第20話『ナポレオンとメートル法』

かつて、あらゆる距離が様々な理由で今の様に一定していなかったことは広く知られていますが、今でも高い場所から見渡せる風景が、厳密には実際の高さで見えるべき風景と食い違う場合があることは、あまり知られていません。
多くは些細な誤差ですが、場所によっては測量される値と数メートルの差が出る場所があります。様々な説明が試みられましたが、原因はわかっていません。
この事実は、時に測量の技術者や土木関係者を悩ませることはありますが、これはあくまで視覚的な見え方の問題で、測量結果や図面には影響がないので、近年ではほとんど意識されなくなりました。

この事実を、再現不可能で法則のない些細で曖昧な現象として人々の意識から消してしまった原因のひとつに、メートル法の普及があります。
フランス革命の後、メートル法の利用に対しての抵抗がある中、ナポレオンは軍の砲術に関して早々にメートル法を利用していました。
元より砲術に秀で、数々の功績を建てていたナポレオンは、見えるべき風景の問題を当時の一般的な認識にくらべても、重要視していた様です。
幾何学への知識を手がかりに、神秘主義にも深い理解があったナポレオンは、メートル法を「人による最高の定義」とさえ讃えており、特に1798年のエジプト遠征以降は、厳密にメートル法を利用しての距離計測をさせていました。
多くの神秘主義者は、ナポレオンがこのエジプト遠征において何か世界の秘密に関わる知識を得ており、メートル法の徹底は、その知識から人々の注意をそらし、独占を試みたものだと考えています。

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