一条天皇の遺した歌(平安中期のアンソロジーを作りました②)
一条天皇が最期に遺した和歌。
一条天皇の辞世の歌とも言えるものなのですが、誰に向けて詠んだものなのか。
切なくも、おもしろい話だと思います。
『御堂関白記』の一条天皇の歌
露の身の草の宿りに君を置きて塵を出でぬることをこそ思へ
中宮彰子が御几帳のそばにいるなら、これは、彰子に宛てた歌でしょう。
おそらく他のおそばの人々も聞いていたことでしょう。
『権記』の一条天皇の歌
露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬる事ぞ悲しき
これは皇后だった藤原定子のために詠んだ歌なのだと。
でも、「あなたを置いて塵の世(この世)を離れる」なら、11年も前に亡くなった定子を出してくるなんてくるなんて、おかしいでしょう。ここで、定子のことを出されても、彰子の手前、道長もそばに控えるものも、戸惑うばかりではないでしょうか。
定子の遺児を育て、二人の皇子を産み、これまで帝を支えた彰子への感謝の気持ちはなかったのか。
多分、私は藤原道長と同じ感想なんでしょうね。
しかし、行成は定子への歌だと思ったのでした。
この不思議の続きはこちらで。
古記録からの考察と、古記録や古典からの創作と。
『X拾遺草子』
『はなふるものがたり』
ひいき目に見られるのも困るし、どれもおもしろいので、全部感想語りたいところですが、どうかご容赦を。
参照
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