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注文住宅でトイレの数はいくつ必要?2階トイレ無しで後悔する?

最近、工務店のメルマガでトイレの数の配信が複数社からあった。正直納得ができるものは無かったのと、定期的に出てくる話題なので個人的な結論を書いておきたい。

前提として戸建て住宅で単身者以外のファミリーを想定している。

トイレは2個必要

結論だがトイレは絶対に2個必要。

以下が理由。

  • 生理現象であるトイレが被らないわけが無いので、1個の時点で我慢が必要になり利便性が落ちる(これは一般的な4人家族どころか、2人家族ですら被る)

  • 仮に「私の家族は絶対被らない」と言い張る人がいたとして、先に大をしたあとにすぐさま次の人が入るのは快適なのだろうか?消臭スプレーをこれでもかと振りまくとしても消臭スプレーに臭いはいいものではないし、心情的にも自分が入った直後に知ってる人間が使うのはお互い気が引ける(「知ってる人間」としたのは、外出先の飲食店や商業施設で自分が使った後に他人がすぐ入ることは心理的ストレスが小さいため。「この人、あり得ないぐらい臭い!」と思われてもその日限りだから気にすることは無いが、これが家族や友達に自分の排泄臭を嗅がれることを好き好む人はいないだろう

  • 故障や詰まりのバックアップができないので問題が起きればトイレ難民。仮に住んでから何十年もトイレが1度も詰まらなかったとして「ほら1個でよかったじゃん」と思うのも間違っていて、「詰まったら終わり」という心理的負担を持ちながら住むことが快適では無い。強いて言うなら、家から1分以内に無料で24時間使えるトイレがあるなら1台でもいいかもしれない。それ以上超えるとトイレのために外に行く負担が大きすぎると思う(もしくは庭でするよという勇者ならいいかも)

  • トイレの配置はLDK、風呂、主寝室の近くにあるべき。LDKは最も長く滞在し、風呂は入浴前に使用することが非常に多い、主寝室は就寝の前後や就寝中に起きてトイレに行くことがあるので近いほどいいため。3か所に設置する必要はなくLDKと風呂が近いならその間に置けばいいが、3か所全てが近い間取りはそうそう存在しない。つまり2か所は兼ねても1か所は分ける方が便利。この考え方からすると、平屋はトイレを最優先にした間取りにすれば3か所兼ねられるかもしれないが、2階建ては寝室とLDKが分かれるので必然的に2個となる

  • 1個派は排泄習慣が変わることを想定していない。今は頻度が少ないから1つでいいと言ってても、中年以降で加速度的にトイレ頻度は上がっていく。20~30代でトイレの数が少なくても40~50代では増えるし、60代過ぎれば言わずもがな。比較的若い今の年齢で頻度を捉えること自体が間違っている。年齢に限らずインフルエンザやノロウイルスにかかったり、便秘になることは未来永劫無いのだろうか10年に1度コロナウイルスのようなパンデミックが発生するとされるが、感染者が一人出たらどうするのだろうか。女性が体調が悪い日は不便にならないのだろうか。子供が巣立って二人になったとして、お互いが高齢者ならトイレの頻度が多くなるがそれでも被らないのだろうか。つまり病気にかかっていない平常時、今の年齢で考えること自体が間違っている。トイレの議論で頻度を持ち出してる人がいたら何もわかってないと思った方がいいぐらいズレた論点

  • 後から追加するのが大変。水が関係することなので給水と排水工事が必要になる。数万で住むことではないし、トイレが無かった間取りにトイレを足すことは不自由な間取りになるので、「絶対にトイレは1つでいい」と言い切れないなら2つが無難

簡単に言うと1個でも生活はできるが、快適ではないということ。快適ではなくていいなら1個でいいと思うし、快適な家にしたいなら2個にしよう。そういう単純な話である。

家が小さいから1つでいいというのはおかしいし、2人で少ないから1つでいいというのもおかしい。

「トイレに関して快適じゃないことがあってもいいから1つにしよう」というのが正しい考え方だと思う。

トイレ2個のデメリット

デメリットを考えても2個は絶対必要だと思っているが、デメリットと対策を記載する。

スペースが減る

2つのトイレを確保するためにスペースが必要。

これは手洗い場をトイレ内から外に切り出して洗面をトイレ横に設置することで間取りの自由度が上がる。

https://www.toiletas.jp/?mode=f143

トイレ内で洗面も完結させようとすると洗面のためのスペースを広げることになる。トイレは形が長方形と決まっているので、それが大きくなると間取りの自由度が悪くなる。

これはトイレのためだけの洗面にするとそれはそれでスペースが無駄になってしまうが、風呂近くのトイレであれば洗面と脱衣所を分けることでトイレと身支度で使用する洗面として兼ねられるので無駄にならない。

騒音が増える

排水音が出る場所が2か所になる。

特に2階だと2階だけではなく1階に排水される音が出る。

そのため特に2階建ての場合、2階のトイレの位置は排水管が1階のどの部屋の近くを通るか必ず確認すること。

2階リビングで1階に寝室の場合、排水が1階の主寝室のあたりだとすると最悪である。残念ながら、ここまで配慮してくれる実務者は少ないので施主側でチェックしてほしい。

加えて位置に限らず、配管は防音対策を施すこと。

このような防音配管なる商品がある。

https://marumohome.com/blog/blog_kenchiku/%EF%BD%923-3-3.html

配管むき出しではどの場所だとしても音が大きくなって不快になる。

これは標準で2階の配管に防音対策をしている会社とそうでは無い会社がある。

私の会社では幸い対策が標準だったが、何も言わないと防音対策をしていない可能性があるので必ず確認すること。

ちなみに2階リビングのキッチン排水も同様で対策の確認をしてほしい。

ここまで書いておいて逆説的だが、一個の場合まアクセスを良くしようとするとリビングにも寝室にも近い場所にトイレが配置されてそれはそれで音の問題が出てくる。

朝1人目が起きてトイレを使うとまだ寝てる人にトイレの音が聞こえて起きてしまうかもしれない。

この点、2箇所あれば寝室から離れた場所を使うことができるので確実にQOLは上がる。

結局、トイレ一個はQOLを下げる行為ということである。

掃除回数が増える

これは仕方ない。

最初に挙げたデメリットを受け入れてでも掃除1か所減ることを取るという人はそれでいいと思う。

平屋でも2個あった方がいい

2階建て中心の話をしたが、平屋ならワンフロアなので1つという考え方もあると思う。

しかし私は平屋でも2つを推したい。

まず以下の間取りを見てほしい。ある会社の平屋のベストセレクションということなので、てきとうな間取りではなく実際に提案されている生きた間取りになる。

遊建築設計社が運営する遊ベーシックデザインの会(東京都千代田区)は、2024年の流行を先取りした平屋の間取り集「ベストセレクション平屋」を10月下旬に発売する。

https://www.s-housing.jp/archives/328698
https://lbyu-net.com/update/wp-content/uploads/2023/09/16cd05290183737b4445861947a93d53.pdf

全体的にはよくできた間取りという印象を持つと思う。

しかし、4つのプランが紹介されるがどれもトイレが1つである。

そして平屋は必然的に横移動が多くなるので、私が先に挙げたLDK、風呂、主寝室の3か所から近い場所に設置されている間取りは1つも無い。

セオリー通り3つのいずれかの部屋からのアクセスがいい場所にあるが、他の場所からのアクセスが悪い。

風呂に入るときに風呂とは反対方向に移動したり、就寝前後やまして就寝中に目が覚めてトイレに行くというときにちょっとした散歩になるのは便利なのだろうか。

これだけ回遊導線、家事導線が求められる中、トイレ導線は何も考えないのだろうか。

強いていうならNo.1だけは3か所から比較的近い位置にある。少し寝室からは遠いが、最低でもこのぐらいはトイレアクセスがいい間取りにしないと不便になる。

そのため近くになることが少ない風呂と主寝室の近くに配置するのが平屋でも便利だと思う。そのどちらかにあれば、LDKからもアクセスはいいはず。

減額調整でトイレの数を減らすのはダメ

人によっては減額調整の段階で「トイレは1つにしようかな?」と減額の候補に入る人もいるかもしれないが、本当にお勧めしない。もっと他に削ることがある。

当たり前のことだが大事なので言いたい。トイレは排泄という生理現象で使うものである。

生理現象とは人が抑えようとしてもどうにもならないもの。それを無理に抑えないといけない選択を減額の候補にするのは間違っている。

正確には生理現象ではないが、生きるために必要なこととして食事(調理)があり、それを楽にするためにキッチンがある。

これを元々3口にしようとしていたところ、2口にする、1口にしてキッチンを小さくするということを減額調整でする人はそうそういないはず。トイレを終盤で減らすことはこれと同じようなもの。

もちろんそれを選択する人がいても否定はしないが、普通はしない方がいいイレギュラーな選択をしようとしているということはよく理解してトイレの数は決めた方がいいでしょう。

また家アカは温度や湿度にこだわるぐらい凝った人の集まり。

普通はこだわらないようなところに頭を使うわけだが、温熱は答えが1つではないし家族の中でも一人一人で最適な温湿度は異なる。一人が快適でももう一人は快適ではないということは起きえる。

しかし、トイレはしたいときにできなければ不快というのは子供でも分かる。温熱で普通の人がしないような快適を追求するのに、普通の人が求める快適を担保しないのは優先順位がおかしいと思う。

家づくりは予算の中で優先順位を決めることが全てなので、まずは人間の欲求である生理現象や生きるために必要なことを快適にできる状態にしてからそれ以上のことに取り組んだ方がいいと思う。

建売ですらファミリー向けでトイレ一つはそうそう見ない。部分的であるものの建売以下の快適性にわざわざしますか?という話。

非常に高額なスーパー工務店が建売以下の快適性を提案していることに大きな疑問を感じる。

設備は必ず故障する

最後にトイレから派生するがバックアップの考えは空調にも通ずる。

よく「うちは高性能住宅なのでエアコン1台で全館暖房(冷房)できますよ!」という触れ込みを聞くことがあると思う。

1台で空調できることはいいことだが、1台で空調できても結局2台設置すべきということが隠されている

トイレとの大きな違いが、トイレは壊れても不便を受け入れれば外に行くなど代替手段があるが、エアコンは家に滞在するなら代替手段がないこと。

故障が起きるタイミングをよく考えてもらいたいが、故障に気づくのはどういうタイミングだろうか。

普通に考えると、冬寒くなった時、もしくは夏暑くなった時にその季節一発目の電源を入れたときだと思う。(家アカなら除湿開始のタイミングもある)

使ってない中間期に故障に気づくわけが無い。

つまり使いたいときに故障していることに初めて気づくことになる。

寒い(暑い)ときにエアコンが故障したとして、何日で買い替えられるだろうか。もしくは修理できるだろうか。

故障だとしてその日に直るということはまず考えにくい。そもそもメーカーに依頼してその日に来ることは無い。この時点で1日はエアコン無しで生活することになる。

仮に買い替えるとしたら?

特に夏の時期だが、エアコン業者の繁忙期は1ヵ月以上待つことは当たり前である。

昨今30度どころか35度を超える猛暑日が何日もあるような状況で、1台のエアコンが壊れたらどうなるか。

この場合、どれだけの高性能な家でも生活することは不可能になる。(冬ならG3住宅でエアコン無し、日射取得と局所暖房で生活できないことは無いはず。地域にもよるが)

長くなったが、こんなリスクを抱える家は快適なんだろうか?

住宅性能に関わらず、メインエアコンとは別に予備機が必要ということであうる。

2階建てで空調計画や間取りが良い場合、冷房を2階から行って全館冷房も可能な場合があるが、どのみちバックアップは2階に必須となる。1階に2台合っても冷たい空気は2階には絶対に行かないため。

1階も2台あるに越したことは無いが、壊れたとして寒さは服の重ね着や局所暖房で耐えられる。

部屋を暖める方法は電気さえあれば無数にあるが、冷やす方法は現代でもエアコンだけである。

だからエアコン(特に冷房用)のバックアップは必要ということはトイレと同じで頭に入れてもらいたい。

自分がその家に住むわけじゃないので無責任な営業マンは「1台で行けますよ」と言ってくるが、「でも結局2台必要ですよね」と頭の中で反芻してほしい。

家が建った後の生活、メンテを考えない人に真面目に向き合っても疲れるだけなので「でも心配なので一応2台置かせてください」と大人の振る舞いをしておこう。

分かると思うが、予備機なので入居時点で設置しないと意味が無い。

後付けでスリーブだけ施工しておくことがあるが、予備機は入居時点から施工しておこう。

エアコンの予備機を買うほど予算が本当に無い、という人は住んでからでもいいが1年以内(正確にはその家で過ごす最初の夏が来る前)に工事しておこう。

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