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ドライブ


『可愛いのはさとう珠緒だよ!こないだサイン会行

った時、俺、いつもお世話になってます!って言っち

ゃってさ!!マジ恥ずかしかったわ~』


このバカが俺。藤巻真二17歳の高校生。勉強サボり

すぎて都内の名門バカ高に通ってる。頭はバカだけ

ど、昔から霊感が強かった。電話は鳴るまえに解っ

ていたし、人の死相も見えた。でもこのバカ高校で

他のアホな奴らと、話したり、遊んだりしている内

にそんなもんどっかに消えたと思ってた。この日ま

では…


…時代は90年後半。世の中小室、小室、どこに行くに

も小室一色だった。後に、彼はこの頃1日に4曲作って

いたとインタビューで語っていた。時代と寝るとはこ

のことかと俺は思った。俺は音楽はパンクロック

が好きだけど、小室哲哉のことは尊敬している。1

日に4曲リリース出来るほどのクオリティの曲を作れ

るってプロだ。いつまでも3コードで愚痴ばかり歌っ

てるパンクとは訳が違う。音楽は別として小室哲哉

のスビリットがパンクだ。それに比べて俺なんか、軟

派な考えだし。なんか俺にも才能つーのはないのか

ね?ま、いいんだけど。そんな俺には4つ年上の姉が

いる。姉は最近車の免許を取ったばかり。俺を連れ

てドライブに行くのにハマってる。姉は中古のシー

マをローンで買った。だから姉のドライブに行きた

い気持ちもわかる。俺はなるべく付き合うように

している。良い弟だ。


でもドライブに誘われたこの日、俺は無性に眠かっ

た。でも明日は学校が休み。だから姉に付き合った。

家を出たのが0時を回っていた。姉の彼氏が住む神奈

川の日吉付近まで行くこととなった。さっきまでの

眠気がぶっ飛んだ。カーステレオからはORIGINAL 

LOVEが流れている、姉のチョイスだ。窓を下

げると、初夏の匂いがしてなんだか嬉しくなった。

しばらくORIGINAL LOVEと共に走っただろう。陸橋

交差点で信号待ち。深夜とあってか、うちらの車しかい

ない。その時だった、俺の頭の中に瞬時に映像が浮かん

だ。赤なのにワンテンポ遅れて突っ込んでくる一台のト

ラック。それにこの車が

衝突する!

映像はそこで砂嵐に変わった。姉は俺が子供の頃、霊

感が強かったのを知っている。だからこそ俺は、簡潔に

映像の話しを姉にした。そして信号が青に変わっても、

進まないことを、約束した。カーステレオを切

った。そして信号が青に変わった。しばらくするとてク

ラクションを大きく鳴らしながら、一台のトラックが横

切っって行った。鳥肌がたった。姉は『本当だ…』と

いう顔をしている。裏を返せば、俺が無性に眠かったの

も、このドライブに行かせないように見えない力が働

いたのだろう。姉はゆっくりと車を動かした。カーステ

レオからはTRFの曲が元気良く流れていた。

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