【第20回】白黒ハッキリしないグレイゾーンを受け入れる
「相性の良し悪し」や「好き嫌い」は、相手が「敵か味方か」を見分ける本能がもたらす感情です。これは、人間が動物として生きていく上で欠かせない「能力」でもあります。
ところで、「相性の良し悪し」や「好き嫌い」は、どれも「二者択一の構造」となっています。両極端ですね。
このことに関して、精神科医の和田秀樹氏は、著書『感情的にならない本』で次のように述べています。
「つまり人間というものは、未成熟な間は白か黒かをはっきりさせたほうが便利なのです。楽だとか、生きやすいといってもいいでしょう。
けれどもだんだん成長して認知的にも成熟してくると、白か黒かだけでなく、その中間もあるのだとわかってきます。
毒だって少量なら薬になるとわかれば、白か黒かという区分は極端すぎるということもわかるのです。
これは『グレーゾーンを認める』ということです。たとえばある植物を見て、『これは毒にもなるし薬にもなる』と理解することです。
人間に対しても同じで、『敵か味方か』という区分ではなく、『敵でも味方でもない』と受け止めることです」
世の中には、いろいろな考え方や性格の人がいます。会社の中においても同じです。
「すべてにおいて同じ意見」という社員は、おそらくいないのではないでしょうか(それが「個性」と言ってしまえばそれまでですが……)。
でも、方向性がバラバラでは企業は成り立ちません。そこで会社は、目的を果たすために役職階層に基づく「指示命令系統」を整備します。
この環境下で「たまたま出くわしたのが相性の悪い上司(若しくは、相性の良い上司)」ととらまえてみれば、違う見方ができるかもしれません。
「白黒ハッキリさせないグレーゾーン」という考え方は、時に予想以上の効力を発揮し、心を落ち着かせてくれます。
冷静に考えると、上司の方針に従うのが組織です。いきなり感情的になって「反発する」のはもったいない話です。
責任は当然上司にあるのですから、たとえ成果が出なかったとしても、何の問題もありません。
相性が悪い上司ほどストレートに受け止めず受け流し、曖昧なグレーゾーンを「広くとる」ことで、精神衛生上「はるかに良い状態」でいられるのです。
次回につづく(毎週火曜日に投稿予定)
(本文は、弊著『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』<幻冬舎ルネッサンス新書>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)
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