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晴れの日も雨の日も#168 「実」 (#166「北の国から」続編)

ちょうど1週間前に投稿した#166北の国。つい、筆が滑って「”実”という文字が私の心に残ったので考察を深めて記事にしてみたい」と締めくくってしまった。すると、直ちに「楽しみにしてます!」というラブコール(?)を複数頂戴した。中でも1番に手を上げて頂いたikueさんはとっても心がほっこりする創作SSのクリエイターだ。私のようなゴリゴリバリバリ系のがさつな記事とは別世界の優しい作品を次々と紡ぎ出されている。真似したいができない。ikueさんは私にとって憧憬の作者なのだ。たいした深い考えもなく口走った末文ではあったが、なんとしても応えなければなるまい。それが昭和のオノコというものだと私は得心している。

さてさて、「実」。
まずは、月並ながら角川新字源を引いてみた。旧字体では「實」。この字の一部を構成する貝は財宝だ。すなわち、家の中に財宝が満ちることを示す。で、みちる。みたす。なかみ。
で、さらに、
ことがら。まこと。などに発展していく。なるほどなるほど〜。

新字源とはまた別に「実」という言葉の私のイメージ。それはまさに「実がびっしり詰まっている」感じだ。枝豆でも時々空っぽのやつや、あさりの味噌汁で貝殻だけが混じっているが、あれはダメだ。ぎゅっと中身が詰まっていて、ずっしりとした質感量感があって、確かな手応えがあるもの。文句なしに、ん!と信じられるもの。スカスカの反対。個人的にはそんな感じを思い描くし、そんな生き様、そんな人間に憧れてきた。

さて、倉本聰「獨白」から「実」が思い浮かんだ心の動きを振り返る。それは「確かなもの」というニュアンスだ。石化エネルギーと電気に頼る現代文明。何かでそれが遮断されると、社会活動に一気に甚大な被害が出る。実は私達の日常の暮らしはそういう砂上の楼閣の上に成り立っている。倉本聰は、そういう危うさをえぐりだそうとした。

人間関係も同様で、ずいぶん便利な世の中になって、いろいろ「つながっている」ようだが、そのつながりに確かなものはあるのか、「実」はあるのか。

たとえば家族。必要な用事はLINEで済ませ、お互い何を考え何を感じているのかわからない家が増えているらしい。いや、わかろうという気もなく、あるいは関心すらない。
会社の中も、メールが主流で、働き方や価値観も多様化し、結果として、人間関係が希薄化している。本来会社は、一人ではできないことを成し遂げるために、集団で事に当たろうという場であったはずが、チームとか、共に達成する、という視点が、個々の働くひとの中に後退しているように見受ける。

私は電気も水道もない世界に戻ろうなんて、提唱する気はない。私自身だって、そんな生活には一日も耐えられない。
電気や水道などは俗に社会インフラと呼ばれる。ちゃんと稼働していて当たり前、と思っている。が、それは「誰か」が稼働させてくれているのだ。
文明というのは、実は、誰かが一生懸命下支えしてくれている薄っぺらい板の上に立っているにすぎない。本当に自分の足で大地に立つ、自分の手で実際にブツを動かしていく、というのは大変で面倒なことなのだ。現代文明はその大変さを簡略化してくれている。

で、「実」が薄らいでいる。
実とは面倒と背中合わせで、手軽さとトレードオフなのではないか。
楽をすればするほど、その中身は空虚になっていくのではないか。

人間関係も同じだろう。メール結構LINE結構。しかし、気軽で楽な関係ほど、それはうわべのつきあいで、「実」に欠けがちなのかもしれない。自分の真の心を真摯に見つめること。それを丁寧に表す姿勢。相手の受け止めをじっと見守る想い。そういったことが実につながるような気がする。


社会インフラにしても、人との付き合い方にしても、今の便利なものを切って捨てることはもはやできないが、「実」を求めるのなら、それとの付き合い方は心すべきものがあるのかもしれない。手軽にちょちょいと、だけではなかなか「実」にはたどりつかないのだろう。確かなもの、本当のものは自ら手をかけて、大事に作っていく必要があり、だからこそそうして手に入れたものは本当に貴重だ。

「実」は手軽さとトレードオフ。
3人のリクエスターに少しでもお応えできていれば誠に嬉しい。

バラが満開の季節を迎えた

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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<予告>
#169 【創作SS】老夫婦の会話
#170 願いを叶える 前編
#171 願いを叶える 後編

(つづく)

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