暗がりの中でも、リアルタイムで台本に目を通したらよかったな。

再び壇上に出演声優4名が現れて、トークタイム。

お見事。素のみなさん、役が抜けてらっしゃる。当たり前だが、声色も本番と全然違う。

特に、娘の大好きな重松千晴さん。本番ではあんなに会場中に響き渡っていた声が、素になるとかわいらしいお声になって、私の耳では聞き取れない…!コメントを一生懸命に拾おうとするも、まったくわからない…。なのでお姿だけスケッチした。娘に、雰囲気だけでも伝わるだろうか。

劇の感想や、ご当地トークで盛り上がり、あっという間の30分だった。

ラスト10分、同じ題目で2月中旬に公演を控えているという市民ミュージカルのみなさんが、2曲パフォーマンスしてくださった。こちらもまた素晴らしかった。

声優朗読劇、圧巻だった。声だけであれだけの臨場感ある空気感を作り出せてしまうとは。

ストーリーに少しでも触れていたら、より楽しめただろうから。次回は演目の原作を予習していこう。

速水奨さん、増田俊樹さん、重松千晴さん、直田姫奈さん。
感情がおかしくなるような素晴らしいお芝居に感謝の念を。

ピアノ演奏や照明演出もまた、お芝居を彩りを添えて厚みを持たせていて重々しい余韻にひたれた。拍手喝采。

またの機会を楽しみに、ジャンル問わず芸術やアート、エンタメに軽やかに触れていきたい。


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