見出し画像

【第1回】人事の本質は好き嫌い

上司によって評価は180度変わる 
人事の本質とは、上に行けば行くほど、その上と合う合わない、つまり、ほとんど好き嫌いです。

もし今あなたの評価が高ければ、それは、あなたの上司とうまくいっているからにほかなりません。

逆に、あなたの現在の評価が低ければ、それは、ただ単にあなたの上司との相性が良くないというだけのことです。

「そのようなことはありません。誰が評価しても、ぶれない仕組みを作って運用していますから」――そんな人事担当者の声も聞こえてきます。

実際、人事に関連する様々な制度は、環境の変化と共に日々進化しています。また、できあがった仕組みをきちっと運用するための教育や研修も、頻繁に行われています。

その努力たるや、並大抵のものではないでしょう。しかし、会社の中で不可解な現象が起きているのも事実です。

以前働いていた会社での出来事です。となりの部署に、新しい部長が着任することになりました。すると、その部署で働く中堅の社員がやってきて、

「今度くる部長、実は前にいた部門の上司だったんだ。それで僕は、ここに飛ばされてきたわけ。だから、今度も、間違いなくどこかに飛ばされると思うんだ」

「いくら何でも、すぐに異動することはないでしょ」周囲の者は、皆そう思いました。

ところが、予言は見事に的中し、何と半年足らずで、今度は、立地的にもかなり離れた部門に転勤していったのです。

その中堅社員は、他のメンバーと比較して、特に仕事上問題があったわけでもなく、協調性に欠けるといったこともなく、ごく普通に、日々の仕事をこなしていた社員です。それが、昔の上司に変わったとたん、また飛ばされることになったのです。

今度は、後輩が転勤することになった時の話です。彼は、与えられた業務を計画的にきちっとこなす、いわゆる仕事のできる社員でした。しかし、上司の評判は芳しくなく、ことあるごとに呼ばれては、説教を受けていました。

今でいう、パワハラみたいなものでしょうか。席に戻った時の、「何で僕だけこんな目に遭うんだろう」と言いたげな、悔しさに満ちた表情はよく覚えています。

その後輩が他部門へ異動して間もなく、本人と話す機会があったので、新天地での近況を聞いてみました。すると、返ってきた言葉は、

「今度の職場には、とても満足しています」
そこで、もう少し詳しく聞いてみると、

「新しい上司は、指示も明確で、やるべきことがはっきりしていて、仕事がしやすいんです。それに、特別なことがない限り、定時で帰れるし、何といっても、あの無意味な残業がないんですよ」と、言います。

裏返すと、前の上司の指示は、どこか曖昧で、業務の範囲が定まっておらず、おまけに、付き合い残業も多かったということでしょうか。同じ職場での経験から、このコメントはおおむね的を射ていたので、妙に納得してしまいました。

その後輩の新しい上司も、実はよく知っている方でしたので、後日会話する機会があった際に、彼の評判を聞いてみました。すると、その上司いわく、

「いやあ、彼はとても優秀で、仕事も良くできるので、彼が来てくれて、本当に助かっているんですよ」

新しい職場での後輩の評価は、前とは違ってとても良いものになっていました。まさに「正反対」とは、このことです。

もうひとつ、今度は、私が会社で、マネージャーとして仕事をしていた時のことです。新しい上司に代わってしばらくしてから、ミーティングをすることになりました。

「前の上司からの引き継ぎによると、あなたの評価は極めて悪く、とにかく気をつけるように、とのことだったのですが、一緒に仕事をしてみると、どうしてもそのようには思えない。むしろその逆です。大いに期待していますよ」

前の上司の良からぬ評価は、何となく予測していたのですが、無事ご破算となりました(もし部下側に明らかな落ち度があれば、反省して改善するのは当然で、これから話を進めていく上での「大前提」となります。)

改めて思い返すと、いい仕事ができた時の上司との関係は極めて良好でした。加えて、間違いなく良い評価をしてもらっていました。以前仕事でお会いした方からも、こんな話を聞いたことがあります。

「そういえば、気持ち良く仕事ができた時の上司は、皆いい上司でした。本当にうまくいっていたし、昇格して昇給したのも、そういう時でした。上司に恵まれていた、と言うべきなのでしょうか」 
                     次回につづく

(本文は、弊著『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』<幻冬舎ルネッサンス新書>より一部抜粋編集し、
シリーズ化したものです)


この記事が参加している募集

仕事について話そう

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

サポート頂けましたら、新たな書籍の制作費として使わせて頂きます。よろしくお願い致します。