![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58099589/rectangle_large_type_2_14557319d37a828d0af051b785ba5ae3.jpg?width=800)
Tシャツひらひらと塩ー高知県・黒潮町①
高知県黒潮町を初めて訪れたのは、四万十川流域へ旅行へ向かう途中に立ち寄った2019年夏。高い白波にサーフィンをする人たちの姿が印象的で「さすが太平洋~!!」と思ったものでした。
(砂浜の肌感覚がものすごく気持ちよかった…2019年の写真)
ここ黒潮町といえば「砂浜美術館」(物理的な美術館は存在せず“美しい砂浜そのもの”が美術館というコンセプト)。毎年GWには、この砂浜に全国から応募されたTシャツが砂浜に一斉に並ぶ「Tシャツアート展」も開かれています。2021年で33回目を迎えます。
「砂浜でTシャツが一斉にひらひらしている風景」を一度は見てみたいと思っていました。昨年、作品募集のチラシを地元の道の駅で手にしたあと、当時5歳の娘がタイミングよく絵の具を使って絵を描いたので「よし!これで応募してみよう」と初めて応募。感染症の流行もあって、展示会はGWではなく秋の4日間に延期されましたが、昨年秋、二度目の黒潮町へ。娘の作品は砂浜に“ヒラヒラ”していました。
話は変わって、我が家に常備されている塩。「土佐のあまみ」という完全天日塩です。使い始めて4年ほどだと思います。
そんな「土佐のあまみ」の塩を私がスタッフをしている高松市にあるお店でも導入されるようになり、”これ見て”と、仕入れ担当のスタッフから納品時に同封されていた「手紙」を渡されました。
素敵すぎる…!!
私は衝撃を受けたのです。その筆遣い、風景が生き生きと伝わってくる文章…だけではなく、封筒には小さな貝殻がついていました。
“これを書いている方とお会いしてみたい”
そんな思いが湧いてきました。
今年5月、私は地元のいいお豆腐「くぼさんの豆腐」の代表・久保さんに取材させてもらいました。豆腐づくりは、にがりが必要。くぼさんの豆腐の原材料のにがりは、土佐のあまみのにがりだったのです。この時ようやく、土佐のあまみ屋は、黒潮町にあるということをはっきり意識した私。久保さんに土佐のあまみの生産者・小島夫妻の話を聞かせてもらったことで背中を押されました。「会いに行こう!!」。
せっかくの遠出。黒潮町内で3件の取材アポイントを入れ、7月15日を待ちました。
悪天候をすり抜けて、黒潮町へ
さて、香川県の自宅から黒潮町までは3時間半のドライブです。一人で往復の運転はキツいため、前泊で黒潮町入りすることに。選んだ宿は“農家民宿かじか”。宿のホームページと、運営しているお母さんのブログを見て即決。7月14日14時すぎ、この日の仕事を終えた後、黒潮町へ向けて車を走らせたのでした。
高知県内に入ると雨の降った跡が。進んでいくと上空黒く、雨も降り、雷鳴も…天候はイマイチでしたが、無事に時間通り到着。お父さんとお母さんが外に出て迎えてくれました。
農家民宿かじか 外観
(後ろの山も敷地。宿の前は道路を挟み田んぼと川。水路の透明度が高く、夏ならば、川エビやカニ捕り体験もできる。捕ったものは料理してくれる。農家民宿なので野菜の収穫体験、味噌づくりなど、楽しみ方はいろいろ)
「さっきまでねぇ、雷がひどかったんじゃけんど…通行止めじゃなかったとですか」
道中、高速道路の情報掲示板には通行止め情報が出ていましたが、走っているうちに解除されたため、予定通りの時間に到着することができたのでした。
車を降りると、明るい空も見えました。
「こちらです~」と案内されたのは“離れ”です。
(畑で栽培されている”はぶ”を使ったお茶。香り高く、とても美味)
部屋の机には、高知県の銘菓「芋けんぴ」とお茶も温かいものと、冷蔵庫には冷たいものが用意されていました。さらに奥の間には丁寧に布団も敷かれ、掃除も行き届き…。お母さんとお父さんの人柄も温かいもので。私のテンションはあがりっぱなしでした。
窓から外を眺めると山に陽光が差し込み、虹が出そうな雰囲気。
荷物を降ろしているうちにその予感は現実になりました。
18時、夕食が運ばれてきました。まさかの、一人なのに炊飯器でのお米、笑笑。
「うわぁ…」
一品、一品…一口、一口がもう美味しくて。炊飯器からご飯をお代わり。
この日は高知県内は激しい雷雨で一時、高知市内は何千戸も停電したとのニュースがNHKから流れてきました。私は悪天候をすり抜けながらドライブしていたようです。
「明日は、今日以上に不安定な天気でしょう」と気象予報士。曇り空一色の天気予報。
綺麗な太平洋は望めそうにないなと、気持ちはガタ落ち。目的は取材なのだから。無事に3件取材ができたらいいんだと自分に言い聞かせます。
部屋に置かれていた「なんでも書いて帳」。かじかが、いかに愛されているかが伝わってきました。歩きお遍路さんの筆も目立ち、「4回目です」「今年も来れました」などと、リピーターの筆が多いことに気づきます。
“ここにして良かった~!!”と、私はしみじみ。今度は娘もつれてこなくっちゃ。
だけど今、少しばかりは“お母さん”ではなく、寛ぐ旅人。あまりにも心地いい時間が過ぎていきました。
雷光 朝もや 青空の朝
(かじかで飼育されている土佐ジロー)
目が覚めたのはまだ真っ暗な4時前。
普段から早起きなので、この時間に起きたからってなんてことないのですが、カーテンを開けて空を見ると、ピカッ、ピカッ。音は聞こえてきませんが、雷が発生しているよう。
電気をつけて、置いてあった珈琲を入れて夜明けを待ちます。
コ―コケッコッコ…
飼育されている土佐ジローの鳴き声が早くも聞こえてきました。
山はまだ重い雲が立ち込めていましたが、明るくなるにつれ朝もやに。光も差し込むようになりました。青空ものぞいています。
「太陽頑張れ~!!!」
7時前。「おはようございまーす。少し早いですけど、朝食が出来ましたので」とお母さん。まず炊飯器が置かれました(笑)。そして、ときめいてしまう朝ごはん。食べ始めた瞬間に「もう、帰ってもいいや」と思ってしまったほどです。
お腹パンパン。青空頑張れ!!
「向田さーん!!」とお父さんの声。これから外出するそうで、挨拶に来てくださったのでした。
「よく眠れましたか?今日はこちらでお仕事だそうで…。小島さんのところ(土佐のあまみ)にも行かれるんでしょう?ぜひ(まちのことを)紹介してくださいね!!」
昨夜、宿帳を読んでいたら、お父さんのこともよく書かれていたので、お父さんと色々お話してみたかったのだけど。楽しみは次回にとっておこうと思います。
かじかの畑
「畑、見せてもらってもいいですか?」
お母さんに依頼していました。
「行きましょうかね」
かじかの畑は、予想以上に広く、菊芋、こんにゃく、パクチー、クレソン、落花生…多種多様な野菜が育てられています。ちなみに養蜂も!
「持って帰るき?私ら食べんのよ。外(産直)へは出しとるんじゃけど」
そう言ってバジルの葉を摘んでくれました。もうその香りったら…。
次いで、長ナス、きゅうり、トマト…。次々と持ち帰らせてくれることに。
ブルーベリーの木には鳥に食べられないように網がかけられていました。でもお母さんは優しくて、ブルーベリーの木は他のところにも植えられていて、1本はネットをかけていないんです。鳥への愛情。
「採ったらええよ。容れ物持ってくるき」
ということで、私はブルーベリー狩り。たわわに実っていて、熟している実もたくさんあって…採りきれない!!数日前、お母さんは大阪にいる子どもに送ったそうですが、いやいや、ほんと。ブルーベリーを採りきれないってなんて贅沢なのだろう…。
とびっきりの、心地よさ。とびっきりの、いい時間。
ゲストが泊まるのは”離れ”
畑を一通り見させてもらったら、時刻は9時すぎ。そろそろチェックアウトしようと部屋に戻って荷物の整理。車に荷物を入れにいくと、お母さんが縁側に座って、珈琲とお菓子を用意してくださっていました。頂きながら、お母さんとしばらくお話。
コロナの影響でお客さんは激減しているとのことですが、「今はいい羽休めやき」とお母さん。かじかの定員は1日1組。お客さんを受け入れるのは“離れ”。「私はあれこれと、世話焼きじゃないきね」。でも、この距離感が絶妙。民宿というのは、宿主とお客さんが同じ建物内、ということが多いです。それももちろんいいけれど、双方気を遣うのも事実。”離れ”だからこそ、お互いホッとできる。お客さんにとってはくつろぎ度が増すように思います。
もともとは公務員だったお母さん。実家は百姓。兼業農家だったそうです。定年が近づき、定年後のことを考える日々。仕事では、県が推奨し始めていたグリーンツーリズムに携わっていたそうで「これだ!」と直感。が、お父さんは当初、反対していたと言います。
「でも今じゃ“かじかの番長”なんて名刺つくっとるき。お客さんと話すのが楽しいんやね」と笑います。
話を聞いていくと、中国やタイなど海外旅行経験も豊富だったお母さん。いいことも、そうでないことも、旅ではたくさんあったでしょう。それが「かじか」にも活きているのだろうな。お母さんの今までの経験、もともと持っていた感性が存分に活かされているゆえの、居心地の抜群さだったのだと分かりました。
「ありがとうございました!!」
腕時計を見ると9時45分。チェックアウト。
家族を連れて、必ずや私は帰ってきます!!!
頂いたトマトとバジルでパスタを作りました。その美味しかったこと!!
さ、いよいよ本番。気持ちを引き締めて、向かうは「黒潮町缶詰製作所」。町が75%の株を保有する第三セクター。始まりは「津波予想34m」という日本一の数字から。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?