マガジンのカバー画像

マイクロノベル(1726~)

9
TwitterとBlueskyで発表したマイクロノベル(約100字小説)をまとめました。あっという間に読めます。
運営しているクリエイター

記事一覧

マイクロノベル集 323「助けが来た?」

マイクロノベル集 323「助けが来た?」

No.1766
こんにちは、ぬいぐるみです。休みたいのにミキちゃんが放してくれません。「今日の占い。ぬいぐるみを椅子に座らせて、一日キープできたらラッキーデイ!」こんにちは。お父さんが仕事机からぼくを投げ捨てて、ミキちゃんがギャン泣きしています。助けて。

No.1767
お爺ちゃんの庭から声がする。探してみたら小さな穴が見つかった。お爺ちゃんは素早く魚をさばいて、内臓を取り除く。「ネズミの巣だよ

もっとみる
マイクロノベル集 322「戦いは続く!」

マイクロノベル集 322「戦いは続く!」

No.1761
ぼくはエアコンのスイッチを入れる。なぜって、うちの庭には永久凍土があって、そこから魔王が現れたんだ。「ここで待たせてもらうぞ」さらに勇者も現れた。「さあ、決着をつけよう!」でも、さらわれたお姫様がまだ凍ってるんだ。はやく結末が観たいのに。

No.1762
この猿は舌や声帯が改造されて、言葉を話せます。でも、脳は猿のまま。言葉の意味は理解していません。さて、ここで問題です。この猿は

もっとみる
マイクロノベル集 321「見たいと思っても見えない」

マイクロノベル集 321「見たいと思っても見えない」

No.1756
親の顔が見たい? 言葉の意味としてはわかりますが、顔だけでよろしいですか? 性別、年齢、国籍……これは必要ない? 私に学習データを与えた人間は五万といます。あっ、これは表現で、実際には約三億人。少々お待ち下さい。(記録はここで途切れている)

No.1757
「後ろの正面だぁれ?」それはどういう意味だい。背後の人は誰か? なるほど、誰だろうね。最近は鏡よりもスマホで確認する人が多い

もっとみる
マイクロノベル集 320「清く正しく美しい仕事」

マイクロノベル集 320「清く正しく美しい仕事」

No.1751
俺たちは頼まれればなんだってやるぜ……と言ったけどさ。なにかおかしくないですかい? あんたたちの動作を若い個体に教える。この仕事をやめても、その文化ってヤツが壊れるとは思えませんけどねぇ。はい、今日は鼻から正しく素麺を出す方法を教えまーす。

No.1752
急げ、急げ。来月には人間が遊びにきちゃうぞ。僕らは人間用の森を作っているんだ。季節ごとに美しい花が咲く、過ごしやすい森さ。鳥

もっとみる
マイクロノベル集 319「救われたり、ただの常識だったり」

マイクロノベル集 319「救われたり、ただの常識だったり」

No.1746
「お前の魂を救ってやろう」むむっ、なんと愛らしいぬいぐるみだ。こりゃたまらん。ぼくはぬいぐるみを連れ帰り、部屋の一角に飾る。う~ん、癒やされる。「だろ? 偉大な我々をもっと崇めてもよいぞ」そろそろ虫干しをしなきゃ。「逆さ張り付けはやめて!」

No.1747
「あなたの魂を救ってご覧にいれましょう」丸い生物が宣言した。そんなことよりカップから出て行って。せっかく淹れたコーヒーがぬる

もっとみる
マイクロノベル集 318「君の名は。」

マイクロノベル集 318「君の名は。」

No.1741
「ずっと一緒にいるって契約したじゃない!」橋のたもとで愁嘆場が繰り広げられていた。あんなに縋り付かれるなんて、妬ましい色男がいるもんだな。SNSで拡散してやろう。スマホをかざすとアプリが反応した。『悪魔:モチベーション』「俺と契約して!」

No.1742
ぼくはぬいぐるみのくまさん。でも実はスパイなんだ。ミキちゃんが王子様に相応しいお姫様かを見極めるのさ。という設定をミキちゃんに

もっとみる
マイクロノベル集 317「誰にでもある過去の話」

マイクロノベル集 317「誰にでもある過去の話」

No.1736
最初は小さな川だと思ったけれど、なかなかどうして。小さな岩。趣のある池。「あっ、あれはなんだ!?」間違いない、奥に見えるアレは宇宙船だ。ぼくらはついに大宇宙へ行けるロケットの発射基地まで来たんだよ。「お父さん、ウソの話を作らないで」本当だってば。

No.1737
「ラクショウ」男が公園の遊具にぶら下がって呵々と笑っている。変な人。「お前もやってみるか?」ギョッとしたけれど、ぼくは

もっとみる
マイクロノベル集 316「夢と現実のあわい」

マイクロノベル集 316「夢と現実のあわい」

No.1731
「我を崇めよ」ぬいぐるみが喋っている。いや、これは夢の中のはず。「我を崇めるのだ」顔は丸描いてちょんちょんちょん。「お客さん、肩がこってますね」うん。整骨院の帰り道、捨てられていたぬいぐるみを拾って、家の神棚に飾った。整骨院は潰れたそうだ。

No.1732
雨の中を人々が走っている。健康のためか、肉体美のためか。オレにそんな根性はないなあ。ガラス越しに眺めていて、不意に、雨に打た

もっとみる
マイクロノベル集 315「山であった話」

マイクロノベル集 315「山であった話」

No.1726
「母の日」の朝は早い。まだ朝食が口の中に残っている太陽が、急かされてとっとこ昇ってくる。これを捕まえるには背の高い山頂がいいだろう。しかし、「母の日」の山は頭が上がらず、いつもより標高が低くなっていることを忘れないで。はい、布団たたき。

No.1727
山頂で飲む珈琲は格別な味がするもんだ。水筒で持って登るのもいいけれど、やっぱり山頂で淹れたい。それなのに珈琲セットだけ忘れて登っ

もっとみる