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仕事をする上で大切なこと−「信頼」について考える−

先日、ある人事系のセミナーに参加をした。
その中で「仕事をする上で大切なことは?」という問いがあり、パネリストの一人が「信頼」と回答された。

「信頼」・・・信じて頼ること

(広辞苑)

信頼を成り立たせるためには自己と他者の両面がある。
自分が他者を信頼すること。他者に自分が信頼されること。「信頼」は自己依存的でもあり他者依存的でもある

一方、「評価」は他者依存的である
「上司が部下を評価する」、「監督が選手を評価する」。上下感が強いのが「評価」であり、評価をされる人は他者の評価基準により行動が制限される。

少し話が変わるが、自尊感情には2つの種類があると言われている。

本当の自尊感情:
「外的な出来事によらず、自分らしく存在することで感じられる」
随伴性自尊感情:
「自己の価値を外的な出来事によって成り立たせる」

どちらが良くてどちらが悪いという話ではなく、どちらかだけが存在する状態も恐らく存在しない。
ただ、随伴性自尊感情に寄り過ぎると、ある日突然、自己が保てなくなる可能性がある。

ワークプレイスでは、調子がいいときの勢いは誰にも止められない人がいる。しかし、いったん調子が悪くなったときには、見る影もない人がいる。この前、あんなに調子が良さそうだったのに、今はどうしてしまったのだろうか、という人である。
このような人は、いままで「浮き沈みの激しい、扱いにくい人」であったかもしれないが、その本質は、本当の自尊感情の低さと随伴性自尊感情の高さによって理論的に解釈することができる。

鈴木智之(2023)「ワークプレイス・パーソナリティ論」

要するに、評価をする人からの評価により、自尊感情が左右されるのである。
よく言われる「他者に依存しない」、「自分らしく生きる」という考え方は、随伴性自尊感情に過剰に依存する危うさから来ているのではないかと思う。

話を戻すと「信頼」とは自己依存的でもあり他者依存的でもある。
ただし、「信頼」は極めて主観的であり、「信頼」を期待するとそれは「信頼」ではなくなる。恐らく、「信頼」を対価として求めると似て非なるものである「評価」にすり替わるのである。

では、「信頼」をどう築くのか?
パネリストの方の回答は、「当たり前のことをちゃんとやる」であった。遅刻をしない、頼まれた事をやりきる。このような積み重ねが「信頼」を形成し成り立たせるのである。
「平凡」であり「非凡」でもある回答だが、自分に矢印が向いているのが「信頼」であり、自己の行動により形成して(されて)いくものである。
そして、「信頼」は一瞬で崩れるものでもあり、永続的でもある。

パネリストの方が自身を内省するために推奨されている問いがあった。

「自分が誰にどの程度信頼されているのか?」

主観的な問いであり、この問いに答えはない。
ただ、この問いを考える事が仕事をする上で大切なことなのだと思う

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