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アダルトチルドレンが負の連鎖を防ぐ方法


◉大人になっても苦しむアダルトチルドレン

アダルトチルドレンの方が本当に生きづらいと自覚するのは、多くの場合「アダルト」と名称にあるように、大人になってからです。

もちろん家庭内に問題が起こっていた子供時代の苦しさも筆舌に尽くし難いものがありますが、当時は生きづらいと感じる余裕もなかったように思います。

思い出しただけで「よくこんな毎日を死なずに生きてこれたな」と思います。

アダルトチルドレンが生きづらいと感じる要素はいくつかあって、それが複雑に絡み合っています。

今回はその中の一つ「世代連鎖」についてお話しします。

生きづらさの原因について一つでも知ってもらうことで、苦しい日々を乗り越える力の一つになれればと思っています。

◉アダルトチルドレンの世代連鎖という呪い

わたしは、父親がアルコール依存症でその家庭で育ってきたアダルトチルドレンです。

そのアダルトチルドレンが抱える問題として大きなものに「世代連鎖」というものがあります。

今この記事を読んでいるあなたも、世代連鎖に苦しんでいるかもしれませんね。

「世代連鎖」とは一体なんなのでしょうか。

『親から子ども、そして孫の代へと、複数の世代にわたって同じような問題が繰り返されることを「世代連鎖」といいます。
アルコール依存症の親をもつ人は、そうでない人よりも、大人になってから依存症になっている割合が高いことがわかっています。』

出典「特定非営利活動法人アスク:世代連鎖を防ぐ」

これまで親の依存症で自分と家族が振り回され、散々な目に遭ってきたのに、どうしてその子供である自分まで親のように依存症になってしまうのでしょう。

毎日まいにち惨状を目にしてきて、本当にもううんざりだと思ってきて、自分はこんな親のように絶対になるものかと思って、必死にもがいて生きてきたのにです。

それが、いつの間にか、親と同じ道を歩んでしまうというのです。

それは、本当に恐ろしい話です。

わたしは今、親がアルコール依存症になった年齢を少し超えたところですが、今のところ親のようにアルコール依存症にならずに暮らすことができています。

では、なぜわたしは親と同じようにアルコール依存症にならずに生きてこれたのでしょう。

これには、ある出来事がありました。

それは、わたしがまだ20代の頃、偶然ある新聞記事を読んだのがきっかけでした。

◉アダルトチルドレンが親と同じようにアルコール依存症になる典型的なプロセス

高校を卒業して会社勤めをしていた20代、その頃はまだ「世代連鎖」なんて言葉を聞いたこともなく、ただただ生きづらい毎日を送っていました。

そんな時に偶然目にした新聞記事には、アルコール依存症の親の元で育った子供が将来、親と同じようにアルコール依存症になる確率が、ものすごく高い数字で書かれていました。

わたしはその記事をむさぼるように読み進めました。

そうすると、記事ではアルコール依存症の親の元で育った子供が将来、親と同じようにアルコール依存症になる典型的なプロセスが書かれてありました。

どういうプロセスかというと、

1 まず、親のアルコール依存症による醜い姿を散々目にしたり、振り回されてひどい目に遭い続ける

2 それよって、アルコールというものに対して、徹底的に拒絶するようになる

3 そうしてアルコールに対して、拒絶の姿勢を取り続けて生きていく

4 しかしアダルトチルドレンは、もう生きていくことが辛いので、どんどん苦しい事に耐え続ける日が続く

5 そうしていくうちに、本当に耐えられないほどの辛い壁にぶち当たる時が訪れる

6 その時、あんなに嫌だと拒絶していたアルコールについ手を出してしまい、そこから親と同じようにアルコール依存症になっていく

主旨としては、このような内容が書いてありました。

その記事を読んだ時に、本当にゾッとしました。

なぜかというと、そのプロセスの途中まで、その当時のわたしが完全に一致していたのです。

これが世代連鎖の本当に恐ろしいところなのです。

親のようにはなるまいと必死に自分を律して生きてきた結果、親と同じようにアルコール依存症になってしまうなんて、まさに「親の因果が子に報い」です。

◉世代連鎖の呪いにハマりかけた心理〜なぎのなつのケース

その時期のわたしはどういう状況だったかというと、まず自分が酒を飲むなんていうのはもってのほかでした。

そればかりか、酒を飲んではしゃいでいる人を見るのも耐えられなくなっていました。

あなたも、よく親戚の集まりとかでワイワイ楽しく酒を酌み交わしている場にいたことはありませんか?

わたしはああいうのがダメで、とても見るに耐えず苦痛で仕方がありませんした。

ましてや「お前も飲めよ。俺の勧める酒が飲めんのか?失礼だろ」とか言われた日には心にどす黒い感情が込み上げて、抑えるのに苦労します。

またテレビなどを見ていると、宴会のシーンで大騒ぎしてる風景とか割と流れてきます。

その人たちは別に家族や親族でもありませんし、なんの関係もない人たちですが、それでも不快でたまらないのです。

それで思わず目をそらしたり、テレビのチャンネルを変えたりします。

そのうち、アルコールを目にするのも嫌になって、アルコールの話を聞くことすら拒絶するようになってしまいました。

そんな思いを抱えて生きていくだけでも苦しいのに、もともとうまく人間関係が築けなかったり、社会に適応するのが難しくて、生きづらい日々を鬱々と過ごしていました。

もう、そこまでのプロセスが完全に一致していました。

◉わたしがアルコール問題の世代連鎖の一つから抜け出した方法と注意点

わたしは幸運にもその新聞記事を読んで、世代連鎖の恐ろしさを知ることができました。

ではその世代連鎖から抜けるためには、どうしたらいいのか。

そこで思ったのが「統計から外れよう」ということでした。

どういうことかというと、自分が世代連鎖の統計の対象になっているのだったら、その対象の条件から少しでも離れようと思ったのです。

つまり、世代連鎖に陥る条件を見つけて、自分の人生から少しでも取り除こうとしたのです。

そうすれば、親と同じようにアルコール依存に陥る可能性が少しでも減らせるのではないかと考えたのです。

そうして思い至ったのが「無理にアルコールを拒絶しないこと」でした。

ここであなたは、「アルコール依存症になりやすい人がアルコールを受け入れて大丈夫なの?」と思うかもしれません。

かえってアルコール依存症になる危険性を高めてしまわないのかと。

わたしも今振り返ると、リスクのある賭けだったようにも感じています。

これはわたしはこうして世代連鎖の一つを回避したということであって、これが誰でも安全に世代連鎖から抜け出せるやり方ということではありません。

誰にでも安易にお勧めするものではありません。

ただ、もっとも大切なことは、この「拒絶しない」は、考え方の転換だということです。

「頑固な完全なる拒絶による反動を和らげる」ことが、どうしてもわたしには必要だと強く感じたのです。

そして、追い込まれ自分を見失った時に、無意識にアルコールに頼らない心構えを身につけようとしました。

ですので、決してアルコールを普段からたくさん飲んで身体を慣らす、ということではありません。

それは、ただの無謀な危険行為でしょう。

わたしが考える「拒絶しない方法」を無理に取らない方が良い人は次のパターンと考えています。

・自分自身が飲酒で心身に問題を抱えている人や、体質的にアルコールが合わない人

・アルコールに対して、どうしても精神的に強い拒否感がある人

・もともとお酒が大好きという人

・アルコールは気持ちで抑え付けられると考えている人

拒絶するのも、受け入れるのも、極端にならないよう注意が必要です。

わたしはあくまでも無理のない範囲で、いつでも取り組みを止めるくらいの気持ちで試みました。

もう一度繰り返しますが、これはあくまでも辛い時の反動でアルコールに手を出さないようにするための考え方です。

決して積極的にアルコールを摂取して、精神的・身体的にアルコールを克服しようということではありません。

アルコールを拒絶するからアルコール依存になるというプロセスがあるのなら、「アルコールを拒絶する」という要素を取り除こうという「考え方」なのです。

具体的なわたしの取り組みとしては、友人との飲み会があった時に、少しだけアルコールを口にすることから始めました。

そもそもわたしはアルコールに対して、かなり自覚的になっていました。

世の中の人たちのように深く考えずに、ただ好きだから飲んだり、楽しいから飲んだり、ということが全くできません。

もともとアルコール依存症の親の元で苦しんできたアダルトチルドレンなのですから、当然と言えば当然でしょうか。

そこまでの自覚と世代連鎖から抜け出す強い覚悟があって、はじめてアルコールへの拒絶を解く実践を行ったのです。

それにわたしは飲める好みのお酒も限られていましたし、酔った時の全身の感覚が鈍くなる状態も好きではありませんでした。

「たしなみとして良い日本酒とかも試してみよう」などと俗っぽいことも考えましたが、結局味の良さがわからなくてやめてしまいました。

そのうち仕事の過労も重なり、飲み会でアルコールを口にすると体調を崩すことも増えてきて、自然と飲みたいとも思わなくなりました。

今は外食に行くこともほとんどなくなり、飲みに行っても運転手役を担うので、飲むこと自体も無くなりました。

結果としてわたし自身がアルコールを飲むこと自体に嫌悪感を抱くことはなくなり、逆に好んで飲みたいとも思わなくなりました。

つまり「飲めないことはないけど、全く飲まなくてもいい」という感覚になっていました。

幸い今のところ、無理なくアルコールとは無縁の生活を過ごしています。

◉世代連鎖と向き合い続けることが自分を救う

この時は「これで自分はアルコールによる世代連鎖から抜け出せた」と思いました。

「連鎖に陥る前に気づけてラッキーだった」と。

自分がアルコール依存症になっているわけではありませんし、そういうパートナーと暮らしているわけでもありません。

それに関しては、今のところ成功していると言ってもいいと思います。

しかし、実はアダルトチルドレンが抱える世代連鎖はこれだけではありませんでした。

自分では気づけない「もっと大きな時限爆弾」みたいなものも潜んであって、そればかりは防ぎようがありませんでした。

それについては、別の機会に話そうと思います。

それでも大きい問題の一つを回避できたことに関しては、大きな意義があったと思っています。

大切なことは、どれだけ自分の状態を自覚できているかどうか。

どれだけ自分の生き方を客観的に見ることができるか

ただ、ものすごく難しいことだと思いますし、全てを把握することなんてできないとも思っています。

世代連鎖に陥ってから「なぜこうなっちゃったんだろう」と振り返って、ようやく気づくこともありますから。

だから、世代連鎖から抜け出すことを諦めちゃいけないと思っています。

たくさんの呪いから少しでも自分を解放して、自分の人生を生きていけるようにしたい。

ここまでなんとか生きてきた「この自分」で、これからも生きていくのですから。

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