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ドラマのような会社乗っ取りはできるのか【M&A日記】

自身が100%株主である会社にて、役員の造反によって会社分割が取締役会で決議され、主要な事業を乗っ取られそうになった、という話を聞いた。

結果としては弁護士にも入ってもらって2,3ヶ月で問題は解決したとのこと。

果たしてそんなことは本当にできるのだろうか。

私自身、そういうことに関わったことはもちろんないので細かいことは分からない。
ただ、恐らく法的に可能かどうかということと、それを考慮せずに実態として進んでしまう違いがあるのだと思う。

不動産で言えば地面師と呼ばれる詐欺師が、他人に成りすまして不動産を勝手に売買してしまうということがある。
詐欺なので手続き的には問題があるが、売買手続きが実態として進んでしまったときに、それをもとに戻すのには相応の大変さがある。

私が聞いた冒頭の話も実態として契約締結などがなされてしまっていたため、とても大変だったということだと思うが、果たして正規の手続きで会社の乗っ取りができたのか?と考えると、結論としては、そんなことはできない、となる。

まず、対象会社は被害者であるオーナーが100%株主だった。
会社分割を行うのであれば、株主総会による決議が必要で、ということはオーナーの意向なくしてそれは決議されない。
なのでこの時点でもう出来ない。

取締役会で決議したということだったが、それでは足りない。

株主総会を省略できる簡易分割というものもある。
それは分割する資産額が総資産の20%以下の場合となるため、本件事例では主力事業の分割ということなので、恐らく対象外。

会社分割には債権者保護手続きも必要だ。
債権者は対象会社の事業を当てにしているので、主力事業が切り離されて、対象会社による債務履行の見通しが立たなくなるのは困る。
なので、官報公告などの債権者保護手続きが必要で、これも実行されていなければ手続きに問題がある。

ということなので、これらの必要手続きがなされていないことを根拠に、恐らく弁護士によって会社分割無効を訴えて原状回復したものと思われる。

会社にとって重要な事項は株主総会による決議が必要となることが多い。
普通決議事項であれば、議決権の過半数以上の賛成。
更に会社にとって重要な事項、即ち今回の会社分割などは特別決議事項であり、議決権の3分の2以上の賛成が必要。

なので、株主が実態としてはとても大きな力を持っていて(オーナーなので当たり前)、そこを無視して会社を乗っ取ろうというのは、現実世界ではできない!

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