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不安障害のパニックで死にかけたほんとのハナシ


◉パニックで本当に死ぬことはないのか?

パニックで呼吸が苦しくなったりして「このまま死んでしまうの?」と感じる方のお話をよく聞きます。

それに対して、不安障害や適応障害、パニック障害などの「気分障害によるパニック症状」では死ぬことはない、とも言われています。

確かにそれが直接の原因で死ぬことはないのでしょう。

しかし、パニックが大きな身の危険の引き金になることは、十分あり得るのです。

これは、まだ私が全般性不安障害とはわからず、初めての強烈なパニック状態で死にかけたお話しです。

◉突然あらわれたパニック症状

40代に入り、今までの積み重なった心身の不調がピークに達したある日。

わたしは職場で原因不明のパニック症状に襲われました。

めまいで景色がゆがみ、胸が苦しくなり、コントロールできない強烈な不安。

このまま仕事を続けることに耐え切れず、ふるえながらメンタルクリニックに予約を入れることにしました。

メンタルクリニックに自分で連絡を入れるなど、人生で初めてのことです。

実は不調の初期の頃からカウンセリングを受けたいなあとは思っていました。

本当にこんな苦しすぎる限界が来るのなら、もっと前に思い切って連絡をすべきだったと、今になって思います。

カウンセリングの予約の電話を入れてからの数日が、どれほど長かったか。

診察当日、仕事を早退し予約の時間まで海辺の公園の駐車場でメンタルクリニックのホームページを読み返します。

そこに書かれている利用者の方々の感想に、かすかな希望と漠然とした強い不安が身体を覆っていきます。

もうすぐ予約の時間になるころ、私はメンタルクリニックに行くため、車を走らせました。

それが命に関わる危機の始まりでした。

◉パニックで崖まっしぐら

高台にあるというそのメンタルクリニックまで、急斜面を細めの道路がうねうねと続いています。

ホームページで見た外観を思い出しながら「どんなところなんだろう、どんな診療をするんだろう」と気持ちがはやり、そしてその想いは次第に焦りへと変わっていきました。

メンタルクリニックへ向かう細い道を車で登っていき、そろそろこの辺だという頃。

しかし、カーナビの設定の位置がおかしかったのか、いくら車を走らせてもクリニックは訪れませんでした。

「あれ‥? なかなか着かない‥」と思いながらも、そのまま車を走らせます。

そうしていく内に、舗装された細い道は、どんどん細くなっていきました。

立ち並んでいたはずの周りの民家も、いつの間にか無くなっています。

「おかしい」

違和感と不安が混ざって、胸のモヤモヤが渦巻いています。

そのうち少しずつ道は荒れ、雑草が目立ち、もはや道路とは呼べない有様になっていきました。

今思えば、なんだかおかしいと感じていたのですから、ここで一度車を停めて、もう一度、カーナビの設定を見直せばよかったのです。

しかし、完全に不安にとらわれてしまったわたしは、それでも走りにくくなった車を少しでも前に進めようとしていたのです。

そしてついに、車はこれ以上前に進めなくなってしまいました。

これ以上進もうと思ったら、もう一押しアクセルを踏み込むしかありません。

上り坂の目の前に生い茂っていた草の隙間からは、空が見えていました。

車から降りて確認すると、そこは崖の一歩手前でした。
もう、すでに道は無くなっていたのです。

このまま、もう少しアクセルを踏み込んでいたら、そのまま崖の下を、車ごと転げ落ちていたでしょう。

ここまできて、わたしはようやく我に帰ったのでした。

◉パニック症状の二次的な危険性はあなどれない

大きな不安と焦りは拭えないまま、もはや道ではなくなっていたケモノ道を、車でそろそろと引き返しながら思いました。

人は強烈な不安に駆られると、正常な判断力を失い、ここまで正気を失ってしまうのかと。

その後、無事にたどり着いたメンタルクリニックでの診療の結果、「全般性不安障害」と診断が下りました。

わたしは、この件で不安障害というものの危険性の一端を見て、背筋が凍る思いがしました。

◆全般性不安障害(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

冒頭に書きましたように、不安障害のパニックそのもので人が死ぬことはないと言われています。

しかし、二次的な危険性について日頃から知識を入れておくことは、少しでも安全な生活を守るうえで、とても大切です。

◉つらい気持ちはそっと表に出してみる

「ちょっと最近の自分、調子が悪いな」と感じている、あるいは現在、強い不安でつらい思いを抱えているなら。

あなたの頑張りは、もうすでに限界を超えています。

わたしも「あの時、こうしていれば」と思うこともたくさんあります。

ですからあなたも、どうか、どうか、どんな理由でもいいので、一日でも休みを取って、精神科・心療内科に相談に行ってほしいと思います。

「お薬が怖い」という気持ちがあるかもしれません。

そんな時は、「今はお薬は使いたくない」と伝えて、そのつらい心の内を話すだけでもいいと思います。

それでも、どうしても病院には行きたくないなら。

そんなときは、薬局に常駐している薬剤師さんにお話ししてみると、なんらかのアドバイスをもらえることもあります。

また、今はネットが発達していますので、あなたと同じような苦しみを抱えている人たちが発信しているブログや動画もあります。

わたしのnote「なぎのなつ 心の凪待ちノート」もその一つと言えるでしょうか。

その中で、ここは自分に合いそうだというところを見てみるのもいいと思います。

幸運なことに、あなたのことをよく知っている人がいるのなら、その人にそっと今の気持ちを話してみる。

相手に理解してもらおうとするのではなく、ただ、そっと気持ちを知ってもらうくらいでちょうどいい。

とにかく、あなた一人にならないことが、とても大切です。

独りでつらさを克服しようと頑張るのではなく、つらさをそっと自分以外の人に知らせること。

そうして、だれかと薄くでもつながれるということが、「たいせつな自分をいたわるひとつのスキル」なのだと思っています。


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