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甘酒 ヌチグスイ*⑥

わたくしが育った家では、寒くなると、居間のストーブの上に置かれた鍋に、小豆が入っているとぜんざいが、酒粕が入っていると甘酒が、その日のおやつだった。

ぜんざいは後でその横で焼かれた餅が、甘酒の時はトースターで焼いた食パンが、付く。小豆がクツクツと音を立てて柔らかく煮えると、多めの砂糖のほかにすこし塩が入れられ、塩昆布や、薄切りのたくあんが添えられてぜんざいを頂いた。甘酒にはすりおろしたショウガが入れられることがあった。けれど、少し牛乳を入れて、酒かすの独特な風味をマイルドにするのが、わたくしの好みだった。子どもにはピリッと来るのが苦手なショウガを、母は温まるからいいと勧めるが、ストーブで十分に加熱されて温かいのに?とサッパリ意味が分からなかった。

甘酒は冬の飲み物、と思い込んでいたわたくしが、五十路を超えて、甘酒は夏、とキッパリ断言する。

それは、年々夏の暑さが厳しくなるにつれて、わたくしの気虚の体質がスッカリあらわになって、夏バテ常習犯となったせいである。

食欲減退からくる栄養不足と全身の疲労感、冷房の効いたところから出た時の気温の急激な変化でのふらつき、悪心などなど。自律神経がガタガタになってあらゆる不調が押し寄せる。

ある夏、目の具合が悪くなって眼科に行くと、養生の漢方を出されて、初めて全身が弱りが目に現れていることを知った。

食べなくてはと無理に食事をとると、起きていられないほど怠くなってパタリと横になって暫く休む。間の悪いことに、知人の家でその事態が発生した時は、その人はそれが夏バテ症状だと知らなかったために、食事のあと、他人の家で寝転んだと、非常識認定された哀しい思い出もある。

そんな不具合が毎夏続くうちに、どうもビタミンBやアミノ酸が足らないからではないか?とうっすらと素人ながら思い始めた。必要な栄養素(エネルギーではなく)が不足するために、代謝機能が十分に働かず、躰中の全ての巡りがダウンしかかっている、のかもしれない?なんとかその不足を補えば、回転率が多少マシになってエンジンがかかるようになるのではないか、と。が、食事から栄養を取りこむ為のエネルギー事態の不足で、食べての補給は追いつかなさそうである。さて、どうしたものかと、考えあぐねていた。

たまたま春先に旅行で立ち寄った糀屋さんの麹ドリンクの試飲がとてもおいしくて、すぐに自宅に取り寄せたところ、いつもの怠さが抜ける体感があった。その夏は酷暑だったのにも関わらず、麹ドリンクの効果か、いつになく元気に過ごせた。調子に乗って、周りにも勧めると、思わぬ人から「命の恩人」とまで喜ばれる嬉しい出来事もあった。

素人の体感だけではなく、調べてみると、管理栄養士の方がまとめられている記事にも甘酒が夏バテに良いとピックアップされていた。

疫病対策に関心が集まる中では、腸内細菌バランスも注目されるようになり、麹菌のはたらきもさらに期待される。日本人の食生活に欠かせない麹菌の力をしっかり活用するのにも、甘酒は心強い味方である。効用もわかりやすくまとめられていて、それぞれの生活にうまく取り入れられるヒントが満載の発酵日和さんのサイトも、とても参考になった。 

そのうえ、最近、ウイルスを死滅させるアミノ酸として、注目を浴びる5ala が、食品にどのくらい含まれているか、という表を見つけた。これは、サプリメントなどを扱う会社の調査の数値であるけれど、参考にして、日ごろの食生活にこれらの食材を積極的に取り入れるのもいいのかもしれない。

日本人の体質に合った食生活で、日本人の健康を守り、まずは自身の免疫をできる限り強化する。夏の暑さに疲れが残るこの頃、十分な滋養を補って、健やかに、心穏やかに過ごすのに、甘酒の懐かしい香りと甘みはぴったりだろう。

もし、風味が苦手と思う方には、ミカンジュースと豆乳を三分の一ずつ混ぜてミックスジュース風で飲む方法をおススメする。口当たりが良くなるうえに、ビタミンやたんぱく質も摂れるので、栄養としてもバランスが良いのではないか。意外なほどのおいしさを、自信をもって保証する。

また、様々なお好みアレンジを試されるのも、楽しいかもしれない。

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友人がお土産にくれた甘酒ジャムは、パンに塗るのもいいけれど、プレーンヨーグルトに混ぜて食べるのも酸っぱさがマイルドになって良い感じ。

暑い夏が終わる頃、内臓もお疲れモードの頂点に達する。甘酒のもつヌチグスイの効用を活用して、爽やかな秋を元気に迎えたい。

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