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詩【劣等缶の記憶】

事あるごとに劣等缶の中でいじけることがあった。

缶の切り口で流血して体を折りたたんで入るのだ。

宇宙から見れば滑稽かもしれない、その仕草を、

私は好んでやっているのだ。

どうだ。こんないじけ方格好いいだろう。

誰もやらないことに優越感を味わうのさ。ウヒッ。

劣等缶から仰ぐ、愛する縹色の空を瞳に落とすと、

劣等缶の中が血と涙でいっぱいさ。

劣等缶はどこから転がってきたのだろうか。

劣等缶に入ったのはいつからだろうか。

至らぬ自分も丸ごと愛してもらえなかった、
からっ風。

まだ幼かったのに欲しい愛を貰えなかった、
からっ風。

冷たい、冷たい、それに吹かれて落ち葉と一緒に
転がってきた劣等缶。

劣等缶からそそぐ太陽の光の波紋を胸いっぱいに
受け止める。

温もりを自分で沸かしてゆく。

五右衛門風呂の如く。

事あるごとに劣等缶の中でいじけることが
あったんだ。

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