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梅 ヌチグスイ*①

今は梅雨。

周りの知人には梅仕事にいそしんでいる人も少なくない。「昨年漬けたのよ」と、珍らかな陳皮梅なるものや梅酢を頂いた。爽やかな風味の陳皮梅は、それを作った人のやさしさと共に私の口に入って、わたくしの細胞の一部になった。素材を吟味して、丁寧に、そして時間をかけて出来上がったものの滋養は 何物にも代えがたい。梅酢はおにぎりの手水に使うと腐りにくくなるというスグレもの。塩気もあるので大変重宝。とてもありがたい。

梅は見てよし、香ってよし、食べてよし。更には 満開時の梅園に行くと、蜜を求めてくる可愛いメジロや声の良い鶯のさえずりも楽しめる。人も梅をモチーフに和歌を詠んだり、楽曲を創作演奏する。わたくしも地歌のお稽古で「ウムエ~」と梅を唄ったこともある。お師匠さんのご指導を受けたそれは、『ムメ』に近い発音だったかもしれない。

かの菅原道真公も梅花を愛でたことはつとに有名。その気品が賢人を惹きつけたのだろうと、想像するのは容易いこと。そして、天満宮はわたくしの好きなお社で、必ず梅の木が在るのも素直に嬉しい。

とにかく梅は典雅な花木だ。対象的に、満開の桜には 人が自分を見失うような何か危ういものを感じてしまう。桜支持者が多数派なのはわかっていながら、やはりわたくしは梅が好ましい。

と、梅を褒めちぎったところで、ヌチグスイとしての梅のお話。

琉球ことば(ウチナーグチ)で「命の薬」というヌチグスイは元気が出るようなおいしい食べ物を食べたときに使うとか。我が「iyasi-logy」 癒やし学では、文字通り身体に良い食べ物を これからヌチグスイ*としてラインナップしていこうと思う。その輝く第一弾食材が梅。

ミネラル豊富、疲労回復、デトックス、唾液の分泌、アルカリ性食品として中和、カルシウム・鉄の吸収を助ける、肝機能や血流改善、食中毒予防などなど。これはどこからどう見ても立派なスーパーフード。しかも歴史も深く、3世紀から日本で食べられているらしい。

生の梅の実には猛毒が含まれて食べられないのに、甘酸っぱい香りを放つほどに完熟させてから、梅干しなどに加工すると毒性が減少する。大逆転で健康食品に代わる不思議さは、まるで魔法のよう。”梅干しばあさん”という言葉を昔は耳にしたが、それは悪口だったのか、はたまた毒を薬に変える魔女という意味だったのか?(大概はしわを揶揄する単語だっただろうけれど)

ただ気を付けなければならないのは、あらゆる梅干しが世の中にあふれているけれど、「もどき」が梅干しの貌をして店頭に堂々と並んでいることだ。せっかくのスーパーフードをいろんな添加物で調味加工し、台無しにしているものも少なくない。減らした毒性をわざわざ足してどうする?と大変残念。

私のように頼もしい友人からおすそ分けしてもらえる場合はともかく、スーパーなどで購入する際は、原材料表示をチェックすることをお勧めしたい。それは、梅に限らず、自分と家族の口にするものが何かを知る、ということ。どうかこの当たり前の作業を面倒臭がらないでほしい。せっかく稼いだお金で何を買って、心身を養っているか。少しだけ気にしても損はないと思う。

なぜならば、わたくしは、そのことを始めた最初の1年、生まれて初めて風邪をひかずに暮らせたという実体験があるから。食材は病を遠ざけたり引き寄せたりする。それは本当のことだと、身をもって理解した出来事だった。

大好きな女優の一人、小林聡美さん主演映画「めがね」で主人公が連泊する宿の朝食に梅干しが毎朝供され、その際 必ずこのセリフが出てくる。

「梅はその日の難逃れ」

まじないのようなその言葉に合わせて梅干しを口にすると、何か確りとしたものにその日一日守られるような安心感を与えてもらえそうだな、と思った。

梅をおひとつどうぞ。

そして、あなたの一日が梅の力によって健やかでありますように。





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