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日向坂46・小坂菜緒さんの楽曲感に色相環で迫る挑戦

前々回に以下の記事で、インタビューにおける小坂菜緒さんの発言から「1stアルバムと 5th シングルにおいて起こった大きな変化」を捉える試みをしました。

おさらいすると、TRIANGLE magazine 02 の小坂菜緒さんのインタビューで以下のように述べられていて、

1stから4thシングルである程度そのイメージを確立することができたと自分では思っていたけど、そのあとのアルバムやシングルでガラッと雰囲気が変わったことで(以下略)

TRIANGLE magazine 02」 小坂菜緒さんのインタビューより引用

「ガラッと雰囲気が変わった」と言うほどの変化を感じていなかった自分は、実際のところ何がガラッと変わったのかを掴もうとしました。その方法として各リリースの表題曲に注目し、「秩序と混沌」軸で分類した際に以下のように分けられるのではないかと、やや強引に整理しました。

  • 1st〜4th:混沌

  • 1stアルバム、5th:秩序(混沌から秩序へ移動した)

強引だったので自分の中でも完全にはしっくり来ていなかったのですが、その後に記事への感想リプライなどを頂く中でピンとくるアイデアがありました。それは、

表題曲だけでなく、リリース全体のイメージをまとめて捉えるフレーム

があれば、小坂さんから見えている世界を少しは理解できるのではないか、ということです。そしてそれには「色のイメージ」が使えるのではないかというのがこの記事で述べたいことになります。

ということで、前々回の記事前半を「色のイメージ」で捉え直すものがこの記事です。ちなみに前々回の記事同様、「小坂さんは世界をこの方法で見ていたはずだ」と断言するものではありません。小坂さんが「ガラッと変わった」と言い表したほどの変化を、どうにかして我々にも認識可能な方法で浮かび上がらせることができないか、という試みになります。


色にはイメージがある

たとえば赤なら「情熱」、青なら「冷静」のように、色から連想するイメージがあると思います。ほかの色も同様に、たとえば以下のようなイメージが連想できそうです。

色彩心理学(色の効果と心身への影響)」より引用

こういった色のイメージを利用し、日向坂のグループカラーである「空色」をベースカラーに、各リリースの楽曲群のイメージを捉えるカラーガイドが作れるのではないか?というのがこの記事のアプローチです。そのための道具として、「色相環」と「秩序の原理」を利用します。

色相環と秩序の原理

色相環

以下に武蔵野美術大学が公開しているページの記述を引用します。

色相環(hue circle)とは、色相を環状に配置したもので、色を体系化する時に用いる方法の一つです。色は光の波長の違いによって、赤・橙・黄・緑・青・紫というように連続的に変化して知覚されます。これを連続的に配列し円環状にしたものを、色相環といいます。

色相環」より引用
色相環」よりマンセル色相環を引用

こんな感じで、色がずらーっと円環に並んでいるのを見たことある人は多いのではないでしょうか。これが色相環です。

秩序の原理

そして「秩序の原理」は以下のような原理です。

「秩序の原理」は色相環上で規則的に、または幾何学的な関係にある配色は調和するという原理です。

カラーコーディネートの配色パターン」より引用

この配色パターンはいくつかあるのですが、今回は「ダイアード配色」と「テトラード配色(正方形)」に注目します。

ダイアード配色

ダイアード配色は以下のように、色相環で向かい合う反対の色(補色)を組み合わせる方法です。

色と幾何学~秩序の原理で色を選ぶ!~」より引用

この配色の効果は以下のとおりです。

お互いの色を引き立てる色同士なので、店舗デザインなどでメインカラーを引き立てるのに効果的な配色です。

カラーコーディネートの配色パターン」より引用

テトラード配色(正方形)

テトラード配色(正方形)は以下のように、色相環を正方形に4等分した位置にある4色を組み合わせる方法です。1つのダイアード配色に垂直な、もう1つのダイアード配色があるようなイメージですね。
2組の補色の組み合わせなので、カラフルで変化に富んでいます

色と幾何学~秩序の原理で色を選ぶ!~」より引用

空色を基準にカラーガイドを作る

では、具体的にどうやって「各リリースの楽曲群のイメージを捉えるカラーガイド」を作るかというと、「空色をベースカラーとしたテトラード」を作成します。ここからはカラーパターンを試せるサイト「paletton」を利用します。

日向坂ロゴの空色はRGB16進数で「#5BBEE4」です。これを paletton に入力してテトラードを作成したものが以下です。

空色を元にテトラードを作成

画像右側の4つのエリアに仕切られた色がテトラードの4色になります。その内訳が以下です。

  • 左上:空色(ベースカラー)

  • 右下:空色の補色(反対の色。オレンジぽい)

  • 左下と右上:もう一つのダイアード

これをどのように「楽曲群のイメージを捉えるカラーガイド」として利用するかというと、

  • 表題曲はベースカラーのイメージ

  • 全タイプに収録される共通カップリングは補色のイメージ

  • その他のカップリングはもう一つのダイアード2色のイメージ

におおむね相当するのではないか、という見方をするために利用します。

先述した色のイメージを再掲します。

色彩心理学(色の効果と心身への影響)」より引用

これらのイメージの中から、表題曲は空色や水色、共通カップリングはオレンジ、その他のカップリングはもう一つのダイアードである黄色と紫が持つイメージとおおむね同じになるのではないか、という仮説です。

もしこのカラーガイドで 1st〜4th までのイメージは説明でき、1stアルバムと5th は説明しにくい場合、「ガラッと変わった」というイメージが見えてくるんじゃないかということです。

1st〜4thは空色ベースカラーガイドで説明できる

まずは、小坂さんが「ガラッと変わった」と述べる以前のリリース、1st〜4th をこのカラーガイドで見ていきます。具体的には、「各曲のイメージにマッチするカラーガイド上のカラー」に曲名をマッピングしてみます。なお、各色のイメージには先に掲示した図のイメージ以外に他のサイトの記述も参考にしています。空色なら「希望・開放感・自由・自立・自然体」、オレンジなら「活発・家庭・暖かい・温もり・フレッシュ・にぎやかさ・親しみ・ポジティブ」などのイメージも利用しました。

そして筆者の印象でマッピングしてみたのが以下の図です。「(全)」は「共通カップリング」のことです。複数の色のイメージを持つ曲はエリアを跨いで配置しています。

カラーガイドに各リリースの楽曲をマッピング

どうでしょう、色のまたぎ方など細かいニュアンスは人によって違うかもしれませんが、だいたいこんな感じではないでしょうか?少なくとも、このカラーガイドの色のどこかにはどの曲もマッピングできそうに思います。3rd「こん好き」は表題曲ですが例外的に、その上品で気品のある雰囲気から空色ではなく紫にマッピングしています。しかし、このカラーガイド上にマッピングできそうであることは変わりません。さらに、共通カップリングもおおむね補色であるオレンジのイメージを含むように思われます。

このように、少なくとも 1st〜4thまでは、リリース単位で見た場合にどれも同じような雰囲気やイメージを醸し出しているように思います。

1stアルバム〜5th はカラーガイドに変化がある

では、1stアルバムと5thはどうでしょうか。まず 1st アルバムに注目すると、新録の全員曲は「My fans」と「ただがむしゃらに」です。シングルと違い共通カップリングが存在しませんが、「収録内容発表のニュース」で記載順が「ただがむしゃらに」よりも早く、ライブでの披露も多い「My fans」を「共通カップリング相当」としてみます。すると「My fans」が補色に相当するはずですが、「My fans」のイメージはオレンジではないように思います。それまでの日向坂には無かった挑発的で強さのあるハードな曲なので、どちらかというと「」ではないでしょうか。そこで、補色が赤に近づくように色相環上で全体を回転させてみます。また、そのままだと赤っぽくならないので、明度と彩度も調整してみます。

補色が赤に近づくように回転させる

するとこうなります。

補色を赤に近づくように回転させ、明度・彩度を調整したカラーガイド

空色だったメインカラーが黄緑っぽくなりました。ここで、元々の解釈「混沌から秩序に移行した」を取り入れます。そのため、先述した色のイメージを再掲します。

色彩心理学(色の効果と心身への影響)」より引用

色のイメージで「秩序」に近いのは「調和」とか「バランス」でしょうか。それは何色かというと「」です。さきほど、補色を赤に近づけるとベースカラーが黄緑っぽくなったと言いました。それはつまり、元々の空色のイメージに緑のイメージが混ざったと解釈できるのではないかと考えました。実際、黄緑の「若々しい」イメージだったり、「クリア・ナチュラル、フレッシュ、活き活きとした」というイメージは「アザトカワイイ」と矛盾しないように思います。

ということで、このカラーガイドに「ひなたざか」の新曲をマッピングしてみました。

「ひなたざか」の新曲を、補色を赤に近づけたカラーガイドへマッピング

こんな感じで、おおよそ全曲どこかの色にマッピング出来そうです。同様に、「君しか勝たん」も黄緑のイメージとそう大きく矛盾しないと考えられますので、5th の楽曲もこのカラーガイドにマッピングしてみます。

5th を、補色を赤に近づけたカラーガイドへマッピング

こんな感じで、こちらもおおよそマッピングできそうに思いました。こちらは例外的に共通カップリングの「声の足跡」は補色(赤)に位置しませんが、それでもその気品や幸福感から紫(群青)と黄色で説明できそうです。「君しか勝たん」は黄色に跨いでもいいかもしれません。

以上のように、1stアルバムと5thは同じカラーガイドで説明できそうであり、リリース単位で見た場合にどちらも同じような雰囲気やイメージを醸し出しているということが言えそうな気がします。

1st〜4thのカラーガイドと1stA〜5thのカラーガイドを比較する

ここまで、空色をベースカラーとしたカラーガイドでは1st〜4thのイメージを説明でき、そのカラーガイドの補色を赤に近づけたカラーガイドでは1stアルバム〜5thのイメージを説明できることを述べました。

では、両者のカラーガイドを並べて見てみます。

2つのカラーガイドを並べてみる

どうでしょうか?けっこう変わったように感じませんか?
実際、たとえば以下のように「キュン」の曲を1stアルバム〜5thのカラーガイドにマッピングしようとしても、赤のエリアが空いてしまってダブつきます。一方、「ひなたざか」の曲を1st〜4thのカラーガイドにマッピングしようとしても、赤のイメージがある曲の置きどころに困ります。

左:赤いエリアがダブつき、より適切なカラーガイドがありそうに感じる
右:赤字の曲の置きどころに困る

ダブついたり置きどころに困るということは、やはりリリース単位のまとまりとして見た時のイメージが異なっているということを意味するのではないかと思います。

当初の比較方法である、表題曲のみに注目して「混沌から秩序へ移行した」という解釈は、カラーガイドでいうとベースカラーのみの比較でした。

カラーガイドのベースカラーのみの比較

これだと、確かに変わってはいますが近い色ですし、黄緑の持つイメージは日向坂にも合っていて表現の幅の一つとして捉えることもできるので「ガラッと変わった」とは言いづらいように思います。

しかし、ベースカラーを元に色相環からテトラードを取り、「それらの色のイメージ」でリリース全体のイメージを捉えると結構違いが見えてきて、これなら「ガラッと変わった」という表現にも納得感が出てくるように思います。

これなら「ガラッと変わった」と表現されても納得感はありそう

このように「色のイメージ」を用いれば、小坂さんの楽曲感に我々も少しは近づけるような気がしました。

6th以降は「寄りで調和、引きで不和」?

さらに 6th 以降は、前々回の記事でも述べたように、センター個人のイメージにかなり立脚した曲になっているように感じます。それはつまり、「カラーガイドのベースカラーがセンターのイメージ色になっている」と言い換えることもできそうです。
6th からは毎回センターが変わっていますので、リリースごとに毎回ベースカラーが変わり、つまりカラーガイドも変わっているということになります。カラーガイド単位(リリース単位)で見れば調和の取れた色の組み合わせになっていますが、全体(日向坂46としてのイメージ)で見た場合に各カラーガイドがバラバラなので調和が取れていないように見える、というのがおそらく、多くの方の中での「イメージに統一感がない」「各曲に違う個性があると言うけど、単にバラバラに見える」という印象につながっているのではないでしょうか。

リリースごとのカラーガイドで見れば調和は取れている
(※ベースカラーは適当です)
リリース単位で見れば調和しているかもしれないが、
しかし全体として見ると全部バラバラに見えて統一感がないように感じるのかも?
(ベースカラーは適当です)

止揚は配色パターンの変更と解釈できるかも

前々回の記事では、11thの動きを原点回帰ではなく止揚と捉えて、これまでの全てを内包し、すべてを日向坂の表現として解釈できるようになったのではないかと述べました。

もしかするとこれも、配色パターンの変更として捉えることができるのかもしれません。空色をベースカラーとし、ペンタード配色やヘクサード配色でカラーガイドを作成すると、すべてのリリースをそのカラーガイドで説明可能になるかもしれないです。

ただ、めんどくさいので今回はやりませんでした。どなたかやってみてはくれませんか。(丸投げ)

この考えに至ったきっかけ

以上、色相環で小坂さんの楽曲感に迫る挑戦でした。

ちなみにこのような考えに至ったきっかけは、前々回の記事の感想としてこんなリプライをいただいたことです。

これを見て何かを掴みかけた感覚がありつつ、でもまだ完全には整理できていなかったところ、以下の記事を見かけました。

そしてこの記事に以下の記述がありました。

というわけで『僕に続け』の話なんですけど、『ハニーデュー』が『キュン』や『ドレミ』といった日向坂本流の続編ならば、『僕に続け』はもう一つの本流と言っていい応援歌としての『青春の馬』の続編だと思ったんですよね。

『僕に続け』と『青春の馬』」より引用

この「本流」と「もう一つの本流」という表現でピンときました。それは、
一定のイメージを複数設定できて、表題だけでなくリリース楽曲全体の印象をまとめて扱えるフレーム」があれば、小坂さんから見えている世界を少しは理解できるのではないか、ということです。そしてそれには「色のイメージ」が使えるのではないか、と考えたんです。

やっぱり雑でもいいのでまずはアウトプットしてフィードバックをもらって、そこからさらにインプットを重ねるといろいろ考えが深まるなぁと改めて思いました。

まとめ

  • 小坂菜緒さんが見ている世界をどうにか近似して、我々にも知覚可能にできないか

  • そのために「色のイメージ」を使ってみる

  • 色相環と秩序の原理で、グループカラーの空色からカラーガイドを作成

  • 1st〜4th はそのカラーガイドで説明可能だが、1stアルバム〜5thは配色が変わり、カラーガイド同士を並べてみると「ガラッと変わった」と言えるような雰囲気を感じる

  • さらに 6th からは毎リリースごとにセンターに合わせたベースカラーになっていたから、リリースごとにカラーガイドが変わったと解釈できるかも

  • そのため、「リリース単位なら調和してるけど、全体として見ると不和」なイメージが出たのではないかと捉えることもできそう

ということを書きました。

改めてなんですけど、こんな感じのことを本能的・直感的に感じ取ってる小坂菜緒さん、すごすぎません?当時18歳ですよ。ハンパないですね。自分が18歳のころはただただ2ちゃんねるで虚無な時間を過ごしていただけでした。そりゃ感性も磨かれないわ。

ご意見やご感想などあればお気軽にコメント等までお寄せくださいませ。

余談

「夜明けのスピード」なんですけど、前は山下葉留花さんの歌声が衝撃すぎてスルーしちゃいましたが、やっぱり上村ひなのさんの歌声も素晴らしいですね。そして歌詞も今の自分の状況に重なってめちゃくちゃ泣きそうになる。

四回目のひな誕祭での「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」の演出がめっちゃくちゃ良かったことを去年記事にしたんですが、当時も上村さんにかなり歌唱技術の向上を感じましたし、今すごくいい感じの表現にたどり着いてる感じがして、めっちゃいいです(語彙だけはひどい)。

ちなみに今は四回目のひな誕祭をBlu-rayで確認できると思うんで、今一度「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」を見てみてほしいです。上村ひなのさんの、

「加入後、理想の自分と本来の自分との葛藤」
「研修生組3人との関わり合い方の葛藤」
「すべてをぶん投げて3人と融和し"三期生"になった」

という上村さんのアイドル人生が「自分で勝手に作り上げた理想の小説」を縦軸に全部めっちゃキレイに解釈できる表現になってるので、すごく好きなんですよ。

そして体調的にはちょっとずつインプットできる量も増えてきました。この調子でラジオにもちょこちょこ復帰していきたいなー。

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