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【注文住宅攻略】住宅意匠の理論(総覧)

インスタを見るとおしゃれが部屋がたくさん出てきます。
こんな家にできたらなー、と夢が膨らむ中でこんなお悩みは無いでしょうか。

「インスタを取り入れようとしても、自分の家でやるとなんか違う」
「考えることが多すぎて頭がパンクする。限られた予算で何を優先したらいいのか分からない」
「色を3色に抑える、ラインを揃えるみたいなテクニックは知ってるけどそれ以上やれることはないのか」

そういう方に向けて、これを抑えれば日本の住宅の上位5%には余裕で入れるだろうという方法を解説します。(とはいえ抑える項目は多いので、本記事を含めて4〜5つに分ける予定です。尚、それだけ風呂敷を広げて完成できるのかは不明)

意匠関連の記事は、インテリアコーディネートに入る間取り決めまでに読んでいただきたいです。

家具と空間の関係性

50点の空間を家具で100点にはできない

Twitterでは"ニトリ ダサい論" が少し話題になりました。
私の見解としては、ニトリを置いてダサくなるのは空間設計力が無い場合に起きることであり、設計力があればローコスト家具を置いてもおしゃれは成り立ちます。

「この空間にはph5じゃないとダメなんだー!」という空間はおかしいと思いませんか?

ph5を置いたら空間が良くなることは素人でも分かります。限られた資源の中でやりくりするのがプロでしょう。

上着はカナダグース、インナーはジルサンダー、バッグはヴィトン、靴はバレンシアガみたいなハイブランドで固めるコーデを作って「ほらかっこいいでしょ?」と提案されても庶民には役に立たないわけです。

その優先順位が間違っていて「照明はルイスポールセンやカーペットは山形絨毯など、誰もが知るハイブランドで固めているのにパッとしない」というおうちを見かけます。

それはインテリアコーディネートの問題ではなく、内装や照明計画で躓いているからです。
そうなると家具では誤魔化せないので、正直手遅れです。

つまり、注文住宅終盤のインテリアコーディネートの前におしゃれかどうかの勝負は決まっています。

高級家具は空間にラグジュアリー、品格を添える最後の1ピースです。
90点の空間を100点にできるのが高級家具であり、50点の空間を家具で100点にすることはできません。まずは80~90点の空間を目指しましょう。

80~90点の空間だと高級家具ではなくても恰好がつくので、家具にかける初期コストも生涯コストも安く済みます。

吉野家の今の内装にph5を置いたからといって上質な空間になるわけでもないのは誰でも分かると思います。
正しい優先順位で意匠を向上しましょう。

空間への投資はコストメリットと可変性がある

内装と比べて家具は消耗品であり耐用年数は少ないわけですから、ローコストで抑えられる場合は長期的に見ると経済メリットも大きいです。

家具で一番高いのはソファですが、ソファも15年20年使うことはないでしょう。
他の家具ならより短いスパンで買い替えをします。

特に子供が小学生高学年ぐらいまでで使う家具と、それ以降の家具は変わりませんか?
例えばソファの前に置くローテーブルをガラス製のテーブルにしたい人がいても、小さいお子さんがいればぶつけても叩いても安全なものを選ばざるを得ません。

お子さんが落ち着く年齢になってから買い替えたりするのが普通じゃないでしょうか。
とすると、入居して5-10年ぐらいは安全な家具を選ぶ必要がありますが、安全でインテリア製を損ねない家具を探すのは難しいと思います。

その弱点を内装でカバーできるわけです。

注文住宅で自分が建てた家の内装をコロコロ変えることは無いと思いますが、家具は壊れますし何よりも飽きがきます。
その度に高級家具を買える財力がある人はいいですが、そうでは無い人が大半なのでローコストでも格好がつく空間の方が絶対にいいはずです。

昨今、子供部屋は15年しか使われないから小さく作る、老後を考えてトイレや風呂を引き戸にするといった可変性を考えた間取りが普及しています。

その考え、家具にも当てはめて考えませんか?
可変性は間取りにだけ当てはめるものではないと思います。

私は実家時代、狭い部屋ながらも自分なりに良い家具配置を考えたり、おしゃれになりそうな雑貨を買ったりして創意工夫をしていました。

自分で家を借りるようになっても住む家にあった家具配置や家具選びをするのが好きでした。

そんな感じで、長く住む家で今持っている家具に飽きてもまた新しい楽しみ方ができるといいですよね。それもローコストで。
それこそが真にいい空間だと思います。

賃貸の真逆をいく

はっきり言います。ダサい空間は安い賃貸物件です。(今現在賃貸に住んでいる方には申し訳ないですが、私も過去5物件で賃貸に住んでおり、今も賃貸に住んでいるのでポジショントークではありません。経験した上で書いてます)

まず賃貸の特徴は以下です。(上から影響度が大きい順に並べてます)

  • 照明:天井シーリングだけがついており、1室1灯で部屋の隅まで照らす。トイレや廊下なども同様に隅まで明るい

  • 窓:通風を意識した窓配置で数が多く、壁の余白が少ない(外壁に接する面は必ず窓がついてる)。サイズが大きい。四方枠がある。隣家の壁など見たい景色ではない光景が広がる

  • 壁・天井:真っ白なクロス

  • 床:シートフローリング(木目を印刷した偽物の板)

  • エアコン:むき出し

  • 洗面・脱衣所:生活感がすごい。ごつい洗面所の横に洗濯機という配置

  • 巾木:目立つほど太い

  • スイッチ:目線に入る高さ

  • 建具:室内ドアの上に溜まりがある(ハイドアじゃない)。ドア枠がある

これらの逆をやれば簡単に雰囲気が出てきます

また昔ながらのオフィスも同様でしょう。オフィスの特徴は照明が明るいことで、昼白色が使われています。

もちろん、オフィスは仕事をする場なので集中しやすい昼白色でいいのですが、それを自宅でやってしまうと雰囲気を損ねます。

意匠三大要素

賃貸における問題、またその裏返しとなる意匠に優れた部屋の特徴は3つに分類できます。(3つそれぞれの詳細を今後3本の記事にします)

各パートを抑えることで上質な空間になります。

ちなみに、三大要素には家具は入ってません。
強いて言うなら照明だけは家具ですが、照明器具自体のデザイン性ではなく、照明の使い方なので家具要素はありません。

空間全体の意匠向上のためにインテリアコーディネートの優先順位は低い、ということを知ってもらえたらと思います。(ICさんに○されそうです。インテリア自体は大好きなので許してください)

照明

賃貸は1室1灯でした。リビングも廊下も、トイレも1つの灯で隅々まで照らしています。

これを変えるには一室多灯です。

とにかく一番覚えてもらいたい言葉、考え方なので知らなかった方はスマホのメモ帳に書いておいてください。(ちなみにPanasonicはシンフォニーライティング(適材適光)と言っていますが、横文字が気に食わないので分かりやすい一室多灯でいきます)

一室多灯は意匠における最重要事項といえるでしょう。

見てもらった方が分かりやすいのでサンプルです。

https://areva.reform-c.jp/staffblog/603/

全く同じ部屋を1つの照明で照らした場合と、多灯にした場合です。

年配の方は左の方がいいという意見もあると思うので、それは否定しません。
しかし、大多数の方は右の方が落ち着くはずです。

家具が何も変わってないのに、ここまで部屋の印象は変わるわけです。
逆に言うと、家具がローコストでも照明計画で上質な物に見えるので誤魔化しが効きます。

照明の解説記事では、この一室多灯をどのように取り入れるかを解説します。
照明の種類や、リビング、ダイニングといった各場所に応じた手段を紹介し、誰でも簡単に取り入れられるようにサポートします。

面(床・壁・天井・窓)

空間にいる状態で目に入る面積が多いのが面となる、床・壁・天井・窓です。
家具も目には入りますが、物理的な面積としては小さくなります。

賃貸では壁や天井は白くて地味なクロス、床はシートフローリングです。
どうぶつの森の初期状態のようなものですが、どうぶつの森で初期状態から壁紙や床を変えない人はいないですよね。

これを自分が好きなテイストに合わせて色やマテリアルを加えていくと全く違った部屋になります。

特に木視率という考え方が役に立つので、それをもとに解説します。

ちなみに窓については既に記事があるので参照ください。

ノイズレス

賃貸ではドア枠やエアコンといった見たくないものが丸見えになっていました。

それらを一つずつ消していく、隠して見えないようにしていくことでノイズがなくなりストレスのない空間になります。

ノイズレスのいいところは取り入れるのにお金が一切かからないものもあることです。
一方で、設計士に丸投げしてもやってくれないことの方が多いことと、設計がある程度進むと手遅れになることがあります。

エアコンなんかは間取りの初期からどのように隠すか考えないと窓の取り方や天井の収まりに関わるからです。

ノイズとはどういうものがあるのか、どうやって消していけるのかを解説します。

居室以外の作りこみ(+α)

三大要素ではないのですが、ここまでやれたらパーフェクトという要素です。
一般的な住宅なら三大要素までやり切ってあとはそれに合う家具を選べば十分ですが、その上を行きたい、極めたいという人のパートです。

それが何かというと、居室以外を作りこむことです。

多くの家づくりでは、リビングとダイニングに検討の時間も予算も割き、寝室もおしゃれにできたら十分という考えになってないでしょうか。
といってもそれはおかしいことではなく、人が滞在する時間が長い場所を優先して設計しているわけです。

このステージからステップアップしたいという場合にできることは、居室以外のクオリティを上げることです。

具体的には玄関アプローチや玄関、廊下、脱衣所が挙げられます。
特に玄関アプローチと玄関が与える影響は大きいと考えています。

私が言わなくても「外構」に予算を割く人は多いですが、アプローチをこだわったという話はあまり聞きません。
フェンスや門柱の話が多いと思います。これも優先順位の問題で、視線を切ったり郵便を受けるといったことから考えていくので仕方ないことではありますが。アプローチに拘っても機能的になるわけではありません。

こういった普通に家づくりをすると後回しにしがちな居室以外を洗練させられると、住宅ではなく別荘、ホテルのような空間になっていきます。

貸し別荘やホテルに滞在したときに見えないもの、無いものを極力排除し、空間を作ります。

生活感やノイズを取り払い、見たいものだけを見せることで ”おうち感” から抜け出せます。

※記事冒頭のカバー写真は「おしゃれな住宅の究極系」というお題でAIイラストにより作成しました。

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