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ホルモン小説「豚の睾丸:ホーデン」

ここは、とある内臓肉屋。一人の客がやってきた。

「すみません、ホーデン3個ください」

ホーデンとは豚の睾丸のことだ。しかも「3個」とは一体どういうことだ。この客にはイチから説明してやらないといけねえな、豚の金玉ってやつを。

「ホーデン」とは、ドイツ語で「睾丸」

ホルモンの名前には、ドイツ語、医学用語から来ているものが多い。「Hoden(ホーデン)」もそのひとつだ。ホルモン屋などでは「宝田(ほうでん)」のように、お宝のように表記することもあるようだが、「ホーデン」とは、ドイツ語で「睾丸」という意味だ。

「ホルモン」という言葉自体も、医学用語のドイツ語「Hormon(ホルモン)」から来ているという説もある。明治維新の頃の西洋医学(主にドイツ)の影響を受け、栄養豊富な内臓を食べると活力が付くとして名付けられたとも言われている(諸説あり)。

豚の睾丸は、とにかくデカイ!

豚の睾丸は、かなりデカイ。
インターネットで「豚の睾丸」を画像検索すると、見たこともない睾丸のデカさに誰もが驚くことであろう。どうしてこんなにデカイのか。

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豚は家畜の中でも子を産む数が多い。それだけに多くの精子が必要となるのだ。成熟した雄の睾丸は、ラグビーボールぐらいの大きさになる。精子は熱に弱く、温度が高くなるほど精子が形成されにくくなる。だから睾丸は、寒いときには縮んで熱が逃げないようにし、暑いときには伸びて放熱をする。睾丸には、温度調節の役割があるのだ。インターネットで「豚の睾丸」を画像検索すると、見たこともない睾丸のデカさに誰もが驚くことであろう。どうしてこんなにデカイのか。

つまりホーデンとは「放電」ではなく『放熱』をする場所でもあるのだ!
(つまらないことを言った…)。

一頭からわずかしか取れません…だと?

よく、お肉の部位の説明で「一頭からわずかしか取れない希少部位!」などと表現されることがあるが、悲しいことに、このホーデンも、このお決まりの文言で片付けられてしまっている。

一体どういうつもりだ!
「わずか」ではなく『2個』なのだ!
一頭に、たった『2個』しかない宝物なのだ!そう言え!!

もっと言うと、この店の最小ロットは2個からだ。冒頭の客のように「3個ください」とは言ってはいけない。2個セットだからこそ金玉なのだ。それを3個だなんて、金玉を一体何だと思ってるんだ!頼むからロットを乱さないでくれ!

ふと思った。じゃあプロの内臓屋はバラバラになった金玉のどっちが左で、どっちが右かを正確に見分けられるのか? 2個縛りで売っていながらも「左玉+左玉」で、売ってしまうことだってあるんじゃないか…? きっとこれは肉屋と神様しか知らない真実だ。

まぼろしの豚の睾丸

豚という家畜は、まったく珍しくもないが、ラグビーボールほどのデッカイ睾丸をつけた豚なんて、普通の人は、まず見たことがないはずだ。

通常、食用の豚は、生まれてすぐに睾丸を取ってしまう。だから睾丸がついている豚はかなり頭数が少なく、睾丸は、希少部位として流通している。提供する店も限られているし、内臓肉屋でも特注品だ。

しかし、睾丸1個で300g近くあるので、焼肉屋としては、1個から3〜4人前ぐらいは取れるのだ。

ところで「金玉」ってなんだ?

そういや、睾丸のことを「キンタマ」って呼ぶけど、まったく金色ではないじゃないか。どういうことか。

調べてみると、

大事なもの・貴重であるものの象徴である「金」になぞらえ「金の玉」と呼んだ

という説もあれば、

江戸時代以前の日本酒には清酒が存在せず、いわゆるどぶろくであった。このどぶろくを精液に見立て「酒(き)の玉」と呼び、それが訛って「きんたま」となった

という説もある。

なんて奥が深い話なんだ。これはもう、金曜日に「キンタマキラキラ金曜日♪」などと、はしゃいでいる場合ではないな…。


おっと、あまりにも熱く、豚の睾丸を語りすぎたようだ。さっきの客は、ぽかんとして聞いていたが、少しはわかってくれたようだ。

それで、その「ホーデン」がどんな味かって?

実は、私もまだ食べたことがない。

閲覧ありがとうございマルチョウ。これからもよろしくお願いシマチョウ!