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ミライの源氏物語(読書感想文)

 「かわいい夫」というタイトルに惹かれて山﨑ナオコーラさんを知ってから、ナオコーラさんと共に過ごす春になっている。今回手にしたのは、ミライの源氏物語。
 
 正直私はエッセイ好きなので、エッセイでもなく小説でもなく、しかも私の苦手な古典絡みのこの本...一体どんな本なのだろうか、とわからないままに読み始めたのだけれど、目次でググッと興味が湧いた。
 ロリコン・マザコン・ホモソーシャル・貧困問題・マウンティング・ジェンダーの多様性・エイジズム...源氏物語の中に描かれている人たちが物語の中で直面している問題を現代の言葉を使って描かれている。

 源氏物語自体を読んだことのない私だったけれど、読んでいるうちに俄然興味が湧いた。この切り口で、この表現で書けるのはナオコーラさんだからだと思うし、そこに誰に対する遠慮も否定もないのがとても好きだった。

 私自身がいつも直面する問題。自分の中の倫理観と世の中の当たり前、それに傷つく人がいる現実とそれをひっくるめて回り続ける社会。
 この本を読みながら、少しの勇気と希望が湧いた気がする。私たちもこの大きな流れの中で変化をもたらす一人なのかも知れない、そう思えたから。

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<心に残った言葉(順不同)>

● LGBTQ+に関する話がここ数年で急に広がり、その前の時代に馴染むことができてきた方の中には「当事者が増えた」という感覚をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、そうではなくて、人類が誕生した時からその割合は変わらないそうですから、平安時代にも、『源氏物語』の社会感覚や性別の考え方、恋愛観に、自己投影が出来ない、馴染めない、という読者がいたはずです。

●今、「進んでいる」というイメージで捉えられがちな人たちは実は大昔からいたのだということも、重要な前提です。

●あくまで主人公を主体としての恋の結末が決まり、恋愛成就か悲恋かによってヒロインの幸せか不幸が決まる、という考えの先にある意見だと思います。

●人間は、自分が思っている通りには、自分の形を作れないのです。なぜなら、社会的動物だからです。

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