第1話『世界の秘密について』

人間の歴史がはじまる前から、世界の秘密に触れ、これを解明しようとする試みは、秘密の存在に気付いた人々によって様々な方法で試みられていました。
やがて、文字が使われはじめると、世界の各地で使われている様々な言語を使って秘密の記録が試みられ、文字を持つ言語を使う多くの人々によって、世界の秘密が語られる様になりました。
しかし、どの言語もついに、世界の秘密の解明に至る記述に成功することはありませんでした。
やがて、人がいろいろなものを発見し、いろいろなことを考え、研究、記録していく様になると、世界の秘密はそもそも掴みどころのないあやふやなものとして、どんどん省みられなくなっていきました。
そうなると、秘密の記録自体も徐々に失われていき、かすかに見てとられていた世界の秘密の存在を知るきっかけも、誰からも気にかけられなくなっていきます。
結果として、最初は世界中でかすかに感じられ、その本質について語られてきた世界の秘密は、言語が得た文字によって、さらに厳重に秘密として隠されていくことになったのです。
言語が文字を得たことも、世界の秘密につながる現象のひとつだと主張する人たちが居ました。今ではそれについても、あまり気にかけられなくなっています。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?