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30年の思い込み

自宅前の空き地や公園の草むらに可愛い黄色の花が群生している。

「黄色い小さい可愛い花はキツネノボタン」という思い込みで、幼少期から生きてきた。散歩のときに母が野草を見ると、名前を教えてくれた。

キツネノボタン
(「かごしま個人ボラ冬桜の猫活な日」さん提供)

よく見ると違いが分かるが、「黄色い小さい可愛い花はキツネノボタン」としか知らないと、「黄色い小さい可愛い花」はキツネノボタンとしか思わなくなる。

ところが空き地に群生している「黄色い小さい可愛い花」をGoogleレンズで検索すると、どうやらミヤコグサという花らしかった。

人間は思い込む生き物だ。僕は毎年空き地で見るこの「黄色い小さい可愛い花」をキツネノボタンだと、子どもにも言ったし仕事中に患者さんにも言ったし同僚にも得意げに言った。僕は30年もうそぶいてきたことになる。もしかしたら30年の間の何回かは、本当にキツネノボタンだったかもしれない。しかし「黄色い小さい可愛い花」という共通点しかなく、実際は多くがミヤコグサだったかもしれないし、他の類似の「黄色い小さい可愛い花」だったかもしれない。何より、「黄色い小さい可愛い花はキツネノボタン」一択の人生を歩んできたことが、大元の間違いである。

思えば、「黄色い小さい可愛い花」など他にもいっぱいある。タンポポだってそうだ。ただタンポポは明らかにキツネノボタンと違うことぐらいは僕レベルでもわかるし、タンポポはたまに「おっきくて可愛くない」やつもある。僕が対象としている「黄色い小さい可愛い花」は、「健気だなぁ」と思わず愛でてしまう、ため息の漏れるようなものであって、がっちり根を張って引っこ抜きにくい根性のキマった外来タンポポは対象ではない。

そして今、「これがミヤコグサか」と分かった僕は、思い込みの大元であったキツネノボタンよりも、完全にミヤコグサ推しに傾いている。

可愛さと健気さではミヤコグサが勝っているように感じ、これからはミヤコグサを愛でていこうと思う次第である。


因みに、最近オオイヌノフグリはあまり見かけていない。
もしかしたら僕が「オオイヌノフグリだ」と思っていたものが本当はイヌノフグリの可能性もある。あまりオオイヌノフグリの情報を流すのはやめた方がいいと思う。