見出し画像

いつも通りのある日のこと

おんがく.1

日常/星野源

音楽大好き星野源。
ドラマに映画に歌にエッセイと大活躍、世の男どもが「全然イケメンじゃねぇじゃん」と騒いでたのもいまは昔。皆の永遠のアイドル・ガッキーと仲良くめでたしめでたし。

「あいつ暗くて、飲みに行っても全然喋んなかったよ」「でも女にはもててた」と、売れる前の星野源を知る先輩は云う。どう考えても根暗じゃんか。小学生時代にトイレ(だい)を漏らしていじめられていたというエピソードは自身で語っており、有名な話だ。自己形成段階での集団環境下において、複数人に拒まれ見下され馬鹿にされるという経験は、認知を歪ませる十分な要素だ。自己肯定を困難にする。人によってはずっと困難なままだろう。比較的困難な思考のアレコレを経て、幾度も、躓き幾度も立ち上がった者は、自身の歪みを認知しては、その後もぶつかるアレコレの度、軌道修正をする能力が高い。
くも膜下出血で倒れ、死の淵より再起。その辺りから表情が変わった気がした。病室で書き上げたという曲「地獄でなぜ悪い」は屈指の名曲だ。私も入院中、のち、何度も聴いた。全力歯ぎしりレッツゴ〜。ただ地獄を進む者が悲しい記憶に勝つ、いまもそう信じている。
「地獄でなぜ悪い」の次のシングルがかの有名な「恋」だ。地獄を進み、手に入れた恋。嗚呼、幸あれ。

星野源を特別大好きなわけではないが、いちばん好きな曲は「くせのうた」。生きづらい世の中を、汚い自分を、地獄のような日々を、確かに見て、聞いて、書いて、歌って、そんな人が綺麗事を謳う。私は其れが好きだ。

コロナ禍で一体どれだけの人が在ったはずの「日常」を嘆いたろう。かつての「日常」に思いを募らせたろう。そんなものは幻だ、と大きな声で叫びたかった。それでもどこかで恋しく思うのは何故だろう、抱いたことのない『日常』をーー。

『無駄なことだと思いながらも それでもやるのよ』
そう思う。

2022.11.29

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?