マガジンのカバー画像

詩・習作・その他

2
詩・散文詩・習作・その他
運営しているクリエイター

記事一覧

春のモーニング

今朝のモーニングは 頭痛が痛くて 情動が動いたので 重言を重ねようと 尽力を尽くしていたら 馬から落馬した そんな気分だ  「ご機嫌いかが?」 君は微笑みながら 僕の前に座っている カフェの窓から 空を見上げると 豆腐を潰して 塗り付けたような 曇り空を横切って 巨大なムカデが へばり付いている 目を瞑って ゲンショー学的な エポケーを施したら ムカデとは 僕の頭痛だった  「今日はちょっとムカデが、   いや、頭痛がしてて」  「え? ムカ‥‥?   あ

死の島

噴水と橄欖樹のある広場 くすんだ色の神像が並ぶ市街 水盆から零れる水が 広場の敷石を濡らし 何処へ行くのか誰にも告げず 暗い布を纏った女が歩いて行く 街角で籠が倒れる 転がり出た無花果の実を ひとつ拾う 翳を抱いて歩く人々 木陰で薄笑いを浮かべる老婆 遠くで子供が泣いている 夕刻には遥かな沖合の 大渦に群がる鳥達が 今朝は街の上空を舞っている とも綱を解いて 海へと漕ぎ出す小舟に 青い花を懐に隠し持つ女が 乗り込んでゆく 肌を打つ潮風 波に揺れる小舟 魚が跳ねる