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一円と一円のモノは同じじゃない【M&A日記】

時価100万円の不動産と現金100万円は同じだろうか。

同じという人と同じじゃないという人がいる。
どちらが正解ということではなく、人によって捉え方が異なるということ。

M&Aでは、とても大きな金額を扱うことになるので、売主や買主がこれをどのように解釈しているかを理解しておくことは大事。

例えば株式を1億円で譲渡したとする。
税率は20%、その他控除できるものが無いとすると、手残りは8000万円になる。
売主は、対象会社で時価1000万円の自宅を所有していたので、M&A後にその自宅を時価で買い戻すという話になった。
便宜的に税金は無視すると、8000万円の手残り現金から1000万円を支払って、時価1000万円の不動産を購入するということになる。

元々は現金8000万円だったが、それが現金7000万円と不動産1000万円に変わる。
算数的な話をすれば、売主の資産額は変わっていないので、前後の状態は同じ。

しかし、現実的な取引を色々と想定すると、両社は同じではないとすることもできる。

家を買い取ったものの、やっぱり新しい家に買い替えるということになったとして、この1000万円の不動産はいくらで売れるか。
現実的には上振れたり、下振れたりするはず。
売買は相対取引なので、交渉力によっても金額は変わる。
仮に時価通り1000万円で売れたとしても、3%の仲介手数料が発生するし、多少手続きにかかる費用もあるだろう。
なので、時価1000万円の不動産でも実際に売れる金額や手数料などを考えると、現金化したときに同じ1000万円となる可能性は低い。

それは必ずしも減るということではなく、うまくいけば増える可能性もある。
なんせ、不動産1000万円と現金1000万円は同じではないということ。

仮にそういうのを全部含めて、奇跡的にピッタリ1000万円になったとする。
これなら同じかというと、売却するまでにかかった労力があるはず。
この労力を考えれば、現金1000万円とはやはり違うとも言える。

譲渡後に会社で購入していた個人利用の資産などを売買するとかいうことはよくあること。
その際に、資産額で言えば同じなんだから同じじゃん、という前提で話をしてしまうと、経営者によっては、「いやそれは全然違う」という反応をされることもある。

認識の齟齬などによって後々問題を引き起こさないためにも、お客様がどう考えるのかを認識しておくことはとても大事だ。


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