小説講座まとめ 4

 さて。サマンサ編集長様が行っている講座、4回目のまとめです。
 今回は新しい原稿を元にした話と、お勧めしていただいた本を元にしたお話です。


■書きたいことへのアプローチを考える

 同じことを書くのにも選択肢がある
 例えば書きたいことや台詞があって、そこにどう導いていくか。良いシーンは? 自然なシーンは? と考えることも大事ですし、思いついたエピソードがふさわしいか考えることも大事。 
 
 これは原稿の一章で書いた私のエピソードが、テーマからちょっと遠回りですね、という話から。
 一章=この物語はこういう話ですよ と示す章
 
 あるエピソードに対して、主人公がどう反応するか。このエピソードは、読者が経験したことのあるもの(分かるもの)。身近な話を少し大げさに/分かりやすくして作ると良いかも。

まとめ2の目次1■情報の出し方
の最後の方に書いたことと重なっていますね。と、まとめていて気づきましたが。
 そちらは主人公について焦点が当たっていたので、エピソード対して主人公がどういう反応をするか、主人公「なら」どう考えるか、を書かないといけない、という話。
 今回はエピソードについてですが、同じひとまとまりの話だなと思いました。)

 主人公だけに語らせすぎないこと
 テーマについて直接、物語の中で繰り返し考えるような時(例えば、友達とは? 家族とは? とか)、ずっと主人公主導でそのテーマについて話をしているとちょっと鬱陶しくなる。
 他のキャラクターの話/エピソードに対して主人公がリアクションをすることも織り交ぜていくと良い。
 他のキャラクター(主人公と違う立場の人間)が喋る→主人公がリアクションする→読者はこれを読んで、この子はこういう子なのか、と主人公の考えや価値観を理解していく。

■主人公の感情を描く


 ここから先は 『かがみの孤城』辻村 深月(著) を題材にした話です。

 今までの講座などで作品をいくつかお勧めをしてくださっていて、前回の講座で、読んだと教えていただいたらお話ししますよ、と言っていただいていたので、解説をお願いしました。

 この物語、読んでいて主人公の感情がとても分かります。
 これは「事細かに主人公のリアクションが書かれている」から。

 場所のひとつ、他のキャラクターの台詞/行動/表情ひとつひとつに対して主人公の様子が書かれている。こう思った、ということでだけでなく、仕草や行動も含めて。
 いち動作いちリアクション、くらいに細かい。
 これがあることで、主人公の感情が分かり、読者の理解や共感につながる。

 この逆パターンとして、台詞や行動の多い場面で主人公の感情を置き去りにしないよう注意。
 主人公の中身(考え・思考)が出てこないと、進むストーリーにキャラが引きずられているだけ。で、結局主人公は今どういう状態? となってしまう。
 自分の頭の中にはあるけどちゃんと出せてないとか、展開に気を取られてとか、やってしまいそう。

■ラストへ向けた流れ

 読んでない方にはネタバレになってしまうので伏せますが

これまでで一番明るいシーン
→最大の試練が訪れる
→乗り換えて
→ラスト
というハリウッド的な流れで作られていて、ラストに向かってぐっと引き込まれる。
 以前、この流れは大事でちゃんと書けると効果的、という話があり、その際にこちらの本があがりました。読んでみると分かりますが、まさにそれ、というストーリーの運び方でした。

ハリウッドでよくある流れ。
主人公の失敗
→夢を諦め
→立ち直る
→昔の仲間が戻って良い関係になったり 道具が揃ったり
→成功(ラスト)
これは見ている方も、この先こうなるだろうな…という予想ができますが、それでもワクワクするもの。

まとめ2の目次2■物語の構成・物語の流れ
まとめ3の目次1■全体の中でのメリハリ
で同じことを書いています)

■テーマと答えはセット

 物語のテーマと、それに対する答えはセット。
 これがしっかりしていないと、メッセージ性のある作品にはならない。テーマについて他人よりも考える。それで出した答えが納得できるものであるかどうか。(答えがふわふわしちゃうとそこまでが良くても台無しになってしまう)
 
 ただこの納得感がある話を書くのは難しいですよね…書いている人が答えを分かっていないと(厚みがないと)書けないので、という話もありました。

 その一例として 『ハリーポッター』J. K. ローリング (著) 6巻では
 予言が出たあと。ダンブルドアとハリーの会話。
→ハリーは「予言」だからその通りにしなくてはならない、と言う
→ダンブルドアは「予言」はあくまで「予言」。義務ではなく、自由がある。予言がなかったら「どうしたいか」とハリーに聞く
→ハリーは「自分はこうしたい」と答える=ハリーの意思の存在
 他人に言われてするのか、自分でするのか。作者がその重要性を分かっていないと書けないシーンですよね、と。

■主人公の三要素=キャラクターの三要素


①問題・欠点
②求めるもの
③本当に必要なもの
(=物語のメッセージにもなる)

 これは主人公に必要な要素、と言われていますが、キャラクターの三要素でもある。(主人公以外は①~③まで全て揃っていないこともあるかもしれません。まとめ1前書を除き目次1■主人公について でも少し書いています)

 上のテーマと答えの話から引き続いて。
 例えば他のキャラクターが三要素を持っていて、同じテーマについて主人公と違う答えを出す。これによって話の深みが出たり、主人公に共感できない人も他の登場人物に共感できたりするかもしれない。(読者にとっての選択肢が増える。)

 一例として
 主人公が取らなかった選択肢(別の道)を、主人公と似た境遇のキャラクターが取る。
主人公=Aパターン
別人物=Bパターン
 Bパターンが成功するか失敗するかは置いておいて、こういう道もあるよね、と示すことができる。

 こういう手法が取れるから三要素を考えないと、というわけではないですが、大事だな、と思いました。
 今まで触れてきた作品で、悪役なのに好きだなーと思うキャラクターとか、共感はできないけど言っていることは分かると思うキャラクターは、この要素がちゃんとあるなと思いました。キャラクターの厚み。

 そしてこの話が出て、そういえば最初にも似たような話が…と思いました。今回新しい原稿について、主人公だけを見てストーリーを考えてしまっていましたが、主人公以外のキャラクターも生きているので。それぞれの考え方や行動がありますよね。と。
 前にも書いた気がしますが、私は書いていると視線が寄りがちになってしまうと改めて気づきました。気をつけよう。

あとがき

 4回目となって、今までの講座で出てきた話がけっこう再登場しました。でもこれ、全く同じことをただ繰り返し言われているのではないんですよね。
 このまとめの初め、アプローチの話ではないですけど、だんだん別の角度から補強されているというか、ああ、ここってそういうことでもあったのか、と理解度が深まっている感じです。(伝わるかな…伝わっていると嬉しい)
 ここまでお付き合いいただきありがとうございます。残り2回! 引き続き頑張ります。

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