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2016年 79冊目『グローバル・コーポレートガバナンス 日本経済新聞出版社』

※以下の内容は、2016年にFBに投稿されたものです。

仕事で「コーポレートガバナンス・コード」と「スチュワードシップ・コード」を調べたくて手に取りました。

各章でメモしたポイントを残しておきます


序章:ガバナンスは企業を救う

・現在世界最高の企業価値のアップルは、96年PC市場シェアは4%とひん死の状態。スカリーの後任でCEOになったマイケル・スピンドラーは、サン、IBM、HPなどへの売却を検討したが失敗。96年にギル・アメリオに交代。10億円ドルの赤字になり70ドルの株価は14ドルに低迷。株主からの不満と社外取締役であったエド・ウーラードの働きかけでスティーブ・ジョブスが復権した。その後の成功は言うまでも無い。この復権に大きな影響を及ぼしたのが、株主と社外取締役であった。

・不正会計の東芝で、人事を主導したのは、小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長、池田弘一・アサヒグループホールディングス相談役、前田新造・資生堂相談役であった。

1章:改革と迷走の分かれ目


・公明正大な社長選考プロセスは成功を保証するものではない。7&iの社長人事によって、今後の株価や業績がどうなるか分からない。企業経営にとって新しいものが効果的で、古いものが無効であるとは限らない。

・日本版スチュワードシップコードのポイント(責任ある機関投資家の諸原則)
①明確な方針を策定し公表する
②利益相反について明確な方針を策定し公表する
③投資先企業の持続的成長に向けて、企業の状況を的確に把握する
④投資先企業と建設的な「目的を持った対話」によって問題の改善に努める
⑤議決権の行使と行使結果の公表について方針を持つ。企業の持続的成長に資するように工夫する。
⑥スチュワードシップ責任をどのように果たしているのか定期的に報告する
⑦上記を適切に行うための実力を備える

・第一生命保険の例
①社外取締役の取締役会への出席率が半分に満たない場合は、再任に反対
②在任12年超の監査役の再任に反対
③長期業績不振の経営トップの再任反対の可能性
④配当余力があるのに株主還元率が低い場合、剰余金処分案に反対の可能性
・14年株主総会で2206社に対して、1件でも会社提案に反対があったのは302社

・コーポレートガバナンス・コードが上場企業に求める5大原則
①株主の権利・平等性の確保:少数株主や外国人株主については、権利の確保、行使に十分配慮
②株主以外のステークホルダーとの適切な協働:従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会
③適切な情報開示と透明性の確保:財務情報、経営戦略・課題、リスク、ガバナンスなど非財務情報の適切な開示
④取締役会等の責務:持続的成長と企業価値向上、収益力・資本効率等の改善
⑤株主との対話:株主総会以外においても、株主と建設的な対話を行う

・7&iの人事騒動はガバナンス改革の縮図

・05年ごろのコーポレートガバナンスは不祥事防止に主眼。現在は企業価値向上(外部から知恵)

・株主還元額 11年8.2兆円→14年13.1兆円、ROE 11年4.6%→14年8.1%

・株の持ち合い ピーク90年51.1%→10年20%→15年15.8%

・住友倉庫 ROE4.8%→向上、株主還元額向上を説明、翌日株価上昇9.8%

・オムロン ROIC(投資資本利益率)向上戦略→上場来高値(5900円)

・MS-ジャパン・コーポレートガバナンス・スコア①取締役の平均在任期間5.5年

・専門性を有する取締役30%

・会長は元社長ではない

・社長の報酬の50%が業績連動など20項目

・トヨタのAA株式(5年間の譲渡制限、配当は徐々に引き上げ、議決権有)→海外投資家から疑問

・東芝の不正会計:東芝は形式上委員会設置会社への移行も早く、コーポレートガバナンス優等生と考えられていた

2章:先駆者たち


・日本ではコーポレートガバナンスは安倍政権で急に注目されるようになったが、その起源は17世紀に東インド会社にある。

・日経新聞データベースでは1991年5月13日が初出。経済教室で一橋大学竹内弘高教授が「企業、世界の市民権獲得を」で使った。

・竹内論文は、ブーン・ピケンズと言う米国人株主がトヨタ系列の小糸製作所の筆頭株主になり同社と2年以上攻防したのがきっかけ。

・1992年(損失補てんをしていた)野村証券、大和証券にカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)から社外取締役選任の要望が来た。

・1997年(簿外処理をしていた)山一證券が自主廃業。

・1992年ボブ・モンクス氏がシアーズ・ローバックに対して意見広告:経営戦略のミスが企業価値を棄損。取締役会議長とCEOの分割、不稼働資産(現在の取締役)を売り払え!

・1994年舞浜会議(財界人が日本の経営の是非を議論)今井=宮内論争:新日鉄今井社長は国内雇用を守るvsオリックス宮内会長は資本リターンの極大化

・1998年村上ファンド:現ヒューリックへ敵対的TOB,東京スタイルとの委任状争奪戦、阪神タイガースの上場提案など

・2001年ICGN東京総会(international Corporate Governance Network) :この時から日本企業の課題は分かっていた

3章:アクティビズムの咆哮


・2016年4月28日米著名投資家のカール・アイカーン氏が「アップル株を手放した」→3%下落

・2013年MSのCEOバルマー氏退任表明。その裏にバリューアクト社の影響がある。後任のサトヤ・ナデラ選任にも影響を及ぼした。

・2015年12月ダウ・ケミカルとデュポンが経営統合を発表した。これを推進したのがトライアン・パートナズのネルソン・ペルツ氏【再生実績多数)

・アクティビスト型ヘッジファンドは08年320億ドル→14年1200億ドル(運用成績良好、他機関投資家とも協調)

・ファナック相場:サードポイントの自社株買いに対応し、初めてIR部署を設立し、利益の8割を配当と自社株買いに応じる!

・2015年4月ブラックロック(世界最大の運用会社)の創業CEOのローレンス

・フィンク氏は、世界に広がる短期主義の風潮に懸念。
 「余っている現金は株主に還元されるべきだが、価値創造につながる投資が犠牲になってはいけない」
 「環境:Environment 社会:Social 統治:Governance は実質的かつ定量化された影響を企業財務にもたらす」

・2016年1-3月期のアクティビストファンドの運用成績は市場平均を下回り、資産も流出しだしている

・アメリカはエリサレターやエイボンレターなど拘束力の強いハードロー(法律)。イギリスはコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ

・コードなどソフトロー(自主ルールや取決め)。

・英国のキャドバリー報告も「順守か説明か」と言うスタンス Comply or Explain

4章:ガバナンスの新地平

・米英の市場は株主の行き過ぎた短期主義(Short Termism)の是正が叫ばれ、日本は規律を欠いた長期指向(Long Termism)の経営修正が必要。

・世界の新たな潮流は「環境:Environment 社会:Social 統治:Governance」。コーポレートガバナンス・コードでもこれが言及されている。

・国連も動き、各国の投資家に国連責任投資原則への署名を求め、1400の運用期間が署名。日本でもGRIPが署名。
 ①投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込む
 ②株式の所有方針と株式の所有慣習にESG問題を組み入れる
 ③投資対象にESGの課題について適切な開示を求める
 ④資産運用業界に本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかける
 ⑤本原則を実行する際の効果を高めるために協働する
 ⑥本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する

・米加中心にESG投資が大きく伸びている。日本でもその傾向がある。ニッセイアセットマネジメントがいち早く取り組んでいる。

・2015年の味の素の投資家説明会はESGに特化している。

・2007年から英小売大手マークス&スペンサーはプランAとして業績・財務の目標と従業員のトレーニング、健全なサプライチェーンの維持など100項目の包括的な目標を設定。

・米英の大手企業30社でROEを目標にする企業は皆無。掲げる指標は様々。

・ヤクルト:グローバル乳本数、オリエンタルランド:高満足度入場者数など

・統合報告書が広がっている:経営戦略から社会貢献までを1冊にまとめて報告書。

・ペイガバナンス(取締役の報酬:特にインセンティブの割合)、取締役会の評価なども重要

5章:アジアという視座


・1997年のアジア危機でコーポレートガバナンスと言う考え方が意識された。
・透明度向上のツールがコーポレートガバナンス。
・日本もバブル崩壊後に欧米企業に求められたが、それと同じ構造。
・香港、シンガポールの評価が高く、次いで日本、タイ、マレーシア。中国、フィリピン、インドネシアの評価が低い。
・韓国のアクティビスト・ファンド ゼブラ・インベストメント・マネジメント(ZIM)


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