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ビジュアル系ホルモン肉盛りやってみた!

ホルモンが大好きです。
脂がジュワーっとあふれて、いいにおいがして…
そんな当たり前のことが言いたいんじゃない!

まずは人生のリミッターが完全に外れた、
私の「創作ホルモン」を見てもらおうじゃないか!

ホルモンの美学

ホルモンって、どうしてこんなに美しいのだろう?
いろんな色がある。
ピンク・肌色・赤。
同じピンクでも少しずつ違う。
内臓肉の赤は、赤身肉の赤ともまた違う。
料理しようと普通に材料を切って揃えている時でさえ、ハッとしてしまう。
これが、私がホルモンの肉盛りづくりに夢中になっている理由だ。

思わず、ホルモンポエムで陶酔してしまったが、一般家庭の台所で、色とりどりの内臓肉、まず切らないよねって話。

こんなことに至るまでの、歴史を振り返ってみよう。

ただ、生肉がカッコよかった

私はホルモンが大好きで、毎週のようにホルモン屋さんに通い続けていた。
ある日、炭火七輪のホルモン屋さんで、生肉が出てきたときに思わず「おいしそう!」と叫んでしまうと、店員さんが「焼いたらもっとおいしいですよ!」と返してきたのだ。それを一緒にいた友人が大爆笑し、いまでもネタにされ続けている。

焼いたらもっとうまいのは、もちろん私も知っている。
君達には、この生肉のファンタジーがわからないのか…!?

こうなったら、私も家でホルモンを切ってみよう!

そこから肉屋さん探しが始まった。
まずは、思いつくまま東上野のコリアンタウンの肉屋さんに行ってみるが、ホルモン屋さんで出てくるようなマニアックな部位までは売っていない。

いいことを考えた。
ホルモン屋さんに納品に来たトラックを調べよう。

その後、ホルモン屋さんの厨房を覗き見したり、納品の車待ちをして肉屋さんのトラックを追いかけてみた。そんなあやしい行為を続けていくと、なぜか、網の洗浄会社にまで詳しくなったり、通っていたホルモン街にある焼肉屋さんは、網のレンタル会社や、肉の仕入先が大体一緒だということまで知ってしまった。

そんな余計な情報に困惑しながらも、さらにひらめいた。現在の品川食肉市場に統合される前の屠場跡地を調べるのだ!

「食のルーツがある土地には、必ずうまいものがあるの法則」だ!

そしてあらゆる奇行の果てに、
ついに理想の内臓肉専門店にたどり着いたのだった。

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ここは、飲食店とも取引が多い内臓肉専門店だ。焼肉・もつ焼き屋さんさながらの希少部位がいくらでも手に入る!そして、いつかホルモン屋さんで見た肉のビジュアルと、切り方を真似しながら、ついに完成したのがこの肉盛りだ。

『自作ホルモン。ミノ(牛第一胃)、ハツモト(牛大動脈)、豚チレ(脾臓)、ギアラ(牛第四胃)。自分史上最強の4種盛りが完成!特に今日は超新鮮なギアラ入手できた!お店に匹敵する自信作!』

すごいものができた…
いろいろな質感で、いろいろな色がある…
これが… ホルモンなのか…?

ホルモンって、なんかカッコイイぞ…!!

ひたすらマニアックな部位を盛ろう!

内臓肉専門店には、私がよく食べていた大好物の「豚の喉なんこつ」が売っている。しかし、オリジナルは意味のわからないグロテスクな一本の肉。

無心で切って解体して、部位ごとに分ける。
それぞれが、いつかどこかの店で見たメニューになった。

このフルコースは、その辺の焼肉屋さんでは絶対出てこないはずだ。
豚の喉周辺部位を全部解体して肉盛る人は、そういないだろう。

これが私のホルモン愛だ!!

本気の肉盛り

こうなったら、もっとすごい肉盛りをやってみよう!
そういえば、総理大臣も並んだといわれる「伝説のホルモン店」で、芸術的なホルモン肉盛りを見たことがある!それを超えるのだ…!!

これぞ究極の焼肉大会!左から、①チレ(豚脾臓)、②豚のどナンコツ(喉気管)、③豚ハツモト(動脈)、④センマイ(牛第三胃)、⑤ギアラ(牛第四胃)。右側2列ともギアラですが、表裏2列で配色を変えて、ビジュアルにこだわっています。

最初は、牛の第一胃袋から第四胃袋までを、ロイヤルストレートフラッシュ的に並べる予定だったが、入荷の都合で叶わなかった。とりあえず、店にあるもので、自分の好きな肉を選んでみたら、結果的に予定以上の作品が完成したのだ…!

はじめての大作に、4時間もかかってしまった。
それぞれの内臓肉をバラしたり、下処理をするなど、思っていた以上の大作業だ。焼肉屋さんは、毎日この作業をやっているとは、本当に尊敬しかない。

この時の作業風景

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一番難関だったのが「センマイ(牛第三胃)」の処理だ。
いままで、お店で食べる細切りのものしか見たことがなかったが、そのオリジナルは想像を超えていた。センマイという名のごとく、ビラビラしたヒダがたくさんついている大きな物体だ。雑誌、いや、真っ黒な新聞と表現してもいいくらいだ。

まるでタウンページをめくるかのように、一枚一枚切り離していく。何よりも、独特のにおいで、激しい頭痛に襲われた。

意識がもうろうとしながら、思い出していた。
当時、勉強のために、食肉市場にもよく通っていたが、そこはドラクエの街のようになっていて、門を入ると、食堂・道具屋・薬屋・包丁屋などと、プレハブ小屋が並んでいる。そこに薬屋があったことに妙に納得したのだ。いまの私なら、すぐに薬屋に駆け込んで、頭痛薬を手に入れるだろう。

(その後、食肉市場の内部に潜入できた人の話を聞いてみると、中は自動車工場のように無機質な空間で、においなど何もしなかったそうだ。私もいつか潜入して、この鼻で確かめたい)。

縄文式土器ホルモン

私のホルモン肉盛りは独学だ。行きつけの焼肉屋さんの盛り付けを見て技を習得する。あるとき芸術的なハラミ1本焼きを出していたので、真似してみた。

一本の豚ハラミに切り込みを入れてクルクルと巻くとあら不思議!

それも合わせて肉盛ってみたら、こうなった。

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上から、ハラミ(横隔膜)、のど笛(喉頭蓋)、のどナンコツ(喉気管)、ハツモト(動脈)、チレ(脾臓)、コメカミ。全部豚の内臓です。

「縄文式土器みたい!!」

これを見た肉友は、とても感動していた。
だから『縄文式土器ホルモン』と名付けよう。
そしていつか出土されたい。

食肉の歴史をたどると、人類は縄文時代から動物の内臓を食べていたそうだ。内臓肉はビタミン・ミネラルが豊富。縄文人の食事は栄養学的にも優れていたのだ。きっとホルモン好きには縄文魂が眠っているに違いない!!

そこから調子に乗り出した

調子に乗り出した私は、本来の肉盛り魂を忘れて、なぜか芸術系ホルモンに走り出した。これは、毎年6月に訪れる満月、ストロベリームーンの日に作成したもの。

今夜は、年に1度の満月「ストロベリームーン」の日。恋を叶える月とも言われている。そこで得意の豚喉ナンコツを使い「恋する豚ナンコツムーン」を作ったよ。夜空の星はピンクソルト。ロマンチックでしょ? 意味不明でもいい。ホルモンマニアの謎メニュー。喰らえ!愛の天体ショー!

マルチョウは、ただハートにするだけでもアートになった。

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もはや、マルチョウという存在が、アートなのだ!
芸術は爆発だ!ホルモンも爆発だ!

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そもそも内臓肉ってすごいのです!

私は、ただ内臓肉を並べてよろこんでいるだけではない。裏では「お肉検定1級」を取得したり、地道に肉の知識を深めている。とにかく私は、内臓肉ってすごいんだってことを伝えたいのだ。

例えばこの「豚の網脂(あみあぶら)」。フランス語では「クレピーヌ」とも呼ばれていて、ハンバーグに巻くなどして使われる。もつ焼きなら、レバーやハツに巻いた串焼き「網脂レバー」「網脂ハツ」などでもおなじみだ。

この大きな網は、ほ乳類独自の器官だ。なんと人間にもついている!
普段は胃の下部に隠れていて、内臓が炎症した時、自分の意思とは関係なく、その場所にスルスルと移動して、包帯のように柔らかく包んで保護してくれるのだ。これが自分の体内にあるなんて、とても神秘的ではないか!?

そこにあるだけでアートなんだ

別に切らなくたっていい。
新鮮な内臓肉は、ただそこにあるだけでオブジェなんだ。
これはまるで新車のような牛レバー。

牛レバー。どんな角度でも美しい、造形物。
表面に浮かぶ、複雑な色彩は、どんな美術品にも負けてない。
美しい艶と、なめらかなフォルム。
これぞ「This is 肝」な、姿。
おいしいことはもちろん、
この見た目にも、惹きつけられるものがある。

そして、ギアラ(牛第四胃)。1枚のギアラでも場所によって、脂付き・風味・食感の違いがある。それを食べ比べられて、見た目も楽しめる盛合せに。

一番右の列は、ギアラの裏面。ギアラは弾力が強くて噛み応えがあるので、食べやすいように、裏には隠し包丁を入れます。これもいい感じのストライプ柄に。

第四胃のギアラは、お隣の第三胃のセンマイに近い部分は色が白っぽい。お店によっては「白セン」「赤セン」のように、メニューを分けているところもある。丸のままで買って自分で切ると、部位のつながりや全体像が見えてくる。まさに「木を見て森を見ず、ホルモンを見て内臓を見ず」だね。

それにしても、内臓肉って優しい色だ。

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これは、ハチノス(牛第二胃)、シビレ(牛胸腺)の2種盛り。

あ〜、この色の組み合わせすごく好き。淡いベージュと淡いピンク。なんて優しい色なんだ。何も狙いもせずに、何も考えずに、ただ好きな皿に、好きな肉を乗せていただけなのに、こんなにもホルモンにハッとさせられる。これが赤身肉にはない魅力なのだ。

そしてこの頃には、牛豚のレバーを同時に買っても、袋から血の色を見ただけで、どっちが牛で、どっちが豚か、わかるレベルにまで到達していた。

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ちなみに、左が牛で、右が豚だ。

内臓肉アーティストの苦悩

Twitterのホルモンアカウントでは、焼いてない内臓肉の写真をツイートすると、センシティブ画像の警告が出てしまうことがある。それがR15なのか、R18なのかわからないが、見ようによっては、確かにセンシティブだ。

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以前、ぶっといマルチョウを入手した時、喜びのあまり写真を撮ってフォロワーさんにDMで送ったら、不適切画像の警告が瞬時に飛んできた。

きっとSNSのAIは、マルチョウを卑猥な目で見ている…。

それでもくじけず、ホルモンカレンダーまでつくりました!

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「起立! 礼! マルチョウ!!」

放送コードギリギリでも、創作ホルモンは続く!

これは、私の渾身のホルモン小説「豚の睾丸:ホーデン」

この物語は、通常2個セットでしか買えない豚のキン○マを、3個注文してロットを乱そうとする困ったお客様に、キ○タマとはなんぞやという心意気を叩き込む、壮大なる「お肉学習ストーリー」だ。

幸い私は、この希少部位、豚の睾丸「ホーデン」を入手できなくもない。次の課題は、ホーデンを調達して、切って・盛って・焼いて・食べることだ!

私とホルモン

そもそも私は、なぜホルモンに夢中なのか。
物心ついた頃からホルモンが好きになり、ホルモン屋さんに通い続け、時にホルモン屋さんの厨房を覗き、納品に来た肉屋さんのトラックを追いかけ仕入先を突き止め、おいしいホルモンは屠場跡地にあると信じて、肉の歴史を調べて街を徘徊。いまもその活動をずっと続けている。

自分でも、何を目指しているのか、わからない。
ただ、ホルモンが好き。
偽りなく、まぎれもなく、飾りもない気持ちがそこにある。それだけなのだ。

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内臓っていう形のないもの
伝えるのはいつも困難だね
だからホルモン
この名もなき内臓肉の詩を
いつまでも肉に捧ぐ…!

閲覧ありがとうございマルチョウ。これからもよろしくお願いシマチョウ!