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日本における補聴器の現状(日本補聴器工業会 Japantrak2022より)

どうも!!!
長洲ヒアリングのみやたです!!!

 今回の記事は、補聴器についての大規模アンケート(Japantrak2022)が発表されたので、その内容を元に、日本における補聴器の現状や、各国との比較などをお伝えしていこうと思います。この記事でなんとなく全体像を掴んでいただけると幸いです。

それでは、さっそく本内容をどうぞご覧ください。


①補聴器ユーザーの51%が感じていること


「もっと早く補聴器をつかっていれば良かった」

 補聴器ユーザーの51%は、上記のように「もっと早く補聴器を使っていれば良かった」と感じているそうです。ではなぜ、そのように感じているかという理由をみていきましょう。

【理由1】85%

「より快適な社会生活が送れたのではないかと思うため」

【理由2】40%

「より安定した精神状態でいられたのではないかと思うため」

【理由3】11%

「より良い仕事ができたのではないかと思うため」

 割合でみると、「より快適な社会生活を送れたのではないか」と感じている方がほとんどを占めています。理由2、理由3も理由1に繋がるところがあるため、「もっと早く補聴器を使っていれば良かった」と回答されている多くの方が、社会生活を送る上で、補聴器の効果を(個人差はあれど)感じていることが推測されます。

 しかし、この結果だけでは「あと何年早く使っていれば良かった?」「どのタイミングで補聴器を使えばよかった?」といった疑問も残ります。実際に、補聴器を使用するのであれば、「早期装用」といって、早いうちに使い始めることを推奨されていますが、今のところあまり浸透はしていないようです。

 長洲ヒアリングでは、とりあえず一回補聴器を体験してみて効果を感じるようであれば、使用するかの検討をお勧めします。

②補聴器が必要だと感じたのは○○歳!


ここで、皆さんに質問です。

「補聴器を必要だと感じた年齢」

これは何歳ぐらいだと思いますか?


【⇓⇓⇓答え⇓⇓⇓】
アンケートの結果は、おおよそ72歳ということでした。

それでは、内訳をみてみましょう!

☆内訳☆

【1~44歳】  11%
【45~54歳】 5%
【55~64歳】 9%
【65~74歳】 36%
【75~84歳】 34%
【85歳~】   5%

 上記をみると、補聴器を必要だと感じる方の7割近くは、65~84歳ということがわかります。実際に、長洲ヒアリングをご利用されるお客様の年齢層は、70歳代~が多くを占めています。

 ただし、この結果に関しては、「難聴の原因」が統一されていないので、例えば生まれた時から聞こえにくい先天性難聴や、年を重ねて聞こえにくくなる加齢性難聴など原因を統一すると、もう少し面白い結果になるような気がします。

 仮に加齢性難聴だけに限定してみると、恐らく今回の結果(72歳)よりも遅くなるのではないかと思います。しかし、実際に補聴器の使用を検討されている方には、今回の結果が「いつから補聴器を使い始めるか」の判断材料になるのかなとも感じます。

 そしてもう一つ、「補聴器が必要だな」と感じるきっかけの有無もとても大切ですね。

③難聴に気づいてから、補聴器を購入するまで平均〇年経過している。


さて、またまたここで質問です。

難聴に気づいてから、補聴器を購入するまでにかかる期間は、平均で何年でしょうか?

【⇓⇓⇓答え⇓⇓⇓】

今回のアンケートでは、「平均2~3年」という結果が出ています。

 この期間を、長いと感じるか、はたまた短いと感じるかは個人により異なります。しかし、1つめのテーマ「51%がもっと早く補聴器を使っていれば良かった」と回答している事から、この平均2~3年というのは、もしかしたら少し長いのかもしれません。

 また、「難聴に気づく」という点も、曖昧な部分なので、「難聴により不便を少しでも感じ始めてから、補聴器を購入するまでにかかった期間」なら、もう少し参考になるかもしれませんね!

それでは、期間の内訳をみていきましょう!

☆内訳☆


【1年】   27%
【2年】   25%
【3年】   21%
【4~5年】 7%
【6年以上】 19%

 内訳をみてみると、難聴に気づいてから約7割の方は、3年以内に補聴器を購入しているということがわかります。

 補聴器は、お試しができるお店も多いので、難聴かな?と感じたら、とりあえず相談とお試しをお勧めします。

 長洲ヒアリングとしては、聞こえにくく不便を感じた時に使い始めるのが理想だと思っています。

④補聴器1台の価格は、ほとんどが○○万円!


 補聴器の価格について、これまでいくつかのブログを書いてきましたが、JapanTrak2022では、購入された補聴器(1台)の価格も取り上げられています。

 そして、その価格のほとんどが「10~30万円(1台)」という結果になっていました。この価格、高いと思いますか?安いと思いますか?恐らく多くの方が「高い」と思われていそうですが、その価格の理由などもありますが、今回は置いておいて、購入価格がどんな内訳になっているのか、みていきましょう!

☆内訳☆

【10,000円以下】4%
【10,001~20,000円】   8%
【20,001~30,000円】   5%
【30,001~40,000円】   4%
【40,001~50,000円】   3%
【50,001~100,000円】  15%
【100,001~200,000円】 31%
【200,001~300,000円】 22%
【300,001~400,000円】  7%
【400,001~500,000円】  1%未満
【500,000円以上】     1%未満

 内訳を見てみると、特に10万円代の補聴器が購入されている事がわかります。上記は、1台の価格のため、両耳に補聴器を使うとなると、この価格がさらに倍になります。

 また、認定補聴器技能者に調整された補聴器では無く、通信販売などで購入された補聴器や集音器も含まれています。5万円以下においては約7割が、認定補聴器技能者に調整されていない補聴器(または集音器)であり、専門家が調整しないものは安価であるという事が改めてわかりました。

 長洲ヒアリングでも、15万円前後(1台)の補聴器を選ばれることが多く、このアンケート結果と同じような印象をもちました。

 しかし、補聴器は昨今において値上げ傾向にあります。次回実施されるJapanTrakでは、今回の結果よりも価格は上がるかもしれませんね。

「認定補聴器技能者とは?」
テクノエイド協会が定める認定資格。取得までには、4段階の講習会を受けなければならず、最低でも4年かかる。補聴器についての一定の知識、技能、経験を有する証。

⑤片耳装用者の多くは、両耳装用でも効果は同じと思っている


 耳は、左右に1つずつあり、それぞれが独立して音を聞いています。しかし、その独立した音は中枢で高度な処理をされ、音の方向や雑音の中で聴きたい音を聴くなど様々な効果を得られます。

 そして、補聴器についても、理由が無い場合において、「両耳装用」が推奨されています。理由というのは、「左右の聴力の差」や「耳の状態」、そして「予算」などが代表的です。これらの理由が無い場合は、両耳で補聴器を使ってみてその効果を感じてみることをお勧めします。

 今回のアンケートでは、「片耳装用者の多くは、補聴器を両耳に使っても、片耳に使っても効果は同じと思っている」といった結果になりました。これについては、実際に使ってみた結果なのか、単なる印象なのか、それとも医師などからの助言なのかは様々かと思います。

 また、両耳装用、片耳装用の割合は、半々といった結果になっていました。ちなみに、海外で行われたアンケートでは、両耳装用率第一位がベルギーの83%、最下位が中国の35%となっていました。そして日本は、下から数えて3番目でした。

 両耳装用の何が一番のネックなのかと言われれば、おそらく「予算」のような気はしていますが、無理のない予算、そして効果のある補聴器を購入するよう、慎重に選ぶことをお勧めします。

⑥片耳装用、両耳装用の満足度


片耳装用と両耳装用の満足度も集計されています。

まずは内訳です!

☆内訳☆

片耳装用
【やや満足】 20%
【満足】   22%
【大変満足】  3%

両耳装用
【やや満足】 31%
【満足】   22%
【大変満足】  2%

片耳装用の満足度(18%↑)
27%(2018)→45%(2022)

両耳装用の満足度(7%↑)
47%(2018)→54%(2022)

 上記のように、片耳装用、両耳装用のどちらとも前回(2018)の結果よりも上昇しています。また、両者を比較した場合では、片耳装用よりも両耳装用での満足度が約10%高い結果となっていました。

 「片耳装用でも効果は同じ」という印象を持たれている方も多いため、なかなか両耳装用への移行は難しく感じますが、一度は両耳に補聴器を使い、その効果を経験してみてほしいところです。

【各国との比較】

⑦難聴者率


ここからは、各国と日本の比較となります。

 まずは、難聴者率をみてみましょう。(以下、全てを挙げると見にくくなるので、上位下位3国と日本を挙げます。詳しくは、添付画像を参照ください。)

  • ポーランド   15%

  • イタリア    12.5%

  • オーストラリア 11.8%

  • 日本      10.0%

  • スイス     8.0%

  • 韓国      5.9%

  • 中国      5.8%

 上記の結果からどこの国も、人口のおおよそ10%前後に難聴が生じていることがわかります。日本はその中でも丁度真ん中あたりで、約1億人の人口とすると、1000万人が難聴者と推測できますね。

 10人に1人が難聴者と考えると、結構多いような気もしますが、これからさらに高齢化社会がすすんでいくと、この比率もますます大きくなるかもしれません。

難聴の予防策や、補聴器などの難聴への対応策などが、もっと広げることが課題なのかなと日々感じています。

⑧普及率


次に、補聴器の普及率をみていきましょう。

デンマーク   55%
イギリス    53%
ノルウェー   49%
ポーランド   21%
日本      15%
中国      10%

 このように補聴器の普及率には、各国で大きな差がみられます。デンマークでは55%、中国では10%、そして日本は15%と低く、人口を1億人とすると難聴者が1000万人、そしてその中で補聴器を所有する方は150万人ということになります。残りの850万人の方たちはどのような難聴への対処をしているのか気になるところです。

 また、この普及率には、いくつかの要因が考えられます。例えば、補聴器の購入に関わる補助制度を挙げると、日本では、聴覚障害者手帳を取得されている場合に、補聴器が支給される制度や、市町村によって設けられている制度があります。しかし、いずれにしても、補聴器の金額からみると、そこまで大きな補助ではないといえます。とくに聴覚障害者手帳の該当基準は厳しく、ある程度聞こえにくくても該当しないケースが散見されます。

 もちろん金額だけが、普及率の低い要因ではありませんが、簡単に購入できる金額ではないことは確かです。

 聴覚障害者手帳の基準が低くなること、十分な補助制度が全国に広まること、補聴器の金額がもう少し安くなること、これらを実現するためには、難聴の理解や補聴器の重要性、そして補聴器の効果を多くの方に感じていただけるような提供体制が必要かなと感じています。

⑨満足度


 普及率と同じく補聴器の満足度も、各国により大きく差のある結果になっています。それでは内容をみてみましょう。

中国      92%
フランス    82%
ベルギー    82%
デンマーク   74%
韓国      57%
日本      50%

 残念ながら、日本は補聴器に満足している方が2人に1人(50%)と低い結果になっています。特に、下から3番目のベルギーでも74%という結果をみると、韓国、日本の満足度はガクッと低くなっていますね。

 完璧を求めたいという国民性や言語の違いなどが、補聴器の効果を感じにくい要因なのかもしれません。

 また、販売されている補聴器の種類は各国による差はほとんど無いので、もしかすると補聴器の提供過程に違いがあるのかもしれません。なぜなら日本は誰でも補聴器の調整ができ、申請さえ行えば誰でも補聴器を販売することができるからです。このことから、調整内容や補聴器の説明に関する理解については、対応するスタッフによりレベルが異なり、補聴器への満足度にも差が生じているのかもしれません。

 補聴器はどこで買っても同じ内容を提供できることが理想ではありますので、私自身も含め、補聴器に携わる方々のレベルアップを目指していければと思います。

⑩両耳装用率


最後に、両耳に補聴器を使用する割合についてみていきましょう。

ベルギー    83%
スイス     81%
ノルウェー   79%
日本      43%
ポーランド   42%
中国      35%

 残念ながら日本は、満足度と同じくワースト3に入り、両耳装用率は「43%」という結果になりました。上位の国と比較すると、かなり差があるように見えますね。

 この結果についても、いくつかの要因が考えられますが、大きな要因としては「価格」と「不便の度合い」と考えられます。

 価格に関しては、片耳だけでも数十万円する補聴器なので、両耳装用で2倍の値段になるとさらに気軽には購入できなくなります。障害者手帳に該当する場合でも、原則は片耳分の支給しかありません。各自治体で行われている補助制度に関しても数万円程度で、とても十分とは言い切れない補助額です。

 そして、不便の度合いに関しても、高齢者の多くは「テレビが聞こえにくい」「きこえにくいが自分ではなく、家族が困っている」などの「どうしても補聴器を使わなければいけない」というケースが少ないように感じます。
本人がきこえにくそうであれば、周りの方が大きめの声で話しかけサポートするといった場面をよく見ます。それ自体が決して悪い事ではなく、大切な対応ではありますが、結果として「補聴器に頼らなくても大丈夫、少々聞こえれば良い」といった結果に繋がるのかなとも考えることができます。

 また、片耳に補聴器を使用されている方の多くは、「補聴器を両耳に使っても片耳に使っても効果は同じと思っている」という結果も出ています。

 いずれにしても、両耳装用には様々なメリットはありますが、購入の前には片耳で試したり、両耳で試したりという結果、どれが一番自分自身で効果を感じるかご検討ください。

 なぜなら必ずしも両耳装用が全ての方に良いという訳ではないからです。また、この辺りは別の記事にてお話しできればと思います。

長くなりましたが、この記事を読んでいただき補聴器の現状を少しでも把握いただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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