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2011、2021



クリスマス、どんカフェありがとうございました!
結婚して出産したことや、夫が誰なのかを公表して初めてのイベントだったのだけど、過去に応援してくれていた人がみんなみんな来てくれて嬉しくて泣いちゃうクリスマスでした。
みんなのおかげで家族で猫カフェに遊びに行くことができました。ありがとう。

生きてたらこういうことってあるから、

帰り際に何気なく言われたけれど、そうだね、生きてさえいればまた会える。これを実感するばかりの2021年だった。





2011年、わたしたちは恐怖を知った。その年わたしを支えていたのはcokiyuさんの音楽だった。cokiyuさんの音楽がなければわたしは2011年を越えられなかったかもしれない。
そのcokiyuさんが今年、10年ぶりにEPをリリースされた。久しぶりに「音楽」と会えた気がした。

音楽をはじめとする芸術やエンターテイメントは娯楽であって、人の好みが左右するところだから、わたしの個人的な思いを押し付けたりはしない。だけど話しておきたいのは、cokiyuさんの音楽はわたしの中で唯一無二の存在だということ。それはもしかしたら、あの2011年を超えたからなのかもしれないけれど、きっと災害がなかったとしても、心に残る名盤になっていたと思う。誰の心にも、触れられたくない場所がある。普段は見つからないように蓋をしているけれど、ひとり扉を開ければ、傷ついた心を受け止めてくれる。音楽から離れても長い間そうやってわたしの人生を歩かせてくれていたのがcokiyuさんの音楽だった。




10年前。技術も実力もない、音楽を作ることが楽しくて、なによりも好きだった。だから必死につながりを作ってなんとか仕事にした。それがきっかけで制作屋がソロになり、バンドになり、地下アイドルになった。とにかく何をやってでも売れたかったのは、その先に自分の創作の未来が待っているからだと思っていた。
(魂でも実体でも、売れるものはなんでも売ったけど、悪魔にも天使にも神様にも出会わなかった。アイドル業界も、バンド界隈も、そこにはただ、沢山の人が生きていた。)

アイドルを続けるうちに自分のやりたいこと、やれること、求められることが変わってきて、そして何年かして今やっとまた音楽を作ることが具体的になってきた。生産性のない日々も、「いつか作れる日が来る」、そう思うことで毎日をなんとか乗り切っていた。その「いつか」がどれだけ遠い場所にあるのか考えることは怖く、口にすることは恥ずかしく、過去に浴びたステージの光の幾つかも霞むようだった。

ライブだけでなく、SNSからも離れ、過去に応援してくれていた人がわたしを忘れてからそれなりの時間がたって、君が、わたしを忘れたことも寂しくなくなった。それはたぶん、また書くことを覚えたからだと思う。

書くことを再開したのには理由がある。今年に入って、縁があり、作詞の仕事をいただいた。それがきっかけでまた少しずつ文章や詩を書いてはどこかに投稿することが生きがいになった。次は音楽、そう思う頃、今回のどんカフェに誘われた。

10年前のわたしはアイドルはおろか、バンドすらしていなかった。自作のエレクトロニカに自作の詩を朗読するというヘンテコなスタイルで小さなライブハウスで下手くそな音楽をやっていた。お客さんは友達を抜いたら1人か2人だった。それでも楽しかった、けど、どうしても売れたかった。何をしてでもいいから、一度人前に立つことで生計を立ててみたかった。アイドルをやったのはタイミングが合い、そして当時の環境と性格が合ったからだと思う。

アイドルを辞める時に「シンガーソングライターとして活動する」という理由をつけてもらった。今更「シンガーソングライター」という肩書きは恥ずかしい。元いた場所に戻るだけだけれど、たとえ子供を育てていなくても今そこにいるとは思えない。それくらい、アイドルをしていた約3年間はわたしを変えてしまった。

音楽に触れられなかったのは、変わってしまったわたしが、過去の自分に触れるのが怖かったからなのかもしれない。
わたしが身も心も悪魔に渡し、死にそうになりながら手に入れたものも、手の中に残るのは思い出ばかりで。言い訳にしかならなくても、これがわたしの人生なのかと嘆いてはアイドルをしなかったら、というifの世界でのわたしを夢見る。それはきっと小さいライブハウスで歌っていたあの頃のまま、一度でもあのステージを経験してしまったらifの世界のほうがよかったなんて、言えないよ。

その葛藤の中ずっと、わたしにとって特別な音楽だった。思い出とも支えとも違う、完結された作品なのに変化していく、季節や時間によって見え方の違う遠くの星の光。音楽を聴きたかったけど聴けなかった、助けてほしかった数年間の中でも空のヘッドフォンは鳴っていた。

cokiyuさんが10年ぶりにリリースされる、というのはファンとして嬉しく、そして楽曲だけでなくその事実がわたしの人生を勇気づけた。
比べるなんて滅相もないけれど、わたしもいつかまた歌ったり作ったりできるんだと思った。
cokiyuさん、改めて、リリースおめでとうございます。新しい音楽を聴けたこと、とても嬉しかったです。



生きていれば、また会える。

わたしももっと作品を届けられるようになりたい。でも作品を作ることで埋められる心と、人との関わりで満たされる心は違う。(今ならbarP.Rをオープンしたあの子の気持ちがわかる気がする。)

わたしが本当の意味でアイドル業を辞めて、4年が経った。そのあとはほとんどが空白の時間だった。何かを続けていたとしても、イベントをすることはなかった。今回会えた人に、次いつ会えるかわからない。昔の活動から会わなくなった人の方が多い。でも、細くとも続けていれば。(今回、わたしのソロから含め人生ではじめてのお客さまもカフェに来てくれてすごく嬉しかった)

今の生活、今の制作ペースに慣れるのに5年かかった。これからまた作る人に戻りたい。生きていればその日に出会えるかもしれない。

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