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2019年 94冊目『他者と働く』

以前対談や記事でご一緒した宇田川 元一さんの著書です。

献本いただきました。

とても良い本です。

中尾塾の塾生2名も絶賛していました。

TTPS勉強会にお呼びできれば、素敵な場になるのではと思います。

偶然、『なぜ弱みを見せあえる組織が強いのか』のキーガン教授の話を先日伺う機会があり、

池田清彦教授の『正しく生きるとはどういうことか』を前後で読む機会があり

話がつながりました。

『他者と働く』は

サブタイトルで、「わかりあえなさ」から始める組織論とあります

この本は「対話(dialogue)」がテーマの本です。

既存の問題で解決できる「技術的問題:technical problem」ではなく

複雑で困難な問題「適応課題: adaptive challenge」を解くのに有効な手法です。

適応課題は、他者との協働が必要で、いかに論理的に説明しても、解決しない問題です。

数年前のクラウド導入時の、リスクがあるなどはまさにその典型例ですね

対話とは、新しい関係性を構築することです

その前提として、お互いに同じ前提に立っていると思うのではなく、分かりあえていないことを認めることから始める重要性を説いています

これらを事例と理論で分かりやすく説明してくれます。

適応課題の典型的な4つの例があります。

・ギャップ型:価値観と実際の行動にギャップが生じる

・対立型:互いのコミットメントが対立する

・抑圧型:言いにくいことを言わない

・回避型:痛みや恐れを伴う本質的な問題を回避するために、逃げたり別の行動にすり替える

事例としては

スターバックスの経営危機時のコスト削減が行き過ぎて、顧客との関係を潰してしまった話が挙げられています。

シュルツは、立ち止まり、顧客と関係を「私とそれ」を「私とあなた」に戻します

人にはそれぞれのナラティブがあるという前提にたっています。

ナラティブ(narrative)とは、物語、その語りを産み出す「解釈の枠組み」を指します。

専門性や職業倫理、組織文化などに基づいた解釈のことです。

相手との関係性を考える際に、自分の硬直したナラティブを変えることで、相手のナラティブを理解しようとする姿勢が重要だとあります。

2つのナラティブの溝に橋をかけるための4つのプロセスは

1準備:溝に気づく

2観察:溝の無効を眺める

3解釈:溝を渡り橋を設計する→よい相棒がいると良い

4介入:溝に橋を架ける

理屈だけではなく、実践例が載っているのもこの本の良い所です

・総論賛成・各論反対:新規事業と既存事業の見えない対立

・正論の届かない溝:良い提案を受入れない上司

・権力が生み出す溝:現場と経営をつなぐパイプのつまり

対話を阻害する5つの罠

1迎合

2押し付け

3なれ合い

4孤立

5徒労感

ナラティブアプローチは仕事の場面以外でも活用できます

家族間の事例が善く分かります

やっていることに対して、「代わりに」というのをやめて「加えて」としたら関係性が改善した

参考になります

冒頭に池田清彦先生の本を挙げたのは

正しく生きる際に、「自分の規範」と「相手の規範」を統合する事が挙げられています。

この規範こそ、本書で書かれている「ナラティブ」にあたるものであると理解しました。

またキーガンの発達段階でいうと

複雑な問題を統合する第4段階と、それを他者との関係性の中で統合する第5段階の話だなと感じました。

また、私自身との関係性でいうと溝に橋をかける4つの方法と類似の手法をとって課題解決をします。

これは私と最近一緒に仕事をしている方々はご存知だと思います。

私は3つのステップで実施します。

1現状把握

2解釈

3介入

です。

本書では最初が準備・観察となり、最後の2つの解釈、介入は同じです。

私の1つめの現状把握は、準備・観察にあたるのですが、その対象を関係者の真ん中に置くイメージなのです。

現状把握は、できる限りフラットにします。

その際には解釈はしません。

多方面から見ることをします。

私の立場、相手の立場、様々なステークホルダーの立場から現状把握をします。

多方面から観察をするというニュアンスです。

「観察」という言葉のイメージで勘違いする人がいるのではと危惧します。

それは、観察者と被観察者という言葉のように、私が、相手を観察するという誤解です。

私の現状把握は、状態を現状把握するわけで、相手を観察するわけではないのです。

まー、細かい差ですね。

私としては、類似の方法で適応課題を解決する仲間がいて、嬉しいなって思いました。

かなりお薦めです。

▼昨日のブックレビューはこちら


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