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本革は生きている!皮革製品もホルモンの仲間

革靴やカバンに財布。革製品は身近な存在だが、皮革も家畜を解体して食肉を取った残りの部分「畜産副産物」で、ホルモンの仲間だ。

生き物である動物の皮を使った製品を好まない人がいるかもしれない。合成皮革で十分だと思う人もいるだろう。しかし本革には、人工のものには真似できない、大きな特徴があった。


食肉を取るために残った皮が「革」となる

食肉市場で家畜を解体するとき、まず行うのが「皮をむく作業」だ。毛のついた皮を剥がさないと、食べるための肉にたどり着けない。

大きな牛さんを天井から逆さに吊るし、エアーナイフで皮を剥がしていく。皮と肉のギリギリのラインで均等に剥がす。途中、破いたり、傷つけたりすることもなく、大きな一枚の皮になるように手早く剥がす。これは日本の優れた職人技ともいわれ、海外から学びに来る人もいるそうだ。

剥がした皮は、塩漬けにされ、革にするための加工が行われる。

「皮」と「革」の違い
「皮」は、加工されていない生の状態のもの。「革」は、製品の素材として使えるように、腐食を防ぐ「鞣し(なめし)」を行ったものを指す。

本革は、生き物の肌だ!

本革が、牛などからつくられていると知っていても、ふだん革製品について、あまり深く考えることがなかった。先日、実家に帰り、使わなくなった古いカバンを整理していると、あることに気がついた。

10年以上経った合成皮革は、素材が変質してひび割れが起こり、ポロポロと表面が剥がれ落ちている。もはや使い物にならない状態だ。本革のカバンは、ツヤがなくなりカビが生えているものもあるが、基本的に状態が良い。手入れをすれば新品のように復活しそうだ。

しかし本革とはいえ、カバンの内布には合成皮革のような素材が使われていた。外側がどんなにきれいでも、内側の素材は変質し、ボロボロに崩れている。結局、古いカバンは使えないものとなってしまった。

そのなかでも、新品のような状態を維持していたのが、動物の革だけでできた巾着袋だった。

何かの動物の革を縫い合わせただけの袋。裏地もついていないので、本革100%

海外のおみやげで、何の動物か忘れてしまったが、私が小学生の頃、首からぶら下げて使っていた記憶がある。紐も革製で、何度かちぎれて修復した痕もある。そのぐらい使っていたようだが、巾着袋の革自体は、とてもきれいな状態だ。しかし、飾りに使われている金具はサビだらけで、まるで遺跡から発掘された古代のアクセサリーのようだった。この動物以外の部分だけが、長い年月の経過を物語っている。

小学生の頃のものだと考えても、かなりの年数が経っているはずだ。それにもかかわらず、いまおみやげとしてもらったと言ってもわからないほど、きれいな状態を保っている。

本革は、違うんだ!
それは「生き物の肌」だからか?

当たり前だが、生きている体はそこになく、「革」となった皮は、呼吸をすることもない。だけど、そこに「生きている何か」を感じた。合成皮革のように変質して、ボロボロに崩れて形を変えてしまうこともない。ちゃんと革製品としての状態を保って、何十年も有り続けているのだ。

合成皮革は、ポリ塩化ビニールやポリウレタン樹脂などでつくられている。見た目は本革のように見えるが、経年劣化でボロボロになる。寿命があり、10年使い続けることは厳しい。

部位の形をそのまま活かした革製品

カンガルーの睾丸袋でつくられた小銭入れ

私が愛用する本革製品は、ほかにもある。これはオーストラリアのおみやげ「カンガルーの睾丸袋でつくられた小銭入れ」だ。金運がアップするラッキーアイテムなのだとか。

かっこ良く刻まれている『GENUINE KANGAROO SCROTUM』とは「本物のカンガルーの陰嚢(いんのう)」という意味だ。

キン○マなので、キン運がつくよ、という縁起物か。リアル睾丸袋なので、継ぎ目がない。オーストラリアでは、中身が漏れないことから、ゴールドラッシュ時代に「砂金入れ」としても使われていたそうだ。この形状は人工ではつくりだせない、生き物ならではの特徴だろう。

羊の胃袋でつくられた水筒

古代のアラビアでは、商人たちが羊の胃袋を水筒にして使っていたという話もある。あるとき、その水筒にミルクを入れて、ラクダに乗って砂漠を旅していると、袋のミルクが固まってチーズになっていたのだとか。これはチーズの起源としても有名な話だ。

モノがなかった時代から、動物の食肉以外の部分を活用するという工夫があった。皮も内臓も、使える部分は無駄なく使う。はるか昔の先人たちの知恵からも、ホルモン魂を感じるね。

革製品は一生使い続けられる。歴史と文化をつくりあげた魂のアイテムだ!

家畜の皮からできた革製品は、靴やカバン、日常で使う小物など、身近なものだけでもたくさんある。牛皮を使った太鼓にいたっては、お祭りや伝統芸能、お寺の儀式でも使われている。

肉を食べて栄養を摂取し、その家畜の皮でつくられた服や靴で体を保護し、生活を便利にする革製品を使う。現代では、合成皮革や大豆ミートなど、動物に代わるものがあるが、家畜の命を無駄なくいただくことは、社会や文化の発展には欠かせないものだったのではないか。

もし家のどこかに革製品が眠っていたら、ちょっと気にしてみてほしい。長い年月を経てくたびれていたとしても、手入れをすれば、よみがえるはずだ。そしてそのアイテムは、一生使い続けられる相棒になるだろう。

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